最新映画で室井は「無職」に! 真下は?青島は?『踊る大捜査線』キャラ“肩書き”の変遷

織田裕二 (C)ふたまん+

1997年にテレビ放送がスタートしたドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)。90年代を代表する刑事ドラマの一つとなった同作は、これまでに映画にスペシャルドラマに、脇役を主人公にしたスピンオフ作品にと、数多くの関連作品が製作されてきた。

そして2024年10月には、12年ぶりとなるシリーズ新作劇場版『室井慎次 敗れざる者』が公開予定。2部作品となっており、11月には『室井慎次 生き続ける者』も公開予定だ。

同シリーズは織田裕二さん演じる脱サラした刑事・青島俊作を主人公とした刑事ドラマで、警視庁を「本店」、所轄署を「支店」と呼び、一般刑事と国家公務員I種(現:国家公務員総合職)である「キャリア」との差が明確に分られているなど、警察のサラリーマン的な組織のあり方に苦悩するシーンが多い。

その中で、今回の映画で主人公となる柳葉敏郎さん演じる室井慎次は、青島が初めて出会ったキャリア組だ。出会った当時の肩書は「管理官」で、青島たち湾岸署メンバーとの約束もあり「正しいことをするために上に行くこと」を目指していた。しかし、公開中の予告映像では室井の口から現在の肩書について「無職です」と語る場面がある。いったいどのような経緯があったのか、どのような物語になるのか公開が待たれるところだ。

同シリーズでは室井をはじめ、警察関係者たちの多くに肩書の変動があった。映画の前の整理を兼ねて、『踊る大捜査線』に登場したキャラたちの肩書の変遷に迫ってみよう。

■熱いハートを持つキャリア組「室井慎次」

前述したように、同シリーズには「キャリア」という言葉がよく出てくる。キャリアは国家公務員総合職試験に合格して警察庁に採用された人のことを指し、彼らは警部補からスタートして警視正以上になる少数精鋭のエリートだ。

国家公務員一般職試験に合格した人は「準キャリア」と呼ばれ、巡査部長からスタートする。刑事ドラマで最も多く登場する警察官たちは、各都道府県実施の警察官採用試験に合格し、巡査からスタートする「ノンキャリア」と呼ばれる人々だ。

室井は東北大学法学部卒のキャリア組。キャリアの中では東京大学・京都大学出身者が有利であるため、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』では、筧利夫さん演じる新城賢太郎管理官から「東北大でしたね室井さんは。この辺で手柄を立てといたほうがいいんじゃないですか?」と煽られることもあった。

ドラマ初登場時の役職は警視庁刑事部捜査一課の管理官で、階級は警視。管理官は上からの指示を受けて現場を統括する管理職ゆえ、青島ら現場と上層部との間で板挟みになることも多かった。

映画『THE MOVIE 』で警視正に昇任し、警視庁刑事部参事官になった室井。しかし命令に背いたことで警視に降格になり、参事官から北海道警察本部美幌警察署長になった。

39歳で再び警視正に昇任。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査担当管理官となる。このとき、活躍が認められ警視総監賞を受賞した。2005年の映画『容疑者 室井慎次』では警察庁と警視庁の確執に巻き込まれ辞表を出すも受理されず、広島県に異動となる。

そしてここからスピード出世を見せる。警視長に昇任して広島県警察本部警備部長となり、最終的には広島県警察本部長の警視監まで上り詰めた。警視監は警視総監に次ぐ上位階級で、室井は43歳という若さでこの地位についている。

映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では、上層部からの圧力に屈せずに戦い抜き、警察庁長官官房組織改革審議委員会委員長に就任。ついに、乱れた警察内部に自らメスを入れられる立場になったのだ。

■もう一人のキャリア組!ネゴシエーターとしても活躍した「真下正義」

室井とともにキャリア街道を進んでいたのがユースケ・サンタマリアさん演じる真下正義だ。本人は「ノンキャリ差別しませんから」と発言しており、誰に対しても腰が低く、ちょっと抜けたところがある人物だった。だが、彼は室井以上に生粋のエリートである。

