【独自】廿日市市「大規模開発」の余波 大量の土砂が港に流入し堆積 船主は「元の状態に戻して」 広島

大規模な開発工事の余波が思わぬところに及んでいます。週末の雨で判明したある現象を独自でツイセキしました。

【五十川記者】
「たくさんの舟が係留されているんですが、この水面の色、茶色く濁っていまして、まるで土のグラウンドの水たまりのようになっています。陸地のほうからポコポコと水が湧き出ていまして、濁った水が港の方向に流れ出ています」

廿日市市の中心部にほど近い船着き場。
本降りとなった今月9日、土砂混じりの茶色い水が絶え間なく流れ込んでいました。

【五十川記者】
「水面の下が見えるような感じだったんですが、今はですね、表面、水面の上のほうまで土に覆われていまして、まったく下が見えない水中が見えない状況になっています」

数時間後、干潮の時刻を迎えると…全容が見えてきました。

【五十川記者】
「船がですね、土の上に上がってしまっています」

流れ出る水門近くでは土砂が堆積し、船が出港できない状態に…「大潮」の時期と重なると、特に深刻です。

【廿日市小型船主組合・塚本 雅彦 副組合長】
「工事が始まってから、しばらくして、どんどんどんどん茶色い水が増えてきてですね。最近、特に引き潮のときに干上がってくるのが、目に見えて分かってくるようになったんですよ。今はこっち側が主なんですけど、そのうち、今、ここにも堆積しているのが、見えますけど、ここから奥にかけて、どんどん浅くなっていくのが見えていますから」

船着き場は、元々長い年月をかけて、周辺の土砂やヘドロが溜まっていましたが、明らかな変化が起きたのは、およそ1キロ離れた山間の伐採工事が拡大してからだといいます。

【五十川記者】
「工事現場は国道の西広島バイパスからほど近い場所にあります。実際に近くに来てみてですね、バイパスから見える以上に、このスケール感、これだけ大規模な2つ3つの山が切り崩されているという大規模な開発が行われていることに驚きます」

廿日市市が企画し、官民が連携して進めている観光交流施設と産業団地の建設。
2029年度の開業を目指す大規模工事で、「食」をテーマに有名シェフが監修する飲食店やホテルなどが出店する計画です。

敷地内には「濁水プラント」と呼ばれる汚れを取り除く設備を導入したほか、水の流れを監視カメラでチェックしているとしていますが、ひとたび、雨が降り続くと処理が追い付かない現状があります。

【五十川記者】
「現場のすぐ下にやってきました。雨脚がだんだんと強くなってきたということもありまして、画面の奥、見えますでしょうか。左と右からですね茶色く濁った水が滝のごとく勢いよく両方から流れ出ています」

【近くの住民は】
「(元々)雨が降ったら茶色くなることはあったのですが、ここまで茶色くなることはなかったかなと思います。(過去に)田んぼに直接泥水が入ってしまうからというので、下の人からも苦情というか、そういう話は聞いたことがあります」

TSSの取材に対し廿日市市の担当者は開発工事と土砂流入の関連性を認めた上で、今後、行政側と建設会社、船の所有者の三者で話し合いの場を持ちたいとしています。

【廿日市市下水道建設課・森島 直樹 課長】
「濁った水がどこからかというのは職員が上流まで調査して、ここからだというのはそのときに確認しました。より船の出し入れが難しくなっていることだと思いますので、早期に協議をして、対策をしていきたいと思います」

船着き場は、以前から大潮のときに土が露わになることもあったと言いますが、開発工事が本格化して以降、最大20センチ程度の土砂が上積みされたということです。
観光クルーズ船を運航する塚本 雅彦さんは今の状態が続けば、必要なときに出港できなくなると心配しています。

【廿日市小型船主組合・塚本 雅彦 副組合長】
「発展していくために必要な工事であるならば、それは全然反対でもないし、逆に言えば完成してにぎやかな廿日市になってほしいなという気持ちはあるんですよ。人間誰しも失敗しない生き物ではないですね。必ず失敗があるんですよ。ここは速やかに元の状態に戻していただけるようにしていただきたいですね」

<スタジオ>
開発による山肌からの土砂の流出がある点は廿日市市も認めているので、対策が急がれますが今後、雨のシーズンにもなるので周辺の方々、不安ですね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田 篤 准教授】(社会情報・メディア論が専門)
「これが、もし一過性のものであれば、港を浚渫(土砂を掘削)して、その結果、終わりになるんだけれども、どうも花崗岩帯で、まさ土が不安定な地盤を作っているんですが、それが豪雨で流されているっていうふうな感じですから、これから、もしかして増え続けるということなると大きな問題になってくると思います」

© テレビ新広島