【ダイエットの落とし穴】プロからのアドバイスで結果を出した女の末路

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「読めば痩せる!?」笑えるダイエットストーリー、第22話!


《第22話》「プロからのアドバイスで結果を出した女の末路」

「もしかしてさぁ、アツオあんたのこと好きなんじゃないの?」

今日は恒例となっている“モッちゃんとジム”の日。
私が“レッグプレス”という足を鍛えるマシンやり終えた時、モッちゃんが突然そう言ってきた。

「なんでそう思うの?」
私が全力で平静を装いつつ、モッちゃんに言うと
「え? 別に? なんとなく。勘」
「いやいやいや。ないないない。だってあんたの勘、当たんないじゃん」
昔からモッちゃんの勘は当たらない。
ただ……

「いやそれ良い方向の勘だけな。悪い方の勘は当たるから」

そう。モッちゃんの勘は、悪い方だけ当たる。

「あ〜でもアツオがあんたのこと好きだったとしても悪くはないから当たってないか〜!」
と、モッちゃんは笑う。
すまん、モッちゃん。たぶん悪い方で当たってる……。
いやいやいや、まだ断定するには早い。
あれは何かの間違いだって可能性も十分にあり得る。

今はまだモッちゃんに知らせるべきタイミングではない。し、動揺する必要もない。
間違いかもしれないんだから。
よし、ここは悟られないように、なるべく普通に。
と思った瞬間、段差も何もないところで派手に躓いた。

「足の筋トレ頑張りすぎた! ハハハハ!」

……ダメだ。完全に動揺しとる。
あー……先週のあの光景が……私の頭から離れない。

あれは……
あの時のあれは……一体……。
私の家の近くで、私をじっと見つめていたアツオ。

なぜあそこに?
なぜ私の家の近くに?
てかなぜ私の家知ってんの?
そして、なぜ目が合った瞬間に気まずそうな顔して慌てて立ち去ったの?

わからないことだらけだ。

いや、わかっているのかもしれない。
もしかして……彼は私の……スト――

……いやいやいいや! ないないない!!

だってアツオとはこの間初めて会ったんだから!
それにアツオは、私を救ってくれた救世主さまなのだから!

1ヶ月近く続いた地獄の停滞期から私を救い出してくれたのはアツオなんだから。

うん。そうだ! ここは楽しいことを考えよう!
なんたって私は、停滞を乗り越えた女なのだから!

今日だって体重の最小値を更新したんだ!

私の体重は、ついに、

10キロ痩せるまで、あと2.5キロ──

順調そのもの!
それもこれも全てはアツオのおか……げ……

ダメだ!! またあの光景が頭に!!

違う違う!!
あれだ! 人違いだ! あの人はアツオではない!!

アツオのアドバイスのおかげで停滞期も無事脱出!
ダイエットをやり直すことになって早1ヶ月。

ゆっくりではあるが、再び体重は減り始めた。
その方法をみなさまにもシェアしましょうとも!

すごいぞアツオ! さすがプロ!

違う違う違うダメダメダメ!!

あれは違う! 何かの間違いだ! アツオに瓜二つの人だ。あ、双子なんじゃない? そうだきっと。うん。アツオは双子なんだ! 双子だったとしてなぜあんなところにアツオの双子がいる!!

……くそ、どう頑張っても……どう頑張って言い訳してみても……やはりあれは……

いやいやいや! あれです!
話を本題に戻します! うん!

えー、なんだっけ本題。ポテトチップスはカルビーか湖池屋か論争でしたっけ。だから味によるでしょうよそれはー! あ、これだいぶ前の話か。第1話の話だったわ。懐かし。
そう言えば最近ポテトチップス食べてないな。脂質低めのポテチとかないかな?

あ、そうだ! 本題思い出しました!

なんで停滞打破してから、再び順調に減り出しているか。
停滞に苦しんでいた時に、ストーカ間違えたアツオからアドバイスをされたことは、
大きく分けると2つ!

・同じにならないようにすること。(前回お話しした乳首ドリル)

**・三大栄養素
P(プロテイン=タンパク質)
F(ファット=脂質)
C(カーボ=炭水化物(糖質+食物繊維))
を整えること。**

カロリーはP・F・Cで構成されているらしい。
1日の摂取カロリーをアンダーカロリー(メンテナンスカロリーから10%カットくらい。詳しくは第20話参照)に出来たら、次にP・F・Cの割合に目を向ける。

基本の割合の目安は……

こんな感じ!

でーも!! 乳首ドリルをするなら、毎日同じにならない方がいいから、
基本の割合を目安に、1週間のうちの2、3日くらいで変化をつけてく。

1日に摂取するカロリーは変えずに
脂質を抑えて、炭水化物を多く摂ったり、
逆に炭水化物を抑えて、脂質を多く摂ったりして、
身体に
「この身体、まさかこれから脂質がたくさん入ってくるのか!?」
とか「これから糖質がたくさん入ってくるのか!?」とか、

身体に勘違いさせて、乳首ドリルしていく わけです。
(いや「乳首ドリルしていく」ってなんだよ! 新喜劇の皆さんもまさかこんな使われ方してるとは思うまいよ!)

特に女性は脂質を抑えすぎるとホルモンバランスが乱れるから、
ちゃんと脂質を多く摂る日も作った方がいいと、ストーカ間違えたアツオが言っていた。

脂質はお魚とか、アボカド、オリーブオイル、ナッツとか、なんか身体に良さげなものから取る方がいいらしい。

が!!

