三協立山・三協アルミ社、レジリエンス性に注力して顧客の裾野を広げる

__三協立山はスタンダード玄関ドアシリーズの「ファノーバ」をモデルチェンジし、「ファノーバ2」として販売を開始した。
水害へのレジリエンス性を向上することで、新たな顧客の獲得に挑む。__

三協立山 三協アルミ社は2016年5月に発売した、同社の主力玄関ドア商品「ファノーバ」をモデルチェンジ。床下浸水を想定した玄関ドア下端から200㎜において、業界初の浸水防止性能Ws‒1等級相当を確保した「ファノーバ2」を発売した。

今回のリニューアルのポイントは大きく四点ある。

一つ目は、高い浸水防止性能だ。近年の集中豪雨により、河川の氾濫に加え、市街地での内水氾濫が増加している。内水氾濫では、まず玄関から水が侵入するケースが多く、玄関ドアでの対策が不可欠となる。これに対しファノーバ2の片開きドアは、タイト材の硬度と形状を工夫することで浸水時のドアと枠の密着度を高め、ドアの下端から200㎜の止水高さで、JISの浸水防止性能Ws‒1等級相当(同社実験値)の性能を実現した。これは一般住宅用の玄関ドアでは業界初となる。

奥谷和正 住宅事業部長・執行役員はレジリエンス性をキーワードとした商品づくりの方向性を示した
佐伯正義 住宅商品部長は浸水防止性能について多くの問い合わせが寄せられていると説明

同社のシミュレーションでは、0.75坪、上り框の高さが200㎜の玄関で一般品と比較した場合、漏水で玄関が満水になるのにかかる日にちは、一般品が1時間から半日であるのに対し、ファノーバ2では5.5日と大きな差がつくことが分かっている。4月1日に販売を開始して以降、「浸水防止性能については多数の問い合わせを頂いており、関心の高さを実感している」(佐伯正義 住宅商品部長)と、大きな反響を得ているようだ。

そのほか、強風時などの急激なドアの開きによる衝突を防止するバックチェック機能付きドアクローザや、最大瞬間風速51m/秒に耐える耐風圧性能S‒3等級などのレジリエンス機能も付与し、暴風雨や台風から住まいを守る。

二つ目は、デザイン・カラーの充実だ。リニューアル後のラインアップは69デザイン、20カラーを用意している。特に、素材感のあるデザインについて高いニーズがあり、天然木を削りだしたようなモールデザインの「リラックスカーブ」を追加したほか、防火・非防火で、凹凸感のある浮造り調のシートを使ったデザインを追加した。また、採光部のガラスは、かすみガラス、チェッカーガラス、シルヴィクリアガラスの3種類から選択でき、オリジナル性を出せるようにした。さらに、採風ドアに関しては、できる限りスリム化を図り、一見しただけでは採風窓と分からないようなすっきりとしたデザインとした。

三つ目は、暮らしの利便性向上として、デジタル化の加速に合わせた「e‒エントリー2」システムを採用したこと。スマートフォンを携帯していればドアに近づくだけで自動解錠できるほか、事前に登録すれば交通系ICをかざすことでも解錠ができる。

プランは2種類。普段スマートフォンを使用しない高齢者などがスマホの代わりに持参していれば、同様に近づくだけで自動解錠できるエントリーキー付きのスマートプランと、スマートフォンをカギとしてメイン使いする人向けのリモコンプランを用意した。

四つ目は必須項目として新断熱基準への対応を行っている。採風デザインを含む全デザイン(片開きドア・K2仕様)で熱貫流率2.3W/(㎡・K)以下を実現、断熱等性能等級5以上を満たす値となっている。

不調な新築市場で新たな顧客確保に向け

レジリエンスを軸にした商品展開

新商品の「ファノーバ2」。浸水防止性能の高さが特徴
タイト材の形状を工夫して浸水防止性能を向上(特許出願中)

リニューアルの背景としては、新築市場の低迷がある。物流費、資材費が高騰するなかで棟単価を上げることにも限界があり、売り上げ確保のためには新規顧客の獲得が必要だと判断したという。こうした状況下で、レジリエンス性を同社の強みにして、新たな顧客獲得を目指す。

同社は災害対応力に優れたアルミ樹脂複合サッシとして「ALGEO(アルジオ)」を展開しているが、これに併せて玄関ドアでレジリエンスを前面に打ち出すことで、印象づけたい考え。まずは玄関ドアで強みをつくり、それをサッシ、ウォールエクステリア、インテリア建材などに繋げていくとする。

執行役員の奥谷和正住宅事業部長は、「レジリエンスの強化は、建築基準法でも一丁目一番地に掲げられている重要な項目。三協アルミとしては、設計思想・コンセプトにレジリエンスというキーワードを設定し、商品提案を進めていきたい」と、今後レジリエンス性能を一つの軸とした商品展開をしていく方針を示した。

まずはファノーバ2を従来品に比べて2年目までに販売量15%アップすることを目標に、幅広い顧客へアピールしていく。

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