“脳トレ”川島隆太教授「スマホを長時間使う子供の学力は極端に低い」

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“脳トレ”ゲームの監修でも知られる脳科学の権威で、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が6月10日から13日まで、RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に出演している。10日の放送では「スマートフォンの利用が脳に与える影響」について「子供の脳の発達に悪影響を与える」と語った。

スマホを長時間使う子供の学力は極端に低い

田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):「脳トレ」やっていました。(ニンテンドー)DSで。

川島隆太東北大教授(以下、川島):ありがとうございます。

田畑:その川島教授の話を聞けるのは非常に楽しみです。川島さんはスマートフォンと脳機能の関連性について、本をたくさん出していますが、スマートフォンが脳に及ぼす影響ってどんなことがあるんですか。

川島:実はこの研究データは、宮城県仙台市に住んでいる子供たちの学力と生活習慣の関係を調べるという研究の中で偶然見つけたものです。最初は「テレビやゲームを長くする子たちは学力が低い」という仮説で解析をしていましたが、今の子供たちはスマートフォンもずいぶん使っているので、スマホやタブレットの使用時間と学力の関係を見てみました。

川島:そうしたところ、スマートフォンやタブレットを使う時間の長い子供たちの学力が極端に低いという発見をして、そこから研究をいろいろと展開していきました。端的に言うとスマートフォンが脳に及ぼす影響は、子供でいうと、脳の発達に悪さをします。脳の発達が少し遅れるという現象が起こるんです。大人ではまだ明確なデータは出ていないんですが、我々のデータから想像するに、多分大人も認知機能を下げる脳の働きを下げる力があるのではないかと考えています。

田畑:これは偶然、研究で見つけた結果だったんですね。

川島:はい、僕自身もスマホやタブレット、パソコンを使っているので、それらによって悪い影響が出るということは困ると思っていましたが、やってみたらびっくりするようなデータが出たので「これは放っておけない」と研究を深めていきました。

スマホを使うとどのような状況でも脳はリラックス

田畑:子供だけでなく大人もということですが、スマートフォンを使っているときの脳の状態はどういう状況なんですか。

川島:様々な場面で脳の働きを計測しました。その結果分かったのは、どのような場面であっても、スマートフォンを使っていると、脳の中でも前頭前野と呼ばれている、思考や注意能力、それから予測の力、我慢する力、こういう非常に大事な力がある部分が全然働いてくれないのです。それどころか、時々見るパターンとしては休んでしまう、ということも分かりました。

田畑:著書の中では「リラックスしているのと同じような状況」と書いてありました。

川島:はい、様々な脳活動を測ったデータと見比べてみると、前頭前野の働きが下がるというのは、非常にリラックスしているときに見られるんですね。ですから、私達の仮説では、スマホをいじるって、脳のリラクゼーションではないかと考えています。

言葉の意味をスマホ、辞書それぞれで調べると…

田畑:これは、例えばスマホで癒しの映像を見るとか、そういうときだったらまだ分かるんですが、何か調べ物をしているとか、どういう使い道でも同じような結果なんですか。

川島:はい、例えば難しい言葉の意味を調べたりとか、あとは文章を書いたりとか。それもチャットのような短いものではなく、メールぐらい長い文章を考えて書いてもらうということをしたんですけれども、全く働かなかったです。

田畑:言葉一つ調べるにも、辞書を引くというアナログなやり方と、スマートフォンでパパッと短時間で調べるのとでは、脳に残る具合も違うってことですか。

川島:はい、脳が働かないだけではありません。実験で大学生に「覚えろ」ということは言わずに「言葉の意味調べだけしてください」と伝え、いくつかの言葉の意味を調べてもらう際、辞書を使ったときと、スマホを使ったときとで比べてみたんです。すると、スマホを使ったときは、その後に「さっき調べた言葉の意味をもう一度思い出して」という質問をしたところ、スマホを使って調べた言葉の意味は一つも思い出せなかったんですね。要は記憶に残らないんです。一方、紙の辞書で引いた言葉の意味は、半数以上思い出すことができました。

“自分の時間を使われない”スマホの使い方

田畑:スマートフォンのどういうところが脳に良くないんですか。

川島:実は正確にはよくわかっていません。一番考えられるのは、スマートフォンを使っているとき、どうやら脳はうまく集中できていないということがポイントかなと思っています。

田畑:先生も当然スマートフォンは使いますよね。

川島:はい、使っています。

田畑:例えば使う頻度を減らすとか、何か工夫はしているんですか。

川島:僕は道具として使っています。例えば、電車の切符を予約したりとか、出張したときに、目的地に向かうルートを調べたりとか。あとは、学生との連絡に使っています。一方で、例えば時間が余ったからそれで動画を観たり、ゲームをしたりという使い方は一切してないです。

田畑:必要なときにだけ最小限で使うようにしているわけですね。

川島:イメージとしてはスマホを使っているんです。スマホに自分の時間を使われないように意識しています。

田畑:なるほど。依存、支配なんていう言葉もありますが、そうならないようにしているわけですね。あくまでコントロールしているのは自分だと。

川島:はい、その通りです。

田畑:ただこのスマートフォン、タブレットなども含めてですが、今、特にコロナ禍になって、GIGAスクール構想を早めたことによって、学校教育の場で子供たちに普及するスピードも早まりましたよね。明日以降、スマートフォンが学力にどう影響を与えるのか、そしてどう向き合っていけばいいのか、お話を伺っていきます。明日もよろしくお願いします。

川島:はい、よろしくお願いいたします。

田畑竜介 Grooooow Up

放送局:RKBラジオ

放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分

出演者:田畑竜介、橋本由紀

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