「AIアプリはアイデア一発でビジネスになる」インテル Future Tech アイデアソン/最優秀賞に“能動的に授業支援するAI”【特集・集中企画】

by 石山 裕規

優秀賞に輝いた「AI Intern」チーム(画像左は、プレゼンターを務めたインテル(株)技術本部 部長 工学博士の安生健一朗氏)

インテル(株)は6月6日、同社が主催したAIハードウェア・ソフトウェア開発者向けイベント「インテル AI Summit Japan」にて、分科会セッション「インテル Core Ultra プロセッサー搭載AI PC向けインテル Future Tech ビジネス・アイデアソン受賞作品の紹介」を実施。今年2024年5月に開催されたアイデアソンに参加したチーム各作品の紹介と、最優秀賞および優秀賞作品の表彰を行なった。

ビジネス・アイデアソン「インテル Future Tech アイデアソン」は、開発者コミュニティーの育成と、インテルの技術を活用して社会的課題に取り組む未来を作る開発者たちへの支援を目的として実施されたもの。近年増加するAIベンチャー(AIテクノロジー)の特徴として、学会で発表された新しいアイデアがそのままビジネスになる、“技術者=AIデベロッパー=起業家”という流れが日本でもかなり浸透しているとの印象をもったことから、今回のアイデアソンの実施に至ったという。

「インテル Future Tech アイデアソン」の開催概要

なぜハッカソンではなく「アイデアソン」なのか。インテルによると、ハッカソンというと「短期間に開発する。とにかくプロダクトを作る」ということになるが、そもそもAI PCではどんなものを作るのかのアイデア一発でなんでもできると考えており、むしろ作り込むことよりも「どんな新しいことができるのか」だけで人を動かせること、そして新しいものを作ったら「どのようにビジネス的に成長させるのか、本当にビジネス的な価値があるのか」を考えながら、アイデアを出すことが重要だと感じたからとのこと。こうしたことを踏まえて、審査には3人のベンチャーキャピタリストが参加することとなった。

アイデアソン審査に協力したベンチャーキャピタリスト

  • サイバーエージェント・キャピタル株式会社 執行役員 速水陸生氏
  • 株式会社ディープコア シニアディレクター 三宅俊毅氏
  • スクラムベンチャーズ合同会社 パートナー マイケル松村氏
審査に協力したベンチャーキャピタリストの3名。本セッション前に実施された基調講演の場に登壇した

作品の応募受付は2024年4月22日から5月15日にかけて行なわれ、18歳以上の個人またはチーム(最大5人)で、ソフトウェア開発の経験があることが条件。またソフト開発には、同社が無償提供しているAI PC向けソフト開発ツール「OpenVINO」および「インテル Core Ultra プロセッサー」を活用することとなっていた。

最終的に応募作品は全部で5作品。各作品はビジネス系にフォーカスしているのが特徴だ。このことについてインテルは、アイデアソンを行なうにあたって、インテル側から事前情報として「日本のパソコン市場が約2,000万台~約3,000万台あたり」「7~8割が法人ビジネスである」と説明。かつ「AIはコンシューマーよりも、やはり企業向けの用途がほとんど」ということに着目したことから、このような結果に至ったのではないか、と総括している。各作品の審査も主に実用的かどうか、現実の問題を解決しているかどうかの部分で評価したという。

アイデアソン参加チームとアイデア概要

  • 【最優秀賞】 チームF:「教育支援向け課題解決支援AI」
  • 【優秀賞】 チームB:「AI Intern」
  • チームE:「プロジェクトタスク割振AI」
  • チームD:「Local Resource Analysis 情報検索・マネージメント支援システム」
  • チームC:「マネージャー手助けAI」
担当メンバーのプロジェクト進捗状況を効率的に可視化する「マネージャー手助けAI」
NPUを活用して特徴量だけを抽出したデータベースを構築する「Local Resource Analysis 情報検索・マネージメント支援システム」
AIリーダーがタスクを明確にして細分化する「プロジェクトタスク割振AI」
エンジニアしか作れないRPAツールをAIで制作できる「AI Intern」
scratchを使用したプログラミング教育の負担を軽減し、教師不足を解消する「教育支援向け課題解決支援AI」

今回の「インテル Future Tech アイデアソン」では、最優秀賞にチームFの「教育支援向け課題解決支援AI」が、優秀賞にチームBの「AI Intern」が、それぞれ輝いた。表彰チームには副賞として「インテル Core Ultraプロセッサー搭載のAI PC」が1人1台ずつ贈られた。

プレゼンターを務めたインテル(株)技術本部 部長 工学博士の安生健一朗氏は「こうしたソフトウェアのアイデア一発で新しいものを作ることはビジネスになる。この発想がいまAI PCには求められていると思う」と語る。さらに「OpenVINOには、オープンソースのライブラリが揃っているので、作り込むのは実は簡単。本当にアイデア一発で価値を提供できる。今回のような発想をどう広げて、どうオプティマイズしていって最適なソフトに仕上げていくかの過程がとても重要だ。フィードバックを得ながら、それぞれのアイデアをぜひいいものにしてほしい」と述べた。

最優秀賞に輝いた「教育支援向け課題解決支援AI」チーム。ビデオメッセージで「今後もアイデアソンのようなイベントに参加してアイデアを出す人、エンジニアとしての力を高めていきたいと思います」と喜びを語った

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