警視長・警視庁第一方面本部長を父に持つ真下は、東京大学法学部を卒業後、国家公務員I種試験(現:国家公務員総合職試験)を経て警察庁入庁。警部補・刑事課強行犯係として湾岸警察署に研修にくる形で初登場した。

テレビドラマ版での真下は全く戦力にならない新人だった。水野美紀さん演じる柏木雪乃にベタ惚れしていて、彼女のサポートをするイメージが強かった。だが、エリートゆえ出世への意識は高く、昇任試験を受け警部に昇任している(※実際のキャリアは試験がない)。

強行犯係長から課長代理になるも、スペシャルドラマで犯人を逃がすミスにより映画『THE MOVIE』でまた係長に降格。しかし、映画終了後に警視となったことで、役職も警察庁刑事企画課課長補佐になった。

その後、ロサンゼルス市警に研修に行った真下は、映画『THE MOVIE 2』でネゴシエイターとして凱旋。2005年の映画『交渉人 真下正義』では警視庁刑事部交渉課準備室課長に就き、難事件を解決して活躍する。

恋愛面ではこのときに雪乃に「子どもを作ろう」とプロポーズし、その後結婚。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』では2人の子どもが生まれたことが明かされた。

また、交渉課に属していたが(※作品オリジナルの部署)、自身の活躍と交渉術を勝手にドラマ化してDVDをばら撒いたため課を外されている。

映画『THE MOVIE 3』では湾岸署に戻り、神田総一朗の後を継いで湾岸警察署署長に就任。最終的な階級は警視正で、湾岸署とともに成長してきたことがわかる。

■大出世した人物も…湾岸署メンバーの肩書き変遷

室井らキャリア組は少人数しか採用されない国家公務員であり、湾岸署の面々をはじめ日本の警察官は大多数がノンキャリアと呼ばれる地方公務員だ。こちらは大卒・高卒と学歴も幅広く、階級を上げるには現場経験と試験が必要になる。

主人公の青島俊作は青山学院大学経済学部を卒業して一般職に就くが、刑事に憧れていたため転職して警察官になったというキャラクターだ。

練馬警察署地域課で交番勤務を経験した後、巡査部長に昇任して湾岸警察署刑事課強行犯係に配属された。その後、異動を挟み映画『THE MOVIE 3』でついに警部補に昇任。強行犯係長になり責任が増していく。

男勝りで正義感あふれる深津絵里さん演じる女性刑事の恩田すみれは、東京都立城東高等学校を卒業後に巡査拝命していて、青島よりもキャリアが長い。同じ刑事課にいるが所属は盗犯係で、階級は巡査部長だ。前述の通り青島が警部補に昇任しているので、キャリアを追い抜かれた形になる。

作品に深みをもたらしていた、いかりや長介さん演じる和久平八郎もすみれ同様に高卒採用組だ。初登場時の時点では定年3か月前の巡査長。周囲の信頼も厚く、定年退職後に現役メンバーに呼び戻され、退職者再雇用制度で指導員として刑事課に復帰した。

最後は湾岸署のお笑いトリオ・スリーアミーゴス。上層部に媚びを売りつつも、ここぞという時に身を挺して部下を守る憎めない上司たちだった。

北村総一朗さん演じる署長の神田総一朗は、法政大学文学部卒業のノンキャリながら実は叩き上げで警視正まで上り詰めた実力派。さらに副署長・秋山晴海(斉藤暁さん)と刑事課課長・袴田健吾(小野武彦さん)も同様で、秋山は警視、袴田は神田の引退後に副所長になり、それにともない階級も警部から警視に昇任している。

作中ではほぼ仕事をしていないのでピンと来ないが、ノンキャリで警視・警視正になるのは大変なことなので大出世といえるだろう。

改めて見てみると、登場人物の多くがキャリアを積み重ねながら昇任を遂げている。特に室井は、青島との「上に行く」という約束を、紆余曲折ありながらも完璧な形で果たした。それがどうして「無職」となったのか……映画の公開が待たれるばかりだ。

© 株式会社双葉社