ディズニーR、チケットシステムが複雑すぎ→しんどい…家族4人で20万円も

東京ディズニーシー(「Wikipedia」より)

6日、東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」がオープンした。同エリアには通常のパークチケットだけでは入場できず、アトラクションも利用できず、利用のためのチケットには複数のタイプがある。取得・利用するには事前に入念な情報収集が必要で料金も安くないとして、SNS上では「最近のディズニーはあまりにも情報戦すぎる」「昔は軽率に行っても楽しめてた」「貧乏人はそもそもターゲットじゃない」などさまざまな声があがっている。こうした評判は的を射たものなのか。業界関係者の声を交え追ってみたい。

東京ディズニーシー8番目のテーマポートとしてオープンしたファンタジースプリングス(FS)。投資額は約3200億円と2001年の開業以来、最大規模の開発で、映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の世界が再現されている。複数のアトラクションがあり、それぞれの映画の世界観を体験できる。

入場するには通常のパークチケットに加え、無料の「スタンバイパス」、または有料の「ディズニー・プレミアアクセス(DPA)」を取得する必要がある。スタンバイパスは、入園後に東京ディズニーリゾート・アプリから利用したい施設・時間帯を選択し、パスを取得。選択した時間に列に並ぶという流れ。公式サイト上には「スタンバイパスは施設等の入場を保証するものではありません」と記載されている。

DPAも入園後にアプリから使用する施設と時間を選択するという流れは同じだが、短い待ち時間で希望する施設を利用することが可能。発行数に限りがあるため、売り切れとなる場合がある。料金の一例としては、アトラクション「アナとエルサのフローズンジャーニー」「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」はそれぞれ2000円、パレード・ショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」は2500円となっている。他のアトラクションを購入する場合、購入から60分後、もしくは購入したディズニー・プレミアアクセスの利用開始時刻のいずれか早いほうの時間を過ぎてから購入するかたちになる。

このほか、新エリアすべてのアトラクションを短い待ち時間で利用できる1日券「1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジック」もあるが、6つのディズニーホテル宿泊者だけが購入可能となっている。

よって、スタンバイパスとDPAともに数に限りがあるため、ディズニーホテルに宿泊しない人が確実にFSに入るためには、日によってはディズニーシーの開園前から並ぶ必要がある。FSオープン日の6日には朝6時台の段階で入場ゲート前に長い行列ができていたが、当面は土日などに小さな子どもがいる家族連れがFSに入るのはハードルが高い状況が続きそうだ。

来場者一人当たりの売上高は年々上昇

料金も安くはない。かつては待ち時間を短縮してアトラクションなどを利用できる無料の「ディズニー・ファストパス」があったが、2020年に休止されたのちに廃止。それに代わり現在は前述のスタンバイパスとDPAが用意されている。01年に5500円だった「1デーパスポート」の価格は年々値上がりし、21年3月に価格変動制が導入された時点で大人料金は休日が8700円、平日が8200円。21年10月1日からは7900円、8400円、8900円、9400円の4段階となり、今年10月からはさらに9900円と1万900円が追加され6段階に。最高価格は繁忙期の週末やクリスマス、年末年始などに適用される。

その間、来場者一人当たりの売上高は年々上昇。2000年度の9236円から徐々に上昇し、コロナ禍による移動制限が緩和された21年度は前年度から急伸し1万4834円に。そして23年9月中間期は1万6566円まで伸びた。

現在、1デーパスポートは価格変動制で7900~1万900円となっており、来客数が多い土曜日は1万900円になるケースが多い(4~11歳は4700円~5600円、12~18歳は6600円~9000円)。仮に4~11歳の子どもが2人いる家族4人でDPAを使ってアトラクションに一つ乗ると、合計で約4万円ほど。これに飲食代やグッズ購入代などが加わる。また、ファンタジースプリングス・マジック(2万2900~2万5900円、4~11歳は1万9700~2万600円)を使う場合は、例えばファンタジースプリングスホテルの宿泊料金(変動制)は一部屋あたり一泊約7~10万円ほどとなっており、家族4人の場合は宿泊代とチケット代あわせて20万円ほどの出費は覚悟しなければならない。

ちなみに、1デーパスポートをはじめとするパークチケットは2カ月前からの販売となっており、公式サイトか東京ディズニーリゾート・アプリから購入する。現在は日付指定券のみで、日付指定のないパークチケット(オープン券)は販売されていない。

こうした現状から、ファンタジースプリングスのオープンを受けてSNS上では以下のような声が続出している。

<ライト層には敷居が高くなってる>

<年々ハードル高いっていうか、Dオタしか行ってはいけない場所みたいな感じになってきてる>

<下調べの度合いがまじで近年半端ない>

<前は現地でもパスポート買えたし、Todayもらえたし、ファストパスも分かりやすかった>

各種施策は経営的には成功

デジタルマーケティング会社のプロデューサーはいう。

「以前と比べてシステムが複雑になっており、混雑している日などに下調べしないで行くと、ほとんどアトラクションを利用できないままで終わってしまう可能性もあるので、かなり前の段階から動いて事前に情報収集しておく必要があり、それなりにリテラシーが求められてきます。なので一部の人から『しんどい』『気軽に行けなくなった』という声があがるのは当然ですが、一時期のものすごい混雑やアトラクションでの長時間の行列待ちを解消するために現在の形になったという経緯があり、実際にそれらの問題は以前より大きく改善されたのは事実。長い行列待ちを強いられるよりは、下調べやシステム上での手続きが多少面倒になっても、後者のほうがましだと考える人も多いはず。運営会社のオリエンタルランドの前年度決算の純利益は過去最高となるなど業績は伸びており、結果的に各種施策は経営的には成功しているということになります」

大手旅行会社関係者はいう。

「東京ディズニーシーの新エリアへの入場は当面はハードルが高い状況が続くものの、従来のディズニーリゾートのエリアに限っていえば、家族4人で一日4~5万円というのを、安いと考えるか高いと考えるかは人によるでしょう。その金額で年に1日だけ非日常的な空間で家族4人で特別な時間を過ごせるとなれば『全然払える』という人も少なくないでしょうし、たくさんアトラクションには乗れなくても十分に満足だと感じる人もいるでしょう。ただ、かつては年間7万円ほどの年間パスポートを購入すれば年に何度でも入園でき、とにかく園内の雰囲気が好きでアトラクションには乗らずに週1回くらいのペースで通うコアなファンもいましたが、そういうことはもうできなくなった。運営会社は混雑を解消しつつ、できるだけ客単価を上げるという方針をとっており、それは成功している。一方で“行きにくい場所になった”という面は否めません」

(文=Business Journal編集部)

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