「ダブルリミテッド」とは…日本語・母国語ともに満足に話せない子どもたちの問題を考える

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、“ダブルリミテッド”について取り上げました。

◆ダブルリミテッドとは?

昨今、海外ルーツの子どもたちが全国的に増加しています。文部科学省の「外国人の子供の就学状況等調査」を見ても、年々右肩上がりに増えていますが、その一方で8,183人が不就学となっているそうです。

その背景には経済的な事情などがさまざまな理由がありますが、そこで問題視されているのが言語の問題"ダブルリミテッド”。これは子どもが正当な教育を受ける機会を逸し、日本語・母国語ともに満足に話せない状態のことで、最終的には日本での授業についていけず不登校になってしまうなど、アイデンティティクライシスに陥ってしまうこともあるとか。

このダブルリミテッドについて、関西大学特任教授の深澤真紀さんは大事なポイントが2つあると言います。ひとつは"日本語”で、とりわけ"優しい日本語”の重要性。例えば「立入禁止」とある場合、通常ふりがなは「たちいりきんし」と書きますが、よりわかりやすく「ここにはいらないでください」と書くのが優しい日本語です。そして、もうひとつは"コミュニティ”。自身のルーツに即したコミュニティの必要性を訴えます。

◆教育機会の公平性を目指し若者たちが奮闘

ダブルリミテッドの存在が懸念されるなか、改善しようと若い世代が奮闘しています。それが2021年に設立された"教育の機会の公平性”を目指すNPO法人「BORDER FREE」。彼らは海外ルーツの子どもたちだけでなく、あらゆる子どもたちが学びの機会を得られるべきと、放課後などに安価で勉強できる環境を提供しており、この4月にも新たに「わせだ教室」を開校しています。

「BORDER FREE」では高校生から大学生まで幅広く活動しており、今回番組ではそのメンバー、山部匠さん(早稲田大学1年)と野嶋優那さん(早稲田大学1年)、内池美緒さん(ID学園高等学校1年)の3人に取材を敢行。

まず活動内容について聞いてみると、「(勉強に)ついていけない子を作らないということです。学校での勉強が苦手だったり、学校という居場所が合わない子に対して、みんながついていけるような授業を作りたい」と山部さん。

また、野嶋さんは「海外ルーツの子だと勉強を教える前に言葉の壁があって、うまく意思疎通ができなかったりする」と問題点を挙げ、内池さんは「小学校の頃に交換留学生などで海外から来た子とか、少し日本語がしゃべれるけど書くのは苦手な子もいたり、(外国人の子どもが)増えてきている実感はあります」と語ります。

そして、最後に山部さんは「海外にルーツがある方ですと、学校の授業のペースが速かったりして、どうしても勉強から遠ざかってしまう子たちがいると思うので、誰でも勉強しに来られる場所を作りたいと考えています」と展望を語り、「僕も高校で海外、ハーフの子がいる環境で育ち、彼らは英語ができるっていう強みがあるので、そういうそれぞれの強みを活かしていけたら」と話していました。

この山部さんの言葉に、キャスターの堀潤は「(外国人の子どもに)日本語を教えてあげるだけでなく、(彼らが)得意なことを教えてもらう、相互にフェアな関係を教室に持ち込みたいというのは素晴らしい」と称賛。

食文化研究家の長内あや愛さんも「年代、年齢に限らず相互に教え合える関係が必要」と賛同します。

一方、脳科学者で理学博士の茂木健一郎さんは「ダブルリミテッドというのはダブルポテンシャル」と言います。そして、「これを日本の社会は活かさないといけない。逆に我々が学ぶことがたくさんある」とも。「相手の国の文化とかそういうことだけじゃなく、ダブルリミテッドの状況に置かれている人の見える世界、それは今後の日本にすごく大事だと思うので、逆に我々に教えてほしい」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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