ケルヒャー、業務用ロボット掃除機を年内に国内投入へ

by 中林 暁

ケルヒャーが発売予定の業務用ロボット掃除機。奥に見えるのは参考展示された家庭用モデル

ケルヒャージャパンは、今後の事業戦略などを紹介するイベント「ケルヒャーフェア 2024」を5月31日に開催。販売店などのパートナーを招いて今後登場する清掃機器などの新製品を披露した。

家庭用高圧洗浄機で知られるドイツメーカーのケルヒャーだが、実際はビルなど広い建物を清掃する業務用クリーナーや、草刈り機などのガーデンツール、大きな重機まで洗える超高圧洗浄機など幅広く展開。デザイン面ではイエローのカラーが印象的だが、直近では家庭用製品をホワイトに統一するなどの動きもある。

アジアの中でも重要な市場と位置付ける日本でのビジネス成長を見込んでおり、家庭用と業務用それぞれに今後も新製品を投入予定だという。

海外では販売中の家庭用ロボット掃除機も参考展示した

業務用ロボット掃除機を年内投入。日本未発売の家庭用も参考展示

業務用のロボット掃除機(床掃除ロボット)「KIRA CV 50」は2024年中に発売予定。業務用では、人が押したり乗ったりする大型の掃除機や、自動運転の床洗浄ロボットは既に展開中だが、より小回りの利くコンパクトサイズで乾式の吸引掃除を行なうモデルが登場する。

業務用ロボット掃除機「KIRA CV 50」

自律的なマッピングとアプリによる効率的なルートで清掃を行ない、公共エリアでも安全に動作。端まで掃除できるサイドブラシを2つ備え、交換可能な36Vバッテリーで動作する。人の手でも移動できるように伸縮ハンドルも内蔵している。

そのほか、日本では未発売だが家庭用のロボット掃除機も海外では販売しており、これらの製品も参考展示された。

「RCV 5 & Suction Station」は、吸引と水拭きを同時に行なえるロボット掃除機に、掃除後の自動ゴミ取集ステーション(ダストステーション)がセットになったもの。回転式のLiDARナビゲーションとデュアルレーザーで障害物を検知して避けながら掃除する。カーペットを自動で検知して吸引力を上げるオートブーストも搭載する。

RCV 5 & Suction Station
本体底面

「RCF 3」は拭き掃除に特化したモデルで、大きなローラー型ブラシが回転して水拭きを行なう。水タンクは清水と汚水の2つを備える。内蔵センサーによるナビゲーションで動作し、カーペットは自動で回避しながら掃除する。

RCF 3
ローラーブラシで拭き掃除に特化

「温水除草」など高圧洗浄以外にも幅広く展開

清掃機器大手であるケルヒャーは世界82カ国でビジネスを展開し、2023年の売上高は過去最高の5,000億円を突破。来年2025年には創立90周年を迎える。ケルヒャージャパンの大前勝己社長は、これまで海外の展示会で受賞した高圧洗浄機などを紹介しながら、研究開発投資やサステナビリティへの取り組み、世界各地で歴史的な建造物を洗浄するクリーニングプロジェクトなどについても説明した。

ケルヒャージャパンの大前勝己社長

「高圧洗浄機のケルヒャー」というイメージから「クリーニングソリューションを提供するブランド」への転換についての一例として、マーケティング&プロダクト本部の加藤統子本部長は“薬剤を使わない温水除草”を紹介した。

植物にお湯をかけると、根のタンパク質構造が変異して根から枯れるという特性を活かし、雑草などを取り除く際に98℃の温水をかける「温水除草システム HDS 1000 DE WEED」を展開。手で刈る場合と比べて、1カ月後でも新しい草が伸びていないという結果が出ていた。

世界遺産など、除草剤が使えない場所でも環境に配慮した草刈りができるという。自治体や建設土木の現場、テーマパーク、スポーツ野外施設、工場施設などでの利用を想定している。

温水除草システム HDS 1000 DE WEED
手刈りでは1カ月後に再び雑草が
温水除草は1カ月後も枯れたまま

そのほかにも、環境にやさしい洗浄として薬剤不使用の「ドライアイス洗浄」を紹介。従来は溶剤を入れる方法が主流だった金型などの洗浄に比べて、対象を傷つけず、排液も発生せずに汚れを取ることができるという。ドライアイスは、石油精製プラントやアンモニアなどの製造過程で排出されるCO2を回収して精製/加工したものを利用する。

ドライアイスブラスター
一瞬で気化するため排液を発生しないという
自動車整備工場でも活用

© 株式会社インプレス