父の遺言で母が「全財産1億5,000万円」を相続…母の死後、子どもに待ち受ける「想像を絶する事態」とは【税理士監修】

一次相続と二次相続では、相続税の控除額が異なることをご存じですか? 父と母のあいだでの相続にはなんの問題もなくても、子の代への相続の際に多額の相続税がかかってしまうケースも……。そのため、親の遺産の総額に応じて相続は計画的に行う必要があります。本稿では、古尾谷裕昭氏監修の『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋し、二次相続を見据えた一次相続の備え方について解説します。

父の遺言で母が全財産を相続…二次相続で問題になる?

Q、42歳女性・主婦の相談

父の遺言で母に全財産を遺すとありました。私も妹もそれでよいと思っていましたが、先日、「二次相続は相続税が高くなる」と忠告してくれた人があり、心配になってきました。

二次相続の負担はどれぐらいになるものなのでしょうか。また、遺言書がある場合は最優先されるそうですが、遺言の通りにしなくてもよいのでしょうか。

A、税理士の回答

親から子への相続は2回あります。まず両親の片方が亡くなった時の相続。次に、もう一方が亡くなった時の相続です。それぞれ一次相続、二次相続といいます。

一次相続では配偶者への税制優遇がかなり大きく、1億6,000万円以下、または法定相続分以下ならば相続税はかかりません。また、父が住んでいた自宅敷地の評価額も大きく減額されます。

しかし二次相続ではこうした措置が受けられず、基礎控除のみとなる可能性があります。

まず、お母様が全額相続した場合、二次相続でどの程度の相続税を支払うことになるか、簡単にシミュレーションしてみましょう。

仮にお母様が配偶者控除以内である1億5,000万円を相続したとして、二次相続でそのままの額をご姉妹が引き継いだ場合、1,840万円の相続税がかかる計算になります。遺産の総額にもよりますが、やはり二次相続を踏まえて、一次相続であなたと妹さんにも、少し財産を分割したほうがよいかと思われます。

詳しいシミュレーションは相続を専門とする税理士に依頼することをおすすめします。さまざまな法制度を熟知しており、もっとも有利な分割方法をアドバイスしてくれるはずです。

また相続税の計算や申告は個人でも行えるものですが、準備する書類の量も多く、手続きも煩雑です。専門家に任せればこうした負担が軽減でき、申告ミスが生じる可能性も低くなるので安心です。

遺言書通りにしなくてもよいかというご質問ですが、結論としては問題ありません。相続人全員の合意があるという前提で、遺言とはちがう方法での遺産分割も認められています。

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