【50歳代の壁】役職定年とは?平均年収や「部長・課長」など役職ごとの年収を知る

役職定年を廃止する企業も続々と…一覧表で見る「部長級・課長級・係長級」の賃金平均

役職定年は、企業が定める年齢に達した人が役職を退く制度です。

若手の意欲を高めるために設けている制度ですが、一方で40歳代や50歳代のモチベーションを奪う制度ともいえるでしょう。

そのため、最近では役職定年を廃止する企業も続々と出始めました。

今回は、役職定年をとりまく実態について解説します。

記事の後半では、役職定年の前後で年収がどれほど変わるのか解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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役職定年の実態

民間シンクタンクであるパーソル総合研究所は、2022年12月22日に「管理職の移動配置に関する実態調査」を公表しました。

その結果、各業界大手企業34社で役職定年制度をしいている企業が57%でした。

約6割の企業において、役職定年制があるようです。

そのうち、役職定年制度を維持する企業は、全体の44%となりました。

廃止予定としている企業が13%で、役職定年の廃止をする予定の企業もあります。

【写真1枚目/全3枚】役職定年制度を維持する企業。次の写真で部長・課長など「中間管理職」の賃金平均を見る
  • 役職定年制度あり:57%
  • 役職定年制度なし:44%

役職定年となる年齢のボリュームゾーンは、部長と課長ともに「55歳から57歳」となっています。

全体の69%が「55歳から57歳」を、役職定年年齢として設定していました。

とはいえ、役職定年は各企業で柔軟に運用されている結果となっています。

役職定年となる年齢に到達しても、役職定年を延長しているケースもみられました。

実際に、役職定年を延長している企業の割合は、全体の69%となっています。

では、役職定年を見直した企業や、見直しの背景について確認しましょう。

役職定年を廃止した企業

実際に役職定年を廃止した主な企業は、以下の通りです。

  • 大和ハウス工業株式会社:2022年4月1日に一律廃止
  • 山口フィナンシャルグループ:2025年3期に役職定年制度の一律見直し予定
  • ダイキン工業株式会社:56歳としていた役職定年の廃止
  • NEC:2021年度に管理職の役職定年を廃止

では、役職定年の廃止や見直しをする背景について確認しましょう。

役職定年の見直しをする背景

役職定年を廃止する背景としては、40歳代から50歳代のいわゆる「シニア層」のモチベーション向上が狙いです。

役職定年制度によって役職を退くと、その後の収入に影響が生じます。

収入の低下が、シニア層の働く意欲を下げる要因となっていました。

そのため、役職定年を廃止する傾向となっています。

では、実際に役職ごとの賃金がいくらなのか、確認してみましょう。

役職別にみた賃金はいくら?

厚生労働省は、2024年3月27日に「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」を公表しました。

役職別にみた賃金がいくらとなっているか、それぞれ確認しましょう。

係長職

係長職の賃金は、37万800円でした。

一般職の賃金と比較すると、1.27倍の結果となっています。

係長職となっている人の年齢は45.4歳で、勤続年数は17.6年でした。

課長職

課長職の賃金は、49万800円でした。

一般職の賃金と比較すると、1.68倍の結果となっています。

課長職となっている人の年齢は49.2歳で、勤続年数は20.9年でした。

部長職

部長職の賃金は、59万6000円でした。

一般職の賃金と比較すると、2.04倍の結果となっています。

部長職となっている人の年齢は52.8歳で、勤続年数は22.5年でした。

部長級・課長級・係長級の賃金

また男女別に比較すると、女性に比べて、男性の賃金が高い結果となりました。

では、もし定年退職となった場合、役職を退く前後で収入がどれほど変わるのか確認しましょう。

役職定年の前後で収入はどう変わる?

役職定年の年齢を55歳とした場合、60歳までの収入差がどれほどあるのか確認しましょう。

まず、役職定年を導入していない企業の場合、55歳から60歳までの収入は以下の通りです。

  • 係長職:37万800円×12ヵ月×5年=2224万8000円
  • 課長職:49万800円×12ヵ月×5年=2944万8000円
  • 部長職:59万6000円×12ヵ月×5年=3576万円

次に、57歳から役職定年を導入している場合、55歳から60歳までの収入の合計額を計算しましょう。

55歳から56歳は、役職者なので収入は以下の通りです。

  • 係長職:37万800円×12ヵ月×2年=889万9200円
  • 課長職:49万800円×12ヵ月×2年=1177万9200円
  • 部長職:59万6000円×12ヵ月×2年=1430万4000円

57歳から60歳は、すべての役職者が一般職となるため、収入は以下の計算式となります。

  • 29万1100円×12ヵ月×3年=1047万9600円

それぞれの合計収入と役職定年のない場合の収入差は、以下の通りになりました。

合計収入と役職定年のない場合の収入差

【役職:収入の合計・役職定年がない場合との収入差】

  • 係長職:1937万8800円・286万9200円
  • 課長職:2225万8800円・718万9200円
  • 部長職:2478万3600円・1097万6400円

あくまでも厚生労働省の資料にある一般職との賃金差なので、実際は企業ごとに異なります。

いずれにしても年収が下がると、働くモチベーションが失われる人は多くなるでしょう。

役職定年が今後どうなるか

役職定年のあり方は、時代や企業の事情によって異なります。

今後、制度の廃止がすすんでいくのか、引き続き注目していきましょう。

参考資料

  • 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」
  • パーソル総合研究所「管理職の移動配置に関する実態調査」
  • 大和ハウス工業株式会社「60歳一律役職定年の廃止によるシニア社員の活躍推進 副業を中心とした「越境キャリア支援制度」」
  • 山口フィナンシャルグループ「個人投資家さま向け会社説明会」
  • ダイキン工業株式会社「65歳までの定年延長および人事・処遇制度の見直しを実施」
  • NEC「役員の任期に関する制度改定について」

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