柴咲コウ「これまでのキャリアの中で最高傑作かも」 黒沢清監督作で全編フランス語に挑戦!

できるかわからないけどやってみるのは、自分らしい。

「フランス語を話せないのになぜ? と思いつつ、いつか黒沢監督とご一緒したかったというのと、以前からフランスにどこか惹かれるものがあって。撮影期間中、2か月間フランスに住めるというのも貴重な機会だったから逃したくないと思ったし、私は、自分の人生において興味が赴くままにいろいろ挑戦したいという気持ちが強いんです。できるかわからないけどやってみるのは自分らしいと思ってお引き受けしました」

長年フランスで心療内科医をしている小夜子を演じるには、語学力はもちろんのこと、生活感や日本人離れした雰囲気を纏わなければ成立しないはずだが、見事に演じている。もちろん、並々ならぬ努力があった。

「ただフランス語でセリフを覚えるのではなく、相手の言葉を理解して会話にしなければいけないのは大変でした。しかも早口とかボソボソとか、いろんな喋り方の役者さんがいましたから。まずはフランス語を読めるようにしたのですが、母音ありきの日本語とは違い“cv”とか“vr”で終わる言葉の発音は本当に難しくて。毎日念仏のように唱えながら体に覚え込ませていきました。監督が重視した小夜子のイメージは、新しい感じではなく使い込んでくたっとしているような、その辺にいそうなフランス在住の女性。私もそれに賛成で、ヘアメイクはもちろん、服や立ち居振る舞いもきらびやかとは無縁な感じにして。ちなみに滞在中は自炊を続けていました。凝った料理ではなく炒め物や和食中心で、白玉でぜんざいを作っておやつにしたりも(笑)。マルシェで新鮮な野菜を買うのも楽しかったです」

実際にそこに“住む”ことは役作りにも役立ったよう。昼間は心療内科医でありながら、その裏では娘を殺された父、アルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)の、犯人への復讐に協力する小夜子。

「何を考えているのかわからないように見えると面白いのかなって。表情をそぎ落とし、笑顔も険しい顔もせず、それでも彼女のことを窺いたくなってしまうような雰囲気を出すように意識しました」

個々のあり方を尊重するフランス人スタッフや現地の文化に触れ「仕事で意見が言いやすいのは、生きやすいし楽だと思った。このまま住みたいと思ったぐらい」と柴咲さん。

「わかりやすい復讐劇で、パキッと晴れないような曇天のグレーが混ざった色合いの作品。ヌルヌルと蠢いていく、黒沢作品特有の奇妙さを楽しんでいただきたいです」

『蛇の道』 娘を殺されたアルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)は、心療内科医の新島小夜子(柴咲コウ)と共に犯人を突き止め復讐を企てる。とある財団の関係者らを拉致し、真相は次第に明らかに…。6月14日より公開。
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しばさき・こう 8月5日生まれ、東京都出身。『Dr.コトー診療所』シリーズではヒロインを務め、ドラマ『35歳の少女』、映画『ホリック xxxHOLiC』など数々の主演作を持つ。また、歌手としても活躍。

ドレス¥52,800(URUH contact@uruh.jp) 左手のリング¥275,000(oeau/Harumi Showroom TEL:03・6433・5395) 右手のリング¥41,800 ピアス¥30,800(共にMAYU/MAYU SHOWROOM kohcoon@mayuokamatsu.com)

※『anan』2024年6月12号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・柴田 圭(tsujimanagement) ヘア&メイク・渡辺真由美(GON.) インタビュー、文・若山あや

(by anan編集部)

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