母親の“責任能力”を認定 名古屋地裁が懲役23年の判決 自宅で幼い娘3人を殺害した罪 愛知・一宮市

メ~テレ(名古屋テレビ)

2年前、愛知県一宮市の自宅で幼い3人の娘を殺害した罪に問われた母親に、名古屋地裁が懲役23年の判決を言い渡しました。

「主文、被告人を懲役23年に処する」(裁判長) 午後3時すぎ、名古屋地裁で開かれた裁判。傍聴人で満席の法廷にグレーの長袖Tシャツ姿で現れたのは無職の遠矢姫華被告(29)です。 遠矢被告は表情を変えずに、まっすぐ裁判長を見つめながら聞いていました。 遠矢被告は2022年2月、長女で当時5歳の姫茉梨ちゃん、次女で当時3歳の菜乃華ちゃん、三女で当時9カ月の咲桜ちゃんの首をコードのようなもので絞め、殺害したとして殺人罪に問われていました。 これまでの裁判で遠矢被告は起訴内容を認めたものの、弁護側は「当時は心神喪失で、責任能力も殺意もなかった」として無罪を主張。 一方の検察側は、「責任能力に影響する精神疾患はなく、殺意もあった」「子どもたちの意思を考えることなく、子どもたちとの無理心中を一方的に決意して犯行に及んだ意思決定には強い非難が妥当」などとして、懲役25年を求刑していました。

長女出産後、産後うつと診断されて

5月行われた被告人質問では、長女の姫茉梨ちゃんが生まれた後の2017年「産後うつ」と診断されていたことが明らかになりました。 「子どもがかわいいと思えなくなっていたことに関して悩んでいました」(遠矢被告) 事件当日には「最後に子どもの喜ぶ様子が見たかった」という理由から、ハンバーガー店で普段は買うことのなかったというおもちゃ付きのセットを購入し、長女と次女に食べさせた遠矢被告。 裁判員に「当時一番何に追い詰められていたか」聞かれると…。 「私が母親でいいんだろうか、このままでいいんだろうかと」(遠矢被告) そして11日、名古屋地裁は「相当に追い詰められて、抑うつ状態になっていた」とする一方、「最愛の母の手によって突如として将来を絶たれた娘3人の苦痛を思うと言葉にはできないものがある」と責任能力を認定し、懲役23年を言い渡しました。

事件の背景には孤独が…

自らも出産後に心身の異変を感じた経験があり、子育て中の母親の孤立を防ぐオンライン支援などに取り組む上条厚子さんも11日の裁判を傍聴しました。 「診断がつく手前のいわゆる育児がしんどいなと感じる、うつではないけど、しんどいと感じるグレーゾーンがあって、1回診断されたことがある人は、周りのサポートや配慮が必要」(NPO法人ママライフバランス 上条厚子代表) 上条さんは事件の背景に母親の「孤独」があったのではないかと話します。 「育児の味方、自分と一緒のチームになって、やれている。一人じゃないって母親自身が感覚を持てているか持てていないか、心理的な孤独じゃない状況を作り出すことが難しかったのではないか」(NPO法人ママライフバランス 上条厚子代表)

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