『スカイキャッスル』日本版キャストをオリジナルと比較 リメイクならではの新要素も?

韓国で2018~2019年に放送され、社会現象を巻き起こした大ヒットドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』(以下、『SKYキャッスル』)の日本版リメイク『スカイキャッスル』が、7月よりテレビ朝日で放送スタートする。秘密を抱えたセレブ妻たちの“壮絶マウントバトル”が描かれる本作の放送前に、オリジナル版がどのようなドラマだったのかを紹介し、日本版キャストをオリジナル版のキャラクターと比較してみたい。

『SKYキャッスル』は、富・名誉・権力を手にする者だけが暮らせる高級住宅街“SKYキャッスル”を舞台にした韓国ドラマ。そこで、整形外科医の夫と娘たちと暮らすハン・ソジン(ヨム・ジョンア)は、長女を何が何でもソウル医大に入学させたいと目論んでいた。

隣家のイ・ミョンジュ(キム・ジョンナン)の息子がソウル医大に合格したと聞き、ミョンジュから入試関連の資料を手に入れるために手を尽くすソジンは、ミョンジュが超敏腕な入試コーディネーター、キム・ジュヨン(キム・ソヒョン)の力を借りたと知る。

年に2人の生徒しか受け持たないというジュヨンとの契約を、ソジンだけではなく、SKYキャッスルの住人であるノ・スンヘ(ユン・セア)らも狙っているため、ソジンはなりふり構わずジュヨンに近づいていく。そんな中、ミョンジュが突然自殺し、空き家となった彼女の邸宅に、童話作家のイ・スイム(イ・テラン)が家族と引っ越してくる。

スイムは、子どもをのびのび育てたいという考え方の持ち主で、SKYキャッスルのセレブ妻たちとはタイプが正反対なため、周囲から反感を買うことに。ソジンをロールモデルとし、常にソジンの後ろについているチン・ジニ(オ・ナラ)も、スイムの存在を疎ましく思うようになる。そんなスイムは、初対面だと言うソジンに、どこかで会ったことがあると感じるが、実はソジンには大きな秘密があり……。

『SKYキャッスル』のSKYとは、韓国最難関の3つの大学、ソウル(S)、高麗(K)、延世(Y)の頭文字で、韓国の上流層には「SKYでなければ認めない」という風潮がある。そのため、子どもをSKYに入学させようと、親は躍起になり、壮絶な受験戦争が繰り広げられている。

そんな凄まじい教育熱が存在する韓国の世相を、アイロニカルかつリアルに描出した本作は、最初は視聴率1%台からスタートしたものの、口コミでその面白さが広まって、最終回ではなんと視聴率23.8%を記録。過剰な教育熱に警鐘を鳴らしつつ、スタイリッシュな映像で風刺し、思わず笑ってしまう中毒性のあるセリフ満載のブラックコメディ要素や、スリリングな演出、そしてキャストたちの名演技によって、大ヒット作へと上り詰めた。

筆者もハマった1人だが、日本版『スカイキャッスル』のキャスティングを知ったとき、役にピッタリだと思った人と、意外だった人がいて、かなり面白いキャスティングだと感じた。

まず、主人公・ソジンにあたる浅見紗英役の松下奈緒は、これまで彼女が演じてきた役や、普段の松下のイメージとはだいぶ違うので、正直驚いた。松下自身も紗英について、「時に手段を選ばないところはちょっと理解しがたくもあり……(笑)。でも、こういう“敵に回したくない”と思われるような役柄も初めてなので、すごく楽しいです」とコメントしており、本人とはかけ離れたキャラクターを演じることを楽しんでいるようだ(※)。

スンヘにあたる二階堂杏子役に比嘉愛未がキャスティングされたのも、少し意外に感じた。SKYキャッスルの中でも正統派セレブ妻のスンへよりも、どちらかと言うとスイム寄りなのではと思った。比嘉は杏子を「何もかも素で優雅なんですよ」と評し、演じるにあたって「一つ一つの所作に気を巡らせつつも、意識的にやっているように見えないよう心がけています。こういう役作りのアプローチは初めてなので、すごく刺激的で楽しいです」と語っている(※)。

真っ直ぐで、間違ったことを見過ごせない、優しい性格のスイムにあたる南沢泉を木村文乃が演じるのは、イメージに合うと思ったが、木村本人は「私自身は遠巻きに眺めているタイプの人間なので、泉のことを演じながら理解しようとしています。でも、だからこそ逆に演じがいのある役だなと思っています」と語っており(※)、逆に意外に感じた。これまでに木村が演じた役とスイムには、共通点が多い印象を受ける。

ジュヨンにあたる九条彩香を小雪が演じるのも、ジニにあたる夏目美咲を高橋メアリージュンが演じるのも、非常にピッタリだと思う。小雪は彩香を「“AI的な”役割のキャラクター」と評している(※)が、筆者の印象もその通りで、ジュヨンは感情を表に出さないタイプ。常に冷静な態度で母親たちに接し、生徒を洗脳するかのように導いていくジュヨン=彩香を、小雪はきっと巧みに演じるに違いない。

韓国版では美咲にあたるジニは、元芸能人で明るい愛嬌のある女性。高橋ならソジンの“子分”のような、ちょっと軽いキャラクターであるジニ=美咲を上手に表現してくれそうで、観るのが楽しみだ。高橋も「“キャンキャン!”という感じで、松下奈緒さん演じる紗英さんの“子分感”も出しています(笑)」とコメントしており(※)、楽しみながら演じている様子が伝わってくる。

今回の日本版リメイクで少し気になるのは、韓国版で描かれた高級な邸宅が並ぶ住宅街をどのように映し出すのかということ。日本のドラマでは、高層マンションを舞台に妻同士のバトルを描くイメージがあるので、日本版“SKYキャッスル”がどう登場し、そこでどんなドロドロドラマが展開するのか早く観てみたい。

また、ジュヨンは入試コーディネーターだが、この耳慣れない職業を日本版ではどのように描くのか。公式サイトでは、彩香は「受験コーディネーター」と紹介されているが、どちらにしても表には立たない“闇”的な役割だと思うので、日本版での取り上げ方が気になる。

毎回、続きが知りたくてたまらなくなり、観始めたら止まらなくなってしまった『SKYキャッスル』。リメイクされた『スカイキャッスル』には、日本版ならではの特色をどんなふうに取り入れてくるのだろうか。発表された主要キャラクターのキャスティングからは、期待が高まるばかりだ。

参考
※ https://realsound.jp/movie/2024/06/post-1687371.html
(文=清水久美子)

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