災害公営住宅 徐々に増える空き室を地域のにぎわいに活用 宮城・山元町

震災後、宮城県では約1万6000戸の災害公営住宅が整備されましたが、徐々に空き室が増えてきています。宮城県山元町の空き室を活用する取り組みです。

山元町つばめの杜にあるなないろ保育園です。親に連れられ子どもたちが続々とやって来ます。2022年10月に開園し、0歳から2歳までの9人を預かっています。小規模できめ細かい保育が好評です。
「入ってみたらアットホームな感じでいいなと思いますね」「いいと思います。人数少ないので1人1人に寄り添ってくれる」

保育園がある山元町つばめの杜は、東日本大震災の集団移転事業で整備されました。地区には災害公営住宅346戸も建てられました。保育園として使われている建物も、元は災害公営住宅です。地区の保育園不足を解消しようと、空き室が活用されました。
橋元伸一山元町長「待機児童の対策がありまして、災害公営住宅に空きが出たところに民間で小規模保育をやってもいいという業者さんを町として誘致して」

災害公営住宅を保育園に

震災後、宮城県では約1万6000戸の災害公営住宅が整備され、被災者の生活再建に役立ってきました。しかし、住んでいた人が亡くなったり転居したりして現在は全体の5.8%に当たる900戸ほどが空き室となっています。被災して入居した人のうち65歳以上が45.2%を占めていて、今後も空き室は増える可能性があり活用が課題です。

なないろ保育園があるつばめの杜東区で自治会の役員を務める渡邊勲さんは、震災で自宅を失い保育園の近くの災害公営住宅で9年前から生活しています。この地域は町の中でも入居を希望する人が多かったと言います。
つばめの杜東区役員渡邊勇さん「当時の入居率はものすごかった、ここにみんな入ろうってことで。我々が一番悩んでいるのが、人数が減っていくこと」

空き室が点在

この地区でも既に空き室が点在しています。
つばめの杜東区役員渡邊勇さん「この辺空いているのかな」
この住宅には2023年まで高齢者が入居していましたが、子どもたちと同居するために退去しました。渡邊さんは寂しさや不安を感じると話します。
つばめの杜東区役員渡邊勇さん「人が出ていくとつらいよ、町を色々盛り上げようとしているところに何軒か欠けていくとさ。このままいったら何軒空くんだろうと心配もあるしさ」

おやつの時間の後になないろ保育園の子どもたちが向かうのは、日課のお散歩です。災害公営住宅が並ぶコースを1時間かけて回ります。
お年寄りが多く暮らすこの地区には、子どもたちの散歩を楽しみに待っている人たちがいます。
高齢女性「来る時間になると窓開けて、来る時間だなあなんてのぞいて見たり。やっぱり退屈なので1人だから。子どもたち1人1人手をつかんでよく来たなって言うとみんな喜んで、かわいくてかわいくてしょうがないのね」

子どもたちの話題を通じ、住民同士の会話も増えつながりも強くなったといいます。
なないろ保育園吉田直子園長「子どもたちがしばらく行ってなかったりすると、どうしたんだろうねとか心配してくださったり、反対に私たちも散歩で通ってカーテンが閉まっていると、おばあちゃん具合でも悪いのかなとか子どもたちとどうしたんだろうねとか、お互いに気配りができてくるところがあるのかな。生活の中の一部に加われているのかな、子どもたちの姿も」

地域のにぎわいづくり

山元町の災害公営住宅の空き室は、現在、490戸のうち約10%に当たる53戸です。町では、空き室を増やさないために古くなった町営住宅の入居者を災害公営住宅に転居させる取り組みを進めています。他にも様々な活用策を検討していきたいとしています。
橋元伸一山元町長「3LDKぐらいの大きめの公営住宅を活用して、障害者の方たちの施設になればなと考えています」

小笠原侑希記者
宮城県山元町のように災害公営住宅の空き室を活用する取り組みは他の自治体でも行われていて、空き状況などに応じ被災者以外の人を入居させるようになってきていて、既に入居者の約17%は被災していない人となっています。
保育園に活用する取り組みは他にもあります。宮城県石巻市では既にグループホームとしての活用が始まっていますし、宮城県気仙沼市では移住を考えている人の住まいとして貸し出し定住につながった例もあるということです。空き室を埋めるだけではなく有効活用できれば、地域ににぎわいを作ることもできると思います。

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