大島優子「第9話の最後のシーンは、この作品に入って一番緊張しました」――「アンチヒーロー」インタビュー

TBS系では長谷川博己が主演を務める日曜劇場「アンチヒーロー」が放送中。長谷川が演じるのは、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨正樹。「弁護士ドラマ」という枠組みを超え、視聴者に“正義とは果たして何なのか?”“世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?”を問いかける、前代未聞の逆転パラドックスエンターテインメントだ。

第9話までに、12年前の糸井一家殺人事件の驚愕(きょうがく)の真実が明かされ、第9話では、ラストの白木凛(大島優子)の行動が視聴者に大きな衝撃を与えた。そこで今回は、最終回のキーパーソンとなる白木を演じる大島さんに、見どころや作品に掛ける思いを伺った。

――ついに最終回になります。ここまで演じてどんなことを感じていますか?

「まず、現場のスタッフさんや共演者の皆さんの気合の入り方がすごいです。プロデューサーさんが4年間温めて大切に作ってきた企画なだけあって、皆が皆、本当に良いものを作ろうという団結力がありますね。なかなかほかでは味わったことのない雰囲気で、質の高い現場だと思います」

――具体的にそれを感じた瞬間はありましたか?

「すごく細かい設定まで皆が意見を出し合い、疑問やふに落ちないところは納得がいくまで話し合って作っています。それを口に出して言えるのは、空気感が良くないとできないことだと思いますし、それぞれがプロフェッショナルだからこそ成り立つんだなと見て取れます」

――あらためて、白木凛というキャラクターの解釈と魅力をお聞かせください。

「事務所の皆さんは、キャラクターのある個性の強い方々ですが、その中で“中和剤”になっているのが白木です。明るく陽気に見えますが、しっかり一つずつの事件を分かりやすく自分の言葉で発しているので、視聴者の方にも身近に感じてもらえているのかなと思います。パラリーガルは、捜査に関与するよりも割と事務手続きが多かったりするので、きっとこの捜査資料を(白木が)作ったんだろうなと勝手にいろいろ思いながら演じています。捜査潜入に参加した時は、資料が役に立っているなと楽しんで撮影をしていました」

――今回、11年ぶりの日曜劇場出演で、かつ連続ドラマは久しぶりの出演となりましたが、現場に入る前はどのようなお気持ちでしたか?

「最初は『大丈夫かな、できるかな、日曜劇場だしな』と漠然とした不安はありましたが、顔合わせで本読みをした時に、皆さんの気合の入り方やそれぞれの思いを聞いて『よし、やるしかない』と背中を押されたというか、尻をたたかれたような気持ちになりました。そこからは、緊張や不安というよりかは白木としてしっかり役を担えたらいいなと、気持ちが引き締まりました」

――大島さんの方に反響は届いていますか?

「最初は誰からも連絡がなかったのですが、第2、3話目ぐらいから友達やほかの現場、プライベートで会う人から『ちょっと待ってね。自分なりの考察を話すね!』と言ってくれて。皆、考察しながら楽しんで見てくれていてうれしかったです」

長谷川さんはその場でキャラクターをどんどん作っていく

――白木を演じていて印象的だったシーンはありますか?

「第9話の最後の(野村萬斎演じる)伊達原(泰輔)さんと対峙(たいじ)するシーンは、この作品に入って一番緊張しました。私は、誰かと対峙するシーンはあまりなく、最後の最後で伊達原さんと面と向かってセリフを交わすようなシーンが出てきたのでドキドキしましたね。ですが、その場面が役としてもそのまま緊張していて良いシーンだったので、その感情を受け入れて演じました」

――自身との共通点や共感できる部分があればお聞かせください。

「勝手な想像ですが、白木は明るく陽気に見えますが、たぶん明墨法律事務所に入る前に何社か断られて挫折をしてきたと思うんですよね。ただただ陽気な人ではなく、彼女の明るさは自身の過去の経験から培って生まれたキャラクターなので、そこはすごく通じるというか、分かるなと共感しています」

