歯生え薬、UFO議連、官製婚活アプリ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

アイスホッケーのスイス代表アンドレス・アンビュール選手は、前歯2本が欠けているのがトレードマークでもある (KEYSTONE/Gian Ehrenzeller)

スイスの主要報道機関が先週(6月3日〜9日)伝えた日本関連のニュースから、①歯生え薬に大きな期待②国会にUFO議連設立③東京都が婚活アプリの3件を要約して紹介します。

歯生え薬に大きな期待

京都大学発スタートアップのトレジェムバイオファーマ(京都市)などが5月、歯を生やす抗体医薬品の臨床試験を9月に始めると発表しました。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)がその解説記事を先週掲載し、フランス語・イタリア語にも翻訳されて全国ニュースになりました。

SRFが取材したバーゼル大学の歯科研究者、ミヒャエル・ボルンシュタイン氏は「この薬は新しくて革新的だ」と強調。10年前から開発が進み、2020~21年頃に京大チームが「いくつかの画期的な研究が発表された」と説明しました。ただ、2030年の実用化の可能性については「少し熱狂的だ」と留保したうえで、臨床検査の一部として使用される可能性があるとみています。

オンラインメディアwatson.chはSRFをもとに、アイスホッケーのスイス代表、アンドレアス・アンビュール選手(41)の引退までには歯生え薬が完成しないと落胆する記事を掲載。同選手は上の前歯2本が欠けており、watson.chは歯生え薬による治療は現役中には間に合わないとして生成人工知能(AI)のChatGPTによる画像修正を試みましたが、ひどい失敗に終わるという面白記事に仕立て上げました。(出典:SRFwatson.ch/ドイツ語)

国会にUFO議連設立

未確認飛行物体(UFO)など未確認異常現象を安全保障の観点から議論する超党派議員連盟が6日発足しました。スイスでは仏AFP通信の記事が20.minやLe Matinといったフランス語圏の無料紙に転載され、議連の設置目的やメンバーが紹介されました。

記事は、「UFOは真剣に受け止められ、国家安全保障に対する潜在的リスクの角度からアプローチされるべき存在だ」と説明。約80人のメンバーの中には元防衛相も含まれていると紹介しました。

記事によると、米国防総省も2022年にUFO専門部署「全領域異常解決局(AARO)」を設置し、今年3月には一部のUFOが地球外生物であったり、米政府がその証拠を隠蔽していたりという「実証的証拠」はないとの報告書を発表しています。また日本防衛省もこれまで日本の領空で目撃されたUFOのいくつかを中国の偵察気球だと推定しています。(出典:20.min/フランス語)

東京都が婚活アプリ

スイスの無料紙は先週、東京都がAIを活用したマッチングアプリを開発中だと報じ、東京都の出生率と離婚率について指摘しつつ、アプリ開発の目的を説明しました。

ドイツ語圏のブリックは東京都の出生率が0.99と危機的水準に下がると同時に、離婚率も上昇していると指摘。「当局は男女を結び付け子どもを産むよう促そうと、AIの力を利用しようとしている」とアプリ開発の目的を説明しました。「それは都にとって慣れない領域であり、デートの仲介は必ずしも当局の中核事業ではない」と注記しました。

フランス語圏の20min.は仏AFP通信の記事を転載し、アプリに対する反応を紹介しました。アプリ利用には独身証明や納税通知書などの提出が必要だと説明。地方公共団体が婚活イベントを企画するのは珍しいことではないが、オンラインアプリの開発は異例だと位置づけました。日本のソーシャルメディア上では「当局が税金でやることなのか?」という批判がある一方、公的アプリなら安心できるという声も紹介しました。(出典:ブリック/ドイツ語、20min./フランス語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「武田薬品、スイスで最大120人の人員削減」(記事/日本語)でした。他に「高濃度の花粉で血圧上昇 スイス研究」(記事/日本語)、「アルプス氷河の融解始まる」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は6月17日(月)に掲載予定です。

校閲:上原亜紀子

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