【深刻】「道を譲ってもらえない」救急車の“走行妨害”相次ぐ 到着時間がこの20年で4分増加…過去には搬送中交差点で衝突も

一刻を争う“命”を運ぶ「救急車」。今、そんな救急車が現場に到着するまでにかかる時間が、年々遅くなっているといいます。

2002年の平均到着時間は約6分。しかし、2022年になると10分に伸び、この20年で約4分も遅くなっていることが分かりました。

救急車に“道を譲らないケース”の増加が関係しているといいますが、現場ではいったい何が起こっているのでしょうか。「めざまし8」は、消防署の協力を得て救急車にカメラを設置。命の現場の現状を取材しました。

サイレンが鳴っていてもおかまいなし

埼玉県の久喜消防署の救急車が、サイレンを鳴らしながら赤信号の交差点へと進入します。

救急隊員「直進します。止まってお待ちください」

救急隊員は周囲の車に停止を促しますが、救急車の目の前をトラックが通過していきます。
そのわずか2分後にも…。

救急隊員「交差点を右に曲がります。そのまま止まってお待ちください」 救急隊員「ゆっくり出ます、見づらいです」 救急隊員「はい(車)来てるよ」

またも、サイレンを鳴らす救急車の目の前を乗用車が通過していきました。

救急車や消防車などの緊急車両がサイレンを鳴らしながら近づいてきた場合、車は、速やかに道を譲らなければなりません。走行を妨害した場合、普通車は1点の減点、6000円の反則金が生じます。

久喜消防署 救急隊員 盛本悠弥さん:
ほとんどのドライバーさんが緊急車両に気付いて(道を)譲ってもらって、救急車がスムーズに通れることの方が多いんですけど、その中でも何回かは道を譲ってもらえないときもあったりとか。救急車が通りたくても通過できなくて、1分1秒急いでいる中で、病院到着が遅れてしまうなと感じる時も正直あります。

埼玉県の秩父消防署でも、出動要請を受け、救急車が署から現場へと向かおうとしたその時…。

消防隊員「停止願います、停止願います、停止願います」

停止を促すアナウンスを無視し、2台の車が通過していきました。

救急車が遅れることへの影響について、救急科専門医で東京曳舟病院の三浦邦久副院長は…。

伯鳳会 東京曳舟病院 三浦邦久副院長:
重篤な患者ほど早く病院に入って適切な治療を受けることによって、予後(治療後の経過)が決定することがあり得ます。1分でも早く到着された方がよりよいと。

過去には衝突事故も…原因は「遮音性」「高齢化」?

一刻を争う救急車の走行を阻害する行為。今年2月には、最悪の事態を招いてしまったケースもありました。

愛媛・松山市、サイレンを鳴らしながら交差点に進入した救急車に、黒い車が衝突。

救急車の中にいたのは、事故で搬送途中だった80代の男性と付き添いの女性。2人とも打撲などのけがをしました。

専門家によると、救急車に道を譲らないドライバーが相次いで目撃される理由として、「遮音性が増した車」と「ドライバーの高齢化」が考えられるといいます。

自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏:
現代の車はほぼエアコンを搭載していて窓を閉めている。気密性がいいですし、遮音性も昔とは全く違うので、救急車のサイレンの音が聞こえにくくなっていると思います。
それと今、日本の社会自体が高齢化社会ですけれども、運転している人の年齢も高齢化していて、耳が聞こえにくい。

実際に、久喜消防署の救急車では、こんな場面もありました。

救急隊員「赤信号直進します、止まってお待ちください。ご協力ありがとうございます。そのまま止まってお待ちください」

救急隊員の呼びかけに、ほとんどの車が止まる中、交差点をそのまま直進する乗用車が。

救急隊員「この高齢者マーク、気付いてないよ。直進します、止まってお待ちください」 救急隊員「高齢者マーク気をつけます。(サイレンに)気付いていないかもしれないですね」

再三の呼びかけにもかかわらず、救急車の前方を走っていく乗用車。よく見ると車体には高齢者マークが付いていました。

“救急車両を取り巻く問題は、遅延以外にも。
不要不急の通報件数が増えるなど、救急車の出動回数の急増も深刻化しています。それに歯止めをかけるため、6月1日から、三重・松阪市では、搬送後に入院なしの場合は、1人当たり7700円を徴収するといった動きも出始めています。
(めざまし8 6月11日放送)

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