GrandiosoのエッセンスとAB級ハイパワーを両立。高性能を誇るESOTERICのプリメイン「F-02」レビュー

ESOTERIC(エソテリック)から超弩級プリメインアンプが2モデル同時に登場した。A級の「F-01」とAB級の「F-02」である。両機ともにフラグシップシリーズ「Grandioso」で獲得した先鋭的な技術を惜しげもなく投入。前回の「F-01」 に続き、「F-02」のハイパワーなサウンドの真髄を探った。

ESOTERIC プリメインアンプ「F-02」(価格:1,870,000円/税込)

AB級ならではのハイパワーが魅力。120W(8Ω)の大出力を実現

セパレートアンプの音の良さは認めるが、大きな筐体を何台も並べる場所を確保できない。そんな切実な悩みを持つオーディオファンに向けて高性能なプリメインアンプが各社から登場し、人気を博している。

エソテリックからは中身がほぼセパレートアンプと呼べるハイエンドモデルが登場。だが、コンセプトを共有する2機種を同時に投入したため、どちらを選べばいいのか、新たな悩みが生まれた。「F-01」に続いて、今回は姉妹機の「F-02」を紹介しよう。

F-01はクラスAアンプで出力は30Wにとどまるが、一方のF-02はAB級で120W(8Ω)の大出力を実現。そこだけ比べると圧倒的優位に立ち、迷う余地はない。プリ部は「Grandioso C1X」の技術を大胆に取り込み、パワー部は同じくGrandiosoのモノラルパワーアンプ「Gandioso M1X」のエッセンスを導入。アンプ性能の指標とされる出力のリニアリティが高く、4Ω負荷では240Wの大出力を繰り出す。これだけパワーがあれば安心できるというリスナーは多いと思う。

F-02は電源整流平滑回路からの全段がデュアルモノラルで構成されている。電源トランスは940VAの大容量EIコア型を搭載

プリ部の最重要機能であるボリューム回路にC1Xと同等の「ウルトラ・フィデリティー・アッテネーターシステム」を投入したことはF-01とも共通し、0.1dB/1120ステップの音量調整は究極と呼ぶべききめ細かさだ。ボリュームノブは抵抗なく滑らかに回転し、リモコンによる音量操作も慣れると狙い通りにスーッと動く。私は適度な重さがあるボリュームの方が好みだが、動きに精密感のある本機のボリューム機構を好む人も多いはずだ。

エソテリックのソース機器を使っているなら、電流伝送を実現するES-Link Analogへの対応が本機を選ぶ重要な理由になる。さらに、プリ出力でも同機能を選べるため、エソテリックのパワーアンプを追加してマルチアンプシステムへの発展も視野に入る。

F-02のリアパネル。構成はF-01と同じで、4系統のRCA入力端子のうち、1系統はフォノ入力専用(MM/MC)。3系統のXLR入力は、ES-LINK Analogに対応している

また、プリ部のオーディオ回路の電源を強化電源ユニット「PS-01F」に委ねてさらなる音質改善をはかることもできる。そこまで拡張できるならセパレートアンプとどこが違うのかと言いたくなるほど、もはやポテンシャルはプリメインの枠を超えている。

F-01/F-02専用の外部強化電源ユニットPS-01F(495,000円/税込)。PS-01Fを接続することで、プリアンプ部の電源整流回路が合計18,800μFから27,200μF×2へとアップする

一瞬たりとも勢いと密度を失わない豊かなエネルギーを実感

ネットワークDACの「N-01XD SE」とディスクプレーヤー「Grandioso K1X SE」をES-Link AnalogでF-02につなぎ、ファイル音源とディスクで再生音を確認する。まずはパワーアンプの瞬発力とスケール感を検証するために大編成の管弦楽曲を再生したが、クレッシェンドのピークでも飽和することなくBowers&Wilkinsの「801 D3」を余裕で鳴らし、低弦やティンパニのグリップ力も含め、なんの不安もない。

クレッシェンドが一瞬たりとも勢いと密度を失わないことは大編成だけでなく室内楽や声楽にも当てはまり、音楽の流れで演奏が思いがけず大音量に達してもまだまだ余裕があるし、力感が飽和する気配もない。セパレートアンプに肉薄する豊かなエネルギーを実感した。

CDで再生したリッキー・リー・ジョーンズ「ヤング・ブラッド」の歌の説得力にも圧倒された。アコースティックギターが刻むリズムはタイトで力強く、音をカットする瞬間、空気がこちらにフッと動くときのリアルな感触にも息を呑む。

大音量時の余裕だけでなく、低音の速さを忠実に再現できるかどうかが、アンプの性能を判断する目安になる。その点でもF-02はプリメインの枠を超える実力を発揮。しかも、強化電源を追加すると、そのスピードはさらに一段階速くなる。さらに上を狙える奥の深さがそなわるのだ。

(提供:ティアック)


本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です。

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