――白木は、要所要所で意味深な表情もあり、実は裏があるのでは?と感じる瞬間があります。

「そこまで意識はしていないですが、ずっと明るくテンションが下がらない人って異様ですよね。そこが皆さん、『あれ、実はそうなんじゃないの?』といろいろ考えていただいていると思います。ずっとテンションが高いままでいられる人はあまりいないので、こういう役を演じられたのは新鮮で良かったです」

――長谷川さんの印象についてお聞かせください。

「長谷川さんは役者さんとして唯一無二ですごく面白い方です。普通、現場に入る時は自分の役柄を作ってから入る人が多いと思いますが、長谷川さんはその場でキャラクターをどんどん作っていき、段取り、テスト、本番の間に出来上がっていきます。それをまじまじと目の前で見せてくれるので、現場にいるだけで面白くて楽しいです。また、長ゼリフは場を持たせるのが難しいですが、長谷川さんはそれをその都度考えて作っていくので、発する言葉や動きに新鮮味があり、放送時にもそれがしっかり保たれていてすごいなと感じます。あとは、主演としての立ち振る舞いや、長ゼリフをどう言うか自分がセリフをしゃべっていない時はどうしているかなど見て学んでいます」

――紫ノ宮飛鳥を演じる、堀田真由さんの印象も教えてください。

「真由ちゃんは普段、ニコニコしていて常にいろいろな言葉に反応してくれますが、紫ノ宮はクールで笑わない真逆のキャラクターなので、役作りも難しかったと思います。紫ノ宮はポーカーフェースですが、繊細な表情は目と眉毛で表現されていて、紫ノ宮として存在しているなと現場に入ってから感じたので、そこは真由ちゃんの魅力的な部分です」

“アンチヒーロー”という言葉を作ったのがすごく納得できました

――本作の魅力をお聞かせください。

「一番に思ったのは、本当に正義と悪は表裏一体でどう転ぶか分からないなということです。この前実際に、裁判所で殺人犯の判決や強盗致傷の第1回目の公判を見てきました。同じ人間ですが法を犯した人が身近にいて、いつの間にか人は魔が差したら犯罪をしてしまうんだなとあらためて実感しました。アンチでもヒーローになってしまうし、ヒーローのアンチにもなり得るということを気付かせてくれて、“アンチヒーロー”という言葉を作ったのがすごく納得できました。『あなたには何の正義がありますか』みたいなものを突き付けられているのがこの作品の魅力だと思います」

――最終回に向けて振り返っておくべきシーンはありますか?

「第1話の冒頭、明墨先生の接見室のところから伏線は散りばめられています。白木に関しては、第7話からあれ…? みたいなのがあるので…。もう一度全部見ていただきたいです!」

――最終回の見どころもお願いいたします。

「もう見ていただけたら分かりますというところと、最後の最後も『え…まさか…』と皆さんがびっくりするような展開がどんどん繰り広げられていきます。本当に最後まで気が抜けないですし、ギアが上がりっぱなしで終わるので、皆さん覚悟をしておいてください!」

【プロフィール】

__大島優子(おおしま ゆうこ)
__1988年10月17日生まれ。栃木県出身。AKB48を2014年に卒業。女優として活躍中。近年の出演作はNHK大河ドラマ「青天を衝け」、「正義の天秤」(NHK総合)、NHK連続テレビ小説「スカーレット」、「東京タラレバ娘」(日本テレビ系)、「七人の秘書」(テレビ朝日系)、24年7月には日本テレビ系にて「GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜」が放送予定。映画の出演作には「紙の月」「生きちゃった」「天間荘の三姉妹」などがある。

【番組情報】

「アンチヒーロー」
TBS系
日曜 午後9:00~9:54 ※6月16日は午後9:00~10:19

取材・文/N・E(TBS担当)

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