<ライブレポート>清春、初となるビルボードライブ・ツアーで魅せた圧巻のステージ「これが僕らの永遠」

1994年に黒夢のヴォーカリストとしてメジャー・デビューし、その後SADSでの活動を経て2003年にソロアーティストとしての活動をスタートした清春。デビュー30周年を記念し、2024年~2025年にかけて大規模ツアー【清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA】を開催している彼だが、その日程にはビルボードライブ3会場での“ビルボードライブ・ツアー”も盛り込まれている。本稿では5月24日にビルボードライブ東京で開催された公演(2ndステージ)の模様をお届けする。

ステージが暗転しSEが鳴る中、清春がバンドメンバー(Gt:大橋英之、Perc:辻コースケ、Sax:栗原健、Pf:小林岳五郎)と共に登場する。ステージは大人の哀愁が心に刺さる「三日月」(9th AL『夜、カルメンの詩集』収録)からスタート。“ロックスター清春”のパブリックイメージとはまた異なる、繊細かつパワフルな表現の詰まったパフォーマンスは思わず息をするのも忘れる迫力だ。そこからセクシーな「TWILIGHT」(9th AL収録)へと繋げ、赤い照明の下で音にまどろむ。清春のハスキーな歌声は会場の雰囲気と相性抜群だ。

バンドメンバーを紹介すると、「今日はファンクラブ会員以外の人も来てると思うので、清春の“清”という字だけ覚えてもらって」とユーモア混じりのMCで場を和ませる。このパフォーマンス中の気迫とMC中のフランクさのギャップも清春の大きな魅力だと思う。

続くブロックでは、今年3月にリリースされた11thアルバム『ETERNAL』からクールな「FRAGILE」、10thアルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』からスローでミステリアスな「洗礼」と畳み掛けていく。後者でのサックスとボーカルの掛け合いも見事だった。ここで時代は一気に遡り、2ndアルバム『VINNYBEACH ~架空の海岸~』から「cold rain」へ。現在の清春サウンドにアレンジされた同曲は違和感なく近年の楽曲と溶けあっていた。さらに、「ゲルニカ」(アルバム『エレジー』収録のVer.)がそこに続く。ウィスパーボイスにも近い優しい歌唱も取り入れながら、原曲の持つパワフルさが引き立つアレンジに鳥肌が立った。

続くMCでは「もう後半ですね。普段は時間に不正確なんですが、最近は大人になりまして、その場所のルールに従ってます。“寝ぼけたこと言ってんな”と昔の僕が(今の僕を)見たら言ってると思いますけどね」など、話題は過去と今の社会や活動環境の違いや、“ルールを守ること”へ。「僕が(ステージに)立つきっかけは、ルールを守れるような人間じゃなかったからだと思うんですよね/(最近は)一般の人たちは“丸い中でのロック”をロックだと思っているようでして大変困惑しております(笑)。ですがもはや僕が活動する今後何年かでこれは変わらないと思います。なので自分も別にそこに合わせていこうとは思わないです。50代の美学と、その時代背景感に合った“自分の中の正解”を積み上げていきたいです」とロックファンの筆者としても色々と改めて考えたくなるトークが展開された。

「こういう綺麗な場所で歌う姿を見せたかった」と清春がつぶやくと、始まったのは亡き父を想って制作された「note」(5thアルバム『FOREVER LOVE』収録)。エモーショナルという言葉だけで形容するのも失礼だと思ってしまうくらい感情が溢れ出ているパフォーマンスだ。切なく悲しい曲だが、そこに確かに暖かい“愛”も明らかに込められている素敵な曲と歌唱だった。

MCで改めて30周年のツアーについて語ったあと、いよいよライブは最終ブロックへ。まず披露されたのは、数年前からライブで披露されている未発表曲「煌めいて」。訴えかけるようなパワフルな歌唱が光る曲で、マイクを口から離してほぼ地声で歌うという改めて清春の歌唱力と声量の凄さを実感する瞬間もあった。この曲について清春自身がどのようなプランを考えているか分からないが、音源化が待ち遠しくなるパフォーマンスだったのは間違いない。

ラストは「この瞬間は永遠だと思います。これが僕らの永遠」という言葉で始まった最新アルバム表題曲「ETERNAL」。心地よく身体を揺らしたくなるテンポ感の壮大な名曲だ。バンドメンバーの各楽器も光っており、会場にいる全員がこの音像に浸っているような、空間を一つにする力を持った曲に感じた。

曲が終わると、清春は改めてメンバーを紹介し、カーテンコールのあとステージを去った。清春の30年の歴史と技術が濃密に込められた、素晴らしいパフォーマンスだった。【清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA】はこれからSADSのリユニオン公演、そして延期となった本ビルボードライブ・ツアー横浜公演を交えながら続いていく。2025年2月9日のツアーファイナル、約10年ぶりの黒夢まで駆け抜ける清春を是非会場で見ていただきたい。

Text:Haruki Saito
Photos:森好弘

◎公演情報
【清春】
2024年5月17日(金)大阪・ビルボードライブ大阪 ※終了
2024年5月24日(金)東京・ビルボードライブ東京 ※終了
2024年8月15日(木)神奈川・ビルボードライブ横浜

◎セットリスト
<2024年5月24日(金)東京・ビルボードライブ東京 2nd Stage>
三日月
TWILIGHT
FRAGILE
洗礼
cold rain
ゲルニカ
note
煌めいて
ETERNAL

© 株式会社阪神コンテンツリンク