家での最期を希望した父 看取りを決意した母 父と母、最後の日々の記録 「あなたのおみとり」公開決定

自宅での最期を希望した父と看取りを決意した母の、最後の日々を見つめたドキュメンタリー映画「あなたのおみとり」が、2024年9月より劇場公開されることが決まった。

「あなたのおみとり」は、末期がんの父と父を家で看取った母の、40日余りにわたる最後の日々を記録した作品で、「東京干潟」「蟹の惑星」(共に2019年)で、新藤兼人賞金賞や文化庁優秀記録映画賞などを受賞した村上浩康が監督を務めた。「どうしたら父の介護や母のサポートにもっと積極的に取り組めるだろう…」と考え、カメラを手にした村上監督が目にしたのは、高齢化社会や老々介護など、今の日本が抱えるさまざまな現実と、私たちの日々の暮らしの中で繰り返されている「生」と「死」だった。

村上浩康監督と国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則氏のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■村上浩康(本作監督)
私の父は2019年に胆管がんを患い、以後入退院を繰り返していましたが、最期は病院での治療も難しくなり看取りをすすめられました。現代では多くの人が病院や施設で亡くなり、身内であっても人の死を間近で見ることはめったにありません。そこでこの機会に看取りの過程を出来るだけ綿密に撮影してみよう、カメラを通して人⼈の死とじっくり向き合ってみようと思いました。
その結果、父の看取りをしている小さな茶の間から、高齢化社会や老々介護など今の日本が抱える様々な現実が見えてきました。そして父が衰弱していくのに対して、逆に母が生を実感していく過程も見えてきました。家に出入りする様々な人たちとの出会いの中で、母はイキイキと活力を得ていったのです。父の死を撮ることは、母の生をも撮ることなのだと解りました。私の人生の中でこれほど両親を見つめたことはなく、初めて両親を一人の人間として、さらに言えば一個の生命として見つめることが出来たと思います。
私が生を受けたのは両親のおかげであり、その生も意外に儚くあっけない。そのことを父が死をもって教えてくれました。人間は生まれて死ぬ、その間の営みが生きるということである。そんな当たり前のことを父と母の映画を作りながら改めて知ることが出来ました。

■岡田秀則(国立映画アーカイブ主任研究員)
最新作の『あなたのおみとり』によって、村上浩康というドキュメンタリー作家が新たな領域に踏み入ったことは間違いないだろう。だがこの映画は、これまでの村上作品がまとってきたキャメラの優れた即物性を裏切ることも決してない。人間の死を真正面から扱いながら、湿っぽい感情を催させることなしに生き物の厳然たる生を感じさせるという意味では、実はこれまでの村上作品に真っすぐ連なる一本でもある。

【作品情報】
あなたのおみとり
2024年9月 ポレポレ東中野 ほか 全国順次公開
配給:リガード
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