取手市でイノシシ目撃4倍 23年度82件 川沿いに生息か、守谷市は捕獲増 茨城

県内で捕獲されたイノシシ(県提供)

茨城県取手市でイノシシの目撃情報が増加している。2023年度に市に寄せられた目撃情報は前年度比4倍超の82件。身を隠すやぶなどが多い利根川河川敷沿いに生息しているとみられており、専門家は「見かけたら刺激せず、高い場所へ避難を」と呼びかけている。

取手市によると、市内でのイノシシの目撃情報は22年度に19件だったが、23年度に急増。本年度も21件(5日現在)が寄せられており、目撃場所の多くは利根川の河川敷やその周辺だった。

河川敷から約1キロ離れた江戸川学園取手中(同市西1丁目)敷地内では5月1日朝、成獣2頭が目撃された。いずれも頭を地面に下げ、食べ物を探していたとみられるが、程なくして茂みに姿を消した。発見した教員は「登校時間帯だったので生徒に危害を加えないか恐ろしかった」と振り返り、生徒にはイノシシを目撃しても刺激しないよう呼びかけたという。

イノシシは近年、県南地域などに生息域が拡大。同市に隣接する同県守谷市でも利根川や鬼怒川沿いなどで目撃情報が寄せられており、市は21年度、「鳥獣被害対策実施隊」を結成。22年度に115頭、23年度は125頭を捕獲した。

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、同県つくば市)によると、イノシシの体高は60センチ前後で雄の体重は60~100キロ。普段は人から隠れ、やぶの中で生活している。昼行性だが、人を警戒して夜に活動することもあるという。

イノシシの行動に詳しい堂山宗一郎主任研究員(40)は「イノシシは臆病。(自ら)人を襲おうとすることはほぼない」とした上で、人に衝突してくる時は「何らかのパニック状態にある」と指摘する。

尻尾が上がり、毛が逆立っていれば興奮しているサインで、中でも歯をカチカチと鳴らしている時は要注意。「軽トラックの荷台やフェンスにしがみつくなど高い場所に避難してほしい」と話した。

取手市は、夜間や早朝の通行時に鈴やラジオを携帯し、人の存在を音で知らせるよう注意喚起。イノシシの出現や生息域拡大を防ぐため、残飯やペットの餌を屋外に放置しないよう呼びかけ、庭木や樹木、やぶの適正管理を推奨する。

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