NHK、また撮影中に重要文化財を破損…過去にも「廊下陥没」「東大寺に釘打ち」で騒動

NHKは10日、番組収録中に国の重要文化財を破損させたとして謝罪した。NHKは昨年4月にも国の重要文化財に指定された寺の廊下を破損させるなどしており、たび重なる“やらかし”に批判が集中している。

NHKの10日の発表によると、5月24日にEテレの番組『芸能きわみ堂』のロケで香川県琴平町の「旧金毘羅大芝居」にて撮影をした際、撮影担当者が花道から客席に転落し、升席を仕切る木製の角材の一部が壊れたという。「旧金毘羅大芝居」は現存する日本最古の本格的な芝居小屋で、1970年に重要文化財に指定されており、「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の会場としても有名だ。

NHKは「貴重な文化財を破損したことを深くお詫びいたします。関係機関の指導に従い、適切に対応してまいります。改めて文化財の保護を徹底してまいります」と謝罪した。

故意に壊したわけでなく、一般公開や公演などにも影響がないということで、本来ならそれほど大きな騒動にはならないはずだったが、炎上騒動レベルの多くの批判が寄せられている。それというのも、NHKがロケで文化財を破損したのは初めてではないからだ。

昨年4月には、2023年度後期の朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の撮影で、国重要文化財の「百済寺」 (滋賀県東近江市)の本堂廊下で出演者10人がダンス練習シーンのリハーサルをしたところ、床板が長さ約5メートルにわたって陥没。床板を支える木材が折れたとみられ、床板約20枚が破損し、同ドラマを制作したNHK大阪放送局の局長が謝罪する事態になった。

百済寺の本堂は織田信長の焼き打ちで焼失後、江戸時代初期の1650年に再建されており、ネット上では「歴史ある重要文化財の廊下で大勢が踊るシーンを撮影しようとする感覚がおかしい」「文化財保護を第一に考えていれば、そんなところでダンスを撮影しようとは思わない」といった指摘も上がった。

本来ならこの時に文化財保護を徹底するべきだったが、教訓を生かせず、再び重要文化財での撮影中にアクシデントとはいえ破損事故を起こしてしまったことで、非難の声が殺到したようだ。

これ以外にも、2022年にはNHKが発注した高野山にあるテレビ中継放送所の更新工事で約200メートルにわたって土のうが敷き詰められ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産のひとつである国史跡「高野参詣道 女人道」の階段や路肩の一部が破損。国史跡での土のう設置は、文化財保護法で禁じられている現状変更にあたるが、NHK側は許可を得ていなかった。

さらに2002年末には、恒例の年越し番組『ゆく年くる年』の中継用の照明器具を設置するため、NHKの委託業者が東大寺の鐘楼(国宝)の梁に釘9本を打ち込んだことが発覚。注意を受けて釘はすぐに抜き取られたが、東大寺側は「行きすぎた行動で非常に残念。認識が甘いと言わざるを得ない」と異例の厳しいコメントを発表した。

こうした背景もあり、ネット上では「こんな失敗が繰り返されるなんて、NHKは文化財に対する敬意を持ち合わせていないのでは」「撮影担当者に花道から転落するような撮影をさせていたことも問題」「自動車メーカーの認証不正問題をとやかく言えるような立場じゃないね」などと厳しいコメントが飛び交っている。

一部では「テレビマンの特権意識で文化財への配慮が二の次になっているのではないか」との意見もあるが、近年のNHKでは局員による不祥事が多発していることもあり、今後もし同じようなことが繰り返されれば国民からの信頼を大きく失ってしまいそうだ。

© 株式会社サイゾー