TikTokで「将来の夢」が見つかる時代? “おすすめ”機能が珍しい職業の入り口に

朝の情報番組などのナレーションを担当するテレビナレーター。専門職中の専門職である職業が、最近TikTokを中心に注目を浴びている。その要因は、テレビナレーター・大江戸よし々のTikTokだ。多くの人気テレビ番組でナレーションを担当する大江戸が、TikTokでプロの技を披露した動画には、視聴者から大きな反響が。今回は、大江戸のコンテンツをはじめとする珍しい職業を紹介するコンテンツをもとに、TikTokで広がる職業の選択肢について考えてみたい。

大江戸よし々は、情報番組からバラエティ番組など幅広いジャンルのテレビ番組でナレーションを担当する人物。その声を聞けば、「あの番組の!」とわかるほど、引っ張りだこの人気ナレーターだ。TikTokでは実際にテレビで放送されたナレーションの一部やナレーション録りの様子を公開し、テレビナレーターがどのような仕事をしているのかを伝えている。

2024年3月7日に投稿された「1ふんでわかるテレビナレーター」では、笑いを誘うものや状況を説明するもの、語りなどさまざまな種類のナレーションを紹介。特にボイスオーバーと呼ばれる、映像に出てくる人物・イラストの発言に声をあてる様子は声優のようで、テレビナレーターという職業の幅の広さが感じられる。6月6日時点で約15万「いいね」を記録している本動画のコメント欄には、「ナレーターすご!!」「ナレーションでも種類が色々あって奥が深い!」「どうやったら(テレビナレーターに)なれる?」といったコメントが書き込まれており、大江戸のコンテンツをきっかけにテレビナレーターという仕事に興味を持った視聴者がいることが読み取れる。

不動産鑑定士の「桃太郎オフィス」もまた、職業に関する内容をTikTokやYouTubeで発信しているクリエイターのひとり。不動産鑑定士は国家資格を有する者だけが就ける職業で、おもに不動産の適正な価値を鑑定し、評価する「鑑定評価」を業務にしている。なかなか聞きなれない職業とあって、資格の難易度や年収など気になる点が多い不動産鑑定士。桃太郎オフィスのTikTokに投稿されている「不動産鑑定士の初任給が高い」では、「初任給(年収)600万円」といった給料事情や、国家試験は「司法試験ほど激ムズじゃない」「正しい努力さえすれば1、2年で合格できる」という内容が盛り込まれている。

さらに「不動産鑑定士サラリーマン 1週間のうた Part.1」では、不動産鑑定士が普段どのような業務をこなしているのかを紹介。月曜日はど田舎に出張、火曜日はお局様のご機嫌取り、水曜日は大量査定などと1週間のスケジュールをコミカルに描いているが、マイナーな資格ゆえ「合コンでモテない」といったオチも。しかし実際のところ不動産鑑定士は「文系三大難関国家資格」に数えられており、資格取得はそう簡単ではないが、桃太郎オフィスの発信から不動産鑑定士という資格に魅力を感じる人は多くいたようだ。

パーソナルトレーナーの片倉岳人はというと、TikTokでダイエットに関する知識を発信。視聴者から寄せられたダイエットに関する疑問や間違った思い込みに対し、専門家ならではの視点で回答、アドバイスを送っている。「カップラーメンは太りそう」という視聴者のコメントに対しては、「まったく問題ない」と発言。「お店で食べるラーメンよりもカロリーは半分以下」、仕事や家事で忙しいときはカップラーメンで簡単に食事を済まし、「心に余裕を作るっていうのはむしろ賢い選択」と、心のケアまでしている。

パーソナルトレーナーとあって、食事以外にももちろん筋トレに関する情報も投稿している片倉。「やってないよな」では“意味のない腕立て伏せ”を実演し、大きな反響を集めている。片倉のコンテンツは、発信自体はダイエットや筋トレの情報だが、パーソナルトレーナという職業にどのような知識が必要なのかがわかる動画と言えるだろう。

副業として、ポピュラーとなった動画投稿。フォローしていないアカウントの動画が、おすすめ(レコメンド)に表示されるTikTokでは、3人のような珍しい職種の裏側を受動的に知れるという醍醐味がある。特になかなか求人では見かけないテレビナレーターや、人材不足といわれている不動産鑑定士は、多くの若年層が視聴しているプラットフォームでの発信をきっかけに、将来のその道のプロが誕生する可能性もある。珍しい職業を紹介するコンテンツとの出会いは、TikTokユーザーの将来の選択肢を広げるきっかけとなっているといえそうだ。

(文=せきぐちゆみ)

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