勘違いしてはいけないのは、

どれだけ良い脂質をとったとしても、

カロリーオーバーになったら当然太る!!

例えば最近巷で噂のMCTオイル(中鎖脂肪酸)。
確かにMCTは脂肪燃焼を期待できる。めちゃくちゃ良い脂質! だーけーど!
MCTオイルでも脂質は脂質。脂質は1gあたり9kcalというのは変わらない。

「脂肪燃焼するんだーうぇーい!」と、
勘違いして取りすぎた末路は……太る!!

だけでなく! MCTの取りすぎは下痢になるから、
まぁとても汚い末路が待っている。
(MCTは、まずは1日スプーン一杯くらいから)

つまり、ローカーボ(低炭水化物)でダイエットしたって、ローファット(低脂質)でダイエットしたって、カロリーオーバーになれば太るってことらしいです。

ダイエットに大事な順番は下から……
こんな感じ!!

**

**

つまり!

ダイエットの土台はカロリー管理!

その上で、P・F・C管理などをすると効果があるよってこと!

停滞期を抜け、また順調に体重が減ってきているのも、
P・F・C管理と乳首ドリルのおかげというわけです。

「そりゃ私に感謝しなきゃだねー!」
ジムを終え、帰りにモッちゃんと私んちの近くの喫茶店でお茶をしていると、モッちゃんがまるで自分の手柄かのように言った。
「あ、いまお前の手柄じゃないだろ的なこと思ったでしょ」

バレた。

「アツオ連れてきたの私だしー! 私に感謝せい!」
もちろん感謝はしてる。モッちゃんにも、そしてアツオにも。
でも……

「いやーでもほんとアツオ良いやつだなー」
「へ?」

モッちゃんの唐突なアツオ褒めにすっとんきょうな声がでた。

「だってさ、なんか色々丁寧に教えてくれてさー。良いやつだなーと思って!」

……そうだ。アツオは見ず知らずの私に、こんなに丁寧にダイエットの知識を教えてくれた。
ほぼなんの見返りもなしに、笑顔で、明るく、丁寧に教えてくれたのだ。

そんなアツオをストーカー扱いするなんて……どうかしてるぞ私!

例えばあの時、
偶然あの辺りを通りかかったアツオは、私を見かけた。
アツオは私を見ながら

と思っていたところ、たまたま私と目が合い、
気まずさにいてもたってもいられなくなって、
彼はその場から慌てて立ち去った。

うん。きっとそんなところだ。

そうだよ。深く考える必要なんてこれっぽっちもなかった。
私が自意識過剰なだけだ! 私の大バカやろう!

てかアツオも気にせず話しかけてくれればよかったのにー。

なんとなく自分の中でスッキリしたところで、モッちゃんとのティータイムも終了。
モッちゃんと別れ、私は自宅へと帰る。

そんな帰り道……。

家の近くまで来たところで、またあの時のように、
なんとなく気配を感じた……。

私は後ろを振り返る。と、そこには……!!

アツオ

の、姿はない。別に誰もいない。

いや、そりゃそうだよ
いるわけないでしょ。もー。

再び私は、前を見て歩き始める。
と、私の前をアツオが歩いている。

アツオだ!!

アツオが私の前を歩いている!
前を歩くストーカーとか斬新!!

いやいやいや、そんなこと言っている場合ではない。
というか、違う違う。ストーカーとかじゃない。

向こうは私に気がついていない様子だ。
手にはシェイカーを持って、プロテインらしきものを飲んでいる。
プロテイン飲みながらストーカーとか斬新!!

いやいやいや、だから違う違う違う。
今回も偶然、たまたま、図らずも、奇跡的に私の家の近くにいるだけだ。
なぜか私の家の目の前でプロテインを飲んでいるだけだ。
うん。きっと間違いなくたぶん、いや確実にそうだ!

よし、ここは私から話しかけよう。
フツーーーに。ごくごくフツーーーーに話しかけよう。

「あれ〜? アツオじゃ〜ん? うぃす〜! マジ偶然じゃ〜ん! どったの〜?」

的な感じで、ごく普通に話しかけよう。
空想上の私の話しかけ方が確実に普通の私ではないけど、こんな感じで話しかけよう。

と思っていたのだが、次の瞬間、私は思わず身を隠した!

だって、

ア……アツオが……アツオが……

私の家の前でキョロキョロしてるんだもん!!

なぜキョロキョロする!
なぜ私の家の前で誰かを探すようにキョロキョロする! アツオ!!

まさか……私を探して……
いやいやいや! ないないない!! そんなわけな──

「よし。いないな」

今……アツオ……なんて言いました?
「いないな」って、言いました? え? 誰のこと? 誰のことを「いない」と……

アツオはその後……
私の住んでるマンションを見つめて……

無理!! 無理だ!! 現実を受け止めきれないっ!!!

私はその場から逃げ出した。
ひとまず見なかったことにするために。コンビニへ。なんの用もないけどコンビニへ。

……いよいよ、いよいよヤバい!!!

10キロ痩せるまで、あと2.5キロ──

“知識”を身につけた未来のわたしから一言二言

もうアツオからだいぶ知識を与えられてるから、ここで書くことあんまりないんだよなー。

(第23話につづく……2024年6月24日公開予定)

いや、今回こんな終わり方かよ!

作者/【体脂肪率3%の脚本家】の保木本真也
『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)『事件』(WOWOW)など
ベストボディジャパン2023松山大会 モデルジャパン部門ミドルクラス グランプリ

イラスト/津和野諒、永井麻美子

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