ジェトロ茨城 開所10年 県産品 輸出後押し 貿易投資相談5000件超

海外バイヤーがサツマイモ農家を訪ねた商談会=昨年、鉾田市内(ジェトロ茨城提供)

日本貿易振興機構(ジェトロ)の茨城県拠点「茨城貿易情報センター(ジェトロ茨城)」が開所から10年を迎えた。貿易投資相談件数は延べ5千件を突破した。背景には県内青果物の輸出増加や同拠点の認知度向上で、国内49事業所の中でも相談件数が上位となっている。河内章所長(40)は「今後は、海外取引への敷居を低くし、県内企業や県産品の輸出を後押ししたい」と意気込む。

ジェトロ茨城は、県の設置要望を受け2014年6月に開所。国内40番目、北関東では初めての拠点として開設された。主な業務は、貿易投資相談や海外展開に関するセミナー、研修会の開催、海外バイヤーの招聘(しょうへい)などを担う。

ジェトロ茨城によると、輸出国の規制や手続きなどの相談に応じる貿易投資相談業務の件数は、年平均500件以上に上る。今年3月に相談件数は5千件を超えた。支援企業(団体含む)は年平均千件以上に上っている。

中でも、農産物が特に多い。県のまとめによると、16年の青果物の輸出が7100万円だったのに対し、22年は5億600万円と約7倍以上に増加。それに伴い相談件数も増えてきた。河内所長は「国内市場の縮小で、海外を目指す企業も少しずつ増えているため」と分析する。

こうした青果物の輸出額の増加を受けて、昨年度からは、県内に青果物の海外バイヤー招聘を実施。マレーシア、シンガポールから大手輸入事業者を招き、サツマイモやナシなどの農産物の生産者との商談を行った。

企業から相談がある輸出相手国は中国から米国へ移り変わった。昨年度は米国が約17%と最も多く、中国は約9%にとどまった。

輸出国の変化は全国的な流れとなっている。23年度にジェトロが実施した日本企業の海外事業展開に関する調査では「中国ビジネスに対する意欲が過去10年間で最低」という結果となった。河内所長は「本県ではアルプス処理水に関する規制、中国経済の落ち込みなどの影響がある」と見る。

近年では、ニーズの高い食品分野に特化した「中小企業海外ビジネス人材育成塾」を運営。初めての海外バイヤーとの輸出商談に挑む中小企業を後押ししている。今後は「輸出へのハードルを下げられるよう、国内商社との商談から始める『間接輸出』やオンライン商談などを積極的に取り入れ支援したい」と見据える。

「海外取引の敷居を低くしていきたい」と語る河内章所長=水戸市柵町

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