2024年5月の「負債1,000万円未満」倒産 54件 2カ月連続で前年同月を上回る、1-5月累計は2年連続200件台

2024年5月「負債1,000万円未満」倒産状況

コロナ禍の資金繰り支援策の効果が薄らぐなか、ゼロゼロ融資の返済開始に加え、物価高、人件費の上昇などで小・零細企業の経営の苦境が顕在化している。
2024年5月の負債1,000万円未満の企業倒産は54件(前年同月比1.8%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。5月としては、4年連続で前年同月を上回った。1-5月累計は217件(前年同期比5.3%増)で、2年連続で200件を超えた。

産業別は、最多がサービス業他の20件(前年同月比9.0%減)。次いで、小売業の10件(同66.6%増)、建設業(同±0.0%)と卸売業(同200.0%増)の各6件と続く。
原因別は、販売不振が27件(同35.7%減)で、半数(構成比50.0%)を占めた。
資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が51件(前年同月比4.0%増)と、9割超(構成比94.4%)に達した。
形態別は、破産が52件(前年同月比1.8%減、構成比96.2%)、特別清算が2件(前年同月ゼロ)で、消滅型の倒産が構成比100.0%だった。

負債1,000万円未満で倒産した企業は大半が小・零細企業で、資金と人的リソースの両面から制約を受けている。また、担保や信用の低さから金融機関は信用保証協会付き貸出に依存するケースが多く、企業の実態を把握しにくい可能性もある。

コロナ支援策の副作用で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しい企業が増えている。さらに、ゼロゼロ融資の返済、物価高や人件費上昇のほか、後継者問題や深刻な人手不足で業績拡大も難しい小・零細企業は先行きを見通せないのが実情だ。このため今後は、金融機関だけでは限界があり、再生ファンド、支援機関などの外部機関の支援が急務になっている。

※本調査は、2024年5月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


2024年5月の倒産54件、2カ月連続で前年同月を上回る

2024年5月の負債1,000万円未満の倒産は54件(前年同月比1.8%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。月間50件台は、2023年12月以来、5カ月ぶり。
コロナ禍の2020年は、年間平均が53件(前年43件)に急増した。その後、コロナ関連支援策で企業倒産が大幅に抑制され、2021年は平均39件、2022年は同34件と減少に転じた。だが、2023年に入ると支援策の効果が薄まり、各種支援策も縮小・終了に向かった。
また、コロナ禍が落ち着くタイミングで、円安に伴う物価高や人件費の上昇が企業の資金繰りを圧迫し、年間平均は41件に増加した。
2024年は2月と3月を除く3カ月で前年同月を上回った。ゼロゼロ融資の返済に加え、コストアップに耐え切れない小・零細企業の負債1,000万円未満倒産は増勢をたどる可能性が高い。

【産業別】10産業のうち、3産業が前年同月を上回る

産業別は、10産業のうち、製造業、卸売業、小売業の3産業が前年同月を上回った。
最多は、サービス業他の20件(前年同月比9.0%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は37.0%(前年同月41.5%)だった。
農・林・漁・鉱業1件(前年同月2件)と情報通信業4件(前年同月比20.0%減)が2年ぶり、不動産業が1件(同75.0%減)で4年ぶり、運輸業が3件(同25.0%減)で6年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。また、金融・保険業が2年ぶりに発生がなかった(前年同月1件)。
一方、製造業3件(前年同月比200.0%増)と卸売業6件(同200.0%増)、小売業10件(同66.6%増)が、それぞれ2年ぶりに前年同月を上回った。建設業は前年同月と同件数の6件だった。

業種別では、受託開発ソフトウェア業と労働者派遣業が各3件(前年同月2件)、内装工事業、野菜卸売業、婦人服小売業、ジュエリー製品小売業、広告業が各2件。また、屋根工事業、電気通信工事業、肉加工品製造業、製版業、自動車部分品・附属品製造業、乾物卸売業、自動車部分品・附属品卸売業、荒物卸売業、菓子小売業、パン小売業、二輪自動車小売業、電気機械器具小売業、宗教用具小売業、機械設計業、お好み焼き・焼きそば・たこ焼店、持ち帰り飲食サービス業、看護業、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所、訪問介護事業が各1件で、それぞれ前年同月を上回った。

【形態別】消滅型の破産が9割超

形態別は、破産が52件(前年同月比1.8%減)で、全体の96.2%を占めたが、4年ぶりに前年同月を下回った。
負債1,000万円未満は大半が小・零細企業で、生産性向上など将来への投資は後手に回りやすい。また、対応力の面で新たな取引先の開拓もできず、経営再建や事業再生は難しい。こうしたことから、再建型より消滅型の破産で債務整理を進めるケースが多い。

【原因別】販売不振が5割

原因別は、最多が「販売不振」の27件(前年同月比35.7%減、構成比50.0%)で、4年ぶりに前年同月を下回った。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は、前年同月と同件数の2件だった。
「不況型倒産」(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は29件(前年同月比34.0%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。構成比は53.7%(前年同月83.0%)で、5月では2010年以降の15年間で2018年(65.7%)を下回り最低となった。
このほか、「他社倒産の余波」が14件(前年同月比250.0%増)で2年連続、代表者の病気や死亡を含む「その他」が5件(同400.0%増)で3年ぶり、「事業上の失敗」が3件(同200.0%増)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
小・零細企業は、資金的な制約から経営再建や事業転換への取り組みが難しい。業績不振から抜け出すことができず倒産に至るケースも多い。

【資本金別】1千万円未満が9割超

資本金別は、1千万円未満が51件(前年同月比4.0%増)で、4年連続で前年同月を上回った。構成比は94.4%(前年同月92.4%)で、2.0ポイント上昇した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が22件(前年同月比46.6%増)、「個人企業他」が12件(同33.3%減)、「1百万円未満」が10件(同±0.0%)、「5百万円以上1千万円未満」が7件(同16.6%増)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が2件(同50.0%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。一方、「5千万円以上1億円未満」は1件で、6年ぶりに発生。「1億円以上」は2010年以降、5月では発生がない。

© 株式会社東京商工リサーチ