2024年のJ1リーグが、折り返し地点にたどり着こうとしている。20チームで臨んだ前半戦は、良い意味でも悪い意味でもサプライズがあった。また、後半戦の展望につながる新たな材料も見つかった。前半戦をいかに消化し、後半戦に昇華させていくのか、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が徹底的に語り合った。
■復調の浦和「ゴール前の三角形」にもろさ
――浦和レッズはいかがですか。
大住「良くなってきたよ」
後藤「そうなの?」
大住「何が良いかというと、中島翔哉が素晴らしいんだよ。おそらく2018年の秋以来の絶好調ぶりだよ。中断前のヴィッセル神戸戦では点を取ったし、これからもっと話題になっていくと思う。今の調子だったら、日本代表に入れていいくらいだと思っている。浦和がチームとしてパッとしなかったのは、ペア・マティアス・ヘグモ監督が引っ提げてきた4-3-3のシステムに当てはめられた選手たちが、こう動かないといけない、ここにいないといけないと言われたかのようにギスギスして、動きが活発じゃなかったから」
――中島が変化を起こしたのでしょうか。
大住「左ウィングで使われるようになると、中島はそんなことお構いなし、とでもいうように自由に動いて、自由にドリブルやパスを繰り出すんだよね。そうすると周りの選手も、中島が内に入れば自分は外に出ていき、中島が下がってきたら上がっていくというふうに、すごく動きが活発になってきたんだよね。ただ、守備の面で去年は安定感があった西川周作、マリウス・ホイブラーテン、アレクサンダー・ショルツによるゴール前の三角形にもろさが出ている。そのバランスが取れてくれば、優勝争いまでは難しいかもしれないけど、これから十分、上がっていくと思う」
■大きく輝いていた柏の右SB「第2のヒロキ」
後藤「序盤の浦和を見たら、本当に動きがなくて、同じパターンのプレーしかしていなかった。それがどうやって変化が出たのかと思ったら、中島が鍵だったのか。中島は守備もやっているの?」
大住「そうなんだよ。しっかりやっているよ」
後藤「へえ~。じゃあ、進歩したんだね」
大住「すごく良くなった。神戸戦では、前半の浦和は全然ダメだったんだけど、後半から中島とサミュエル・グスタフソンが入ったら、試合の流れがまったく変わって、神戸はタジタジだった。中島を見るのは面白いよ」
――他に目を引いた個人はいますか。
大住「柏レイソルの右サイドバック、関根大輝だよね。過酷なU-23アジアカップから帰ってきて、2試合くらいはダメだったらしいんだけど、川崎フロンターレ戦を見たら本当に大きく輝いていた。チームが負けた試合でも、非常に高いレベルのプレーをしていたよ。攻撃的なセンスがあって、技術も高く、スピードもあり、背も高い。名前が同じだけに、“第2のヒロキ”だよね。酒井宏樹のような、国際的な右サイドバックになりそう」
後藤「右サイドバックには去年、毎熊晟矢が出てきて、今年は濃野公人も関根も出てきた。彼らのうち、誰かが左サイドでもプレーできないかな」
■タレントぞろいU-23代表「Jリーグはつらいよ」
大住「そうか、左もヒロキだね。でも、伊藤洋輝とは全然タイプが違うよ。攻撃的で、見ていてすごく面白い。パリ・オリンピックが終わったら、フル代表に入ってくるんじゃないかな」
後藤「そうだね。少なくとも一度は使うべきだよ。しかし、関根だけじゃなくて、U-23アジアカップに出た選手はみな、あの厳しい戦いを潜り抜けることで成長したよね」
大住「松木玖生も良くなったでしょ?」
後藤「松木はもともと良いよ。レベルがひとつ抜けているよ。同じFC東京の荒木遼太郎もすごいし」
大住「FC町田ゼルビアの平河悠も良い」
後藤「U-23代表には、タレントがいっぱいいるよね。あとは最近、高井幸大がアジアカップで自信をつけたのか、安心して見ていられるようになった。確かに前からすごいCBだったけど、以前はイージーミスをして失点につながる場面もあった。最近はそういうミスがなくなったし、名古屋グランパス戦なんて完全に空中戦を制圧していた。あの年齢であそこまでやれれば、言うことはないなという感じ。川崎フロンターレを再建するには、ああいう若い選手を使い込んでいったほうがいい。ただ、そうなるとすぐにヨーロッパに行っちゃうけどね」
大住「そこが今のJリーグのつらいところだよね。3年後のチームを見据えて、なんて言ってられない。3年後のために使っていたら、2年後にはいなくなっちゃうんだから」