『HIGHSPEED Étoile』“人間とAI話”は必見の神回 春アニメ終盤触れたい作品が多すぎる!

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。6月3日から6月9日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

いや~マズいです。メイド剣士の剣戟が今期イチクラスのカッコよさだった『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』、本分のデート展開がやっぱり嬉しい『デート・ア・ライブV』、原作を活かしたアニオリが見事過ぎる『鬼滅の刃』柱稽古編、AパートとBパートですごい振れ幅だった『ダンジョン飯』、萌えアニメと化してきた『Unnamed Memory』、またもやオチに愕然とさせられた『となりの妖怪さん』、持ち味を存分に活かし続ける『この素晴らしい世界に祝福を!3』や『アイドルマスター シャイニーカラーズ』、最高のファンムービー『範馬刃牙VSケンガンアシュラ』、そして確執のあった父との和解……ではなく相互理解と再上京によって仁菜の成長が存分に感じられた『ガールズバンドクライ』と、この連載で触れたい作品が多すぎます。さすがクールの終盤。

というわけで、今回はそんな数多い神回から厳選したホンモノの神回を紹介します。

●やっぱり嬉しい! 人間とAIの心の交流『HIGHSPEED Étoile』第10話

最高時速500kmオーバーの次世代レースに挑む少女の物語『HIGHSPEED Étoile』。その主人公である元ゲーマーのビギナードライバー・輪堂凛と、彼女のドライビングを支えるAIのamiの関係が第10話では描かれました。

ここまで才能の片鱗を時折見せながらも成績が振るわなかった凛ですが、今回から始まった最終戦の予選でついに絶対王者のキングもその力を認めるほどに……というところでクラッシュ! ただし予選自体は操縦を引き継いだamiによる自動運転でトップ通過を果たすことに。

凛はドライバーの自分は不要だと落ち込みシミュレーターに没入しますが、そこに乱入してきたamiとのレースや会話を通じてあることを知ります。曰く「AIは人間の生命を守るよう設計されており、レースよりドライバーの安全を優先する」「人間は気分で結果が変わるが、AIはつねに同じ結果になる」「だけど私はもっと早く走りたい」ということで、amiもキングに迫るポテンシャルを持つ不確定要素の凛を学習対象として必要としていたのでした。こうして絆を強めた2人は最終戦に臨みます。

『翠星のガルガンティア』のチェインバーの「くたばれブリキ野郎」なんかも熱かったですが、こちらはロボット工学三原則も絡めたAIと人間の話を上手くレースものに落とし込んだなあと感心。脚本は『ガールズ&パンツァー』や『ハイスクール・フリート』などで知られる鈴木貴昭さんでしたが、いい“決戦前の1話”でした。序盤こそ賛否両論ありましたが、第5話辺りからグンと面白くなってきた本作。今期レースの終盤に向けてしっかりトップギアに入れてきた感があります。

●『ヴァンパイア男子寮』第10話の攻めっぷりに驚愕

天涯孤独な少女・山本美人(みと)が、血を与えることを条件に吸血鬼の早乙女ルカと男子寮で同居するという本作。男子寮で暮らすので、女であることを隠すため男装しながら生活していた美人ですが、ルカを運命の相手だと認めたタイミングで本当に男になってしまった!……という驚愕の展開で終わったのが前回でした。

そして迎えた第10話では愉快な文化祭を経てキャンプファイヤーでの美人とルカのキスから始まり、寮生の提案によって男女7人組でハイキング合コンへ。そこに美人そっくりの美子(みこ)という女性が現れ、ルカといい雰囲気に。その後、吊り橋上で美人と美子が対話していると吊り橋が崩れ落ち、ルカは「紐1本を握って助かっている美人と美子、どちらを救うか」という状況で美子の手を取り、美人は失意のなか川へ……というドキドキの展開続き。それらメインサイドと並行してサブキャラクターの恋愛もしっかり進め、とんでもない密度で恋愛劇を楽しませてくれました。

毎回、「そりゃ無理があるだろ!」とか性自認とかいろいろと考えさせられつつも、少女マンガらしいキラキラな演出もあってとにかく楽しい『ヴァンパイア男子寮』。“『なかよし』創刊70周年記念作品”という触れ込みですが、今ドキ少女マンガの攻めっぷりに驚愕させられっぱなしです。

(文=はるのおと)

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