大学医学部、研究医養成の効果検証…報告書を公開

医師の大学院進学や博士号取得の魅力を高めるために、効果的だと考えられる方策

文部科学省は2024年6月7日、「大学医学部における研究医養成の効果検証のための調査研究」報告書をWebサイトに掲載した。研究医枠の追跡調査、医学部を置く国公私立大学に対する調査の結果から、研究医養成の実態や課題などをまとめている。

報告書は、文部科学省の大学改革推進委託費による委託事業として、シード・プランニングが実施した2025年度(令和5年度)先導的大学改革推進委託事業「大学医学部における研究医養成の効果検証のための調査研究」の成果を取りまとめたもの。

2010年度(平成22年度)以降に研究医枠を設置している、もしくは設置していた全21大学を通して、プログラムの受講生および修了生に行った「研究医枠の追跡調査」によると、医師の大学院進学や博士号取得の魅力を高めるために効果的だと考えられる方策は、「生活費の支援」61.4%が最多。「臨床研修や専門研修との並行履修」54.4%、「優れた業績に対する表彰」52.6%、「卒業後の常勤ポストの確保」42.1%と続いた。

医師がより一層研究に取り組むために必要だと考えられる取組みは、「研究時間・研究日等の設定」64.9%、「ライフイベントに応じてキャリアが停止しないような仕組み」47.4%、「ワークライフバランスの確保」「研究成果に見合った承認制度」45.6%の順に多かった。

一方、医学部を置く国公私立大学81校のうち、研究医を目指す特別なコースを実施している大学は48校あり、全部で63コースが実施されていた。研究医養成のさらなる推進(研究医の増加)にあたって特に効果的と考えられる取組みは、「学部・大学院で一貫した取組」「研究活動の支援」45.7%、「奨学金の設定」44.4%が上位に並んだ。

研究者養成のための臨時的な入学定員増の対象が拡大した場合、増員を「希望する」という大学は40%、「希望しない」という大学は60%だった。

まとめによると、研究医となった修了生の人数が多かった大学では、「研究医養成コースに進みやすいプログラムの実施」「奨学金制度」「海外旅費支援」「関連する常勤ポストの設定」「出産・育児復帰者支援(経費支援)」「研究補助者・支援者の配備」を実施していた。

報告書では「研究に復帰しやすい仕組みと臨床と研究を平行して続けることができる環境の整備を進めるとともに、修了生の追跡調査等を通じ、これらの施策の効果を検証していくことが必要と考えられる」などとまとめている。

報告書には、設問ごと大学別の回答なども掲載しており、文部科学省Webサイトから確認できる。

奥山直美

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