ADAS/自動運転用センサ世界市場に関する調査を実施(2023年)~ADAS/自動運転用センサの世界市場規模は2030年に約3兆7,000億円の成長を予測、運転支援システム・レベル2+の搭載拡大がセンサ市場をけん引し、カメラ、レーダの出荷数量が2027~2029年にかけて拡大する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、ADAS(先進運転支援システム)/自動運転用キーデバイス・コンポーネントの世界市場の調査を実施し、ADAS/自動運転で搭載されているセンサの市場概況、技術動向、自動車部品メーカの搭載動向を分析した。ここでは、2030年までの世界市場規模をセンサ種類別に予測し、公表する。

1.市場概況

2023年におけるADAS(先進運転支援システム)/自動運転用センサの世界市場規模は、メーカー出荷金額ベースで1兆5,485億円の見込みである。日米欧でAEB(自動緊急ブレーキ)の標準搭載が進み、中国市場においても急速に搭載車種が増加している。

このため、車両の前方を検知するADAS用レーダやカメラの出荷数量が拡大しており、2023年におけるレーダ(77GHzミリ波レーダと24GHz準ミリ波レーダを含む)の世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで4,562億円、カメラ(センシングカメラやリア/サラウンドビューカメラを含む)は9,356億円の見込みである。

2024年以降も引き続きレーダ、カメラを中心にADAS用センサの需要が見込めることから、2024年のADAS / 自動運転用センサの世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年比3.7%増の1兆6,051億円になると予測する。

2.注目トピック~ADAS用カメラの高画素化とサイド/リア適用が進展~

ADAS用カメラの高画素化が2025年以降に進展する。現行量産車のADAS用カメラの画素数は1.7メガピクセル(以下、MP)や5.4MPが中心であるが、今後は8MPを採用したカメラが日米欧中で拡大する。8MPを適用することでFOV(視野角)120度を実現することが可能になり、カメラのパーセプション(認識)向上によるADASの安全性能向上が期待できる。すでに欧州や中国、日本の自動車メーカーの一部車種で採用が始まっており、新しいE/E(電気/電子)アーキテクチャ※の車両から8MPカメラの適用が本格的に始まる。

また、レベル2アーバン(L2一般道)や高機能メモリ駐車支援システム(L2バレーパーキングアシスト)を実現するため、フロントだけでなくサイド、リアにADAS用カメラを搭載するBEV(電気自動車)の投入が中国市場において活発化している。2024~2026年にかけて高級車種BEVを中心に市場(世界市場)は形成される見込みであり、ADAS用カメラの市場規模(出荷数量)を押し上げる。

※新しいE/E(電気/電子)アーキテクチャは、クルマの制御分野別にドメインECUを搭載して、センサーやアクチュエータと繋がれている個別ECUを集中制御する

3.将来展望

2030年のADAS(先進運転支援システム) / 自動運転用センサの世界市場規模は、メーカー出荷金額ベースで3兆6,929億円に成長すると予測する。2030年までに日米欧でADASの搭載率は100%近くに達し、中国でも80%を超え、ASEANやインド向け需要が2028年以降に本格的に立ち上がるため、ADAS用レーダ、カメラの出荷数量は堅調に推移する見通しである。

また、NCAP(新車アセスメントプログラム)に対応するためにレーダの搭載数が増える傾向にある。すでにEuro NCAPで導入されている交差点AEB(自動緊急ブレーキ)の評価試験について、2024年からJ-NCAPやC-NCAPでも実施する予定であり、対車両だけでなく歩行者や自転車なども対象となる。このため、交差点右左折時や出会い頭におけるAEBを強化するために、フロント/リアコーナーレーダの装着率は上昇し、2030年のADAS用レーダの市場規模は1兆940億円に達すると予測する。

さらに、2026年以降から新しいE/Eアーキテクチャ※の採用が高級車種モデルを中心に活発化し、2030年に向けて中級車種モデルまで適用が進むと予想される。従来の分散型からドメインECUにすることで、各種センサを集中制御することが可能になり、ADAS/自動運転システムの多機能・高性能化、車両一台あたりのセンサ搭載個数増加につながる。このため、ADAS/自動運転用センサ(レーダ、カメラ、LiDAR)、駐車支援系センサ(サラウンドビューカメラ、超音波センサ)の需要は引き続き堅調に推移する。

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