トップ営業スタッフは仕事が多く忙しい。ほかの営業スタッフの2倍契約を獲得すれば、当然仕事量も2倍に増えていく。タイムパフォーマンスを意識しながら朝から晩まで働き、多くの案件をこなさなくてはならない──。そんなトップ営業スタッフだが、「これって仕事と関係ないんじゃない?」と疑問に思う時間も過ごしている。時間に追われているはずのトップ営業スタッフが仕事をサボっているように見える瞬間があるのだ。さらには1日仕事をしない“チートデイ”を用意していることも。それはなぜだろうか? 今回はトップ営業スタッフがあえてそうしている理由を紹介させてほしい。
営業の1日を“見える化”するとわかること
私は営業のノウハウの研修のほかに“時間術”についての研修も行っている。時間術の研修ではワークで“代表的な1日”について書いてもらう。普段の“出社して帰るまでの行動”をこと細かに書いてもらうのだ。
このワークでは自分の行動を客観的にチェックすることが可能になる。時間について“見える化”することでいろいろな改善点が見つかる。ぜひ一度やっていただきたい。
書いてもらった1日の行動を見るとその営業スタッフの成績がわかる。苦戦している営業スタッフは“結果につながらない行動”の時間の割合が多い。
- 面談数が少なく、移動時間が長い
- 資料の作成時間が長い
- スタッフとの打ち合わせが長い
- 調べごとの時間が長い
などなど。一見すると仕事をしているようだが、結果にはつながらない。
今まで多くの営業スタッフを見てきたが“長くデスクワークをしている人は成績が悪い”といった傾向がある。これを少しずつ修正することで結果は変わってくる。
研修先の会社のトップ営業スタッフの代表的な1日も見せてもらうと、やはり結果につながる行動が占める割合が多い。
- 段取りがしっかりしている
- 打ち合わせや資料作成の時間が短い
- 空き時間にお客様に役立つ情報を送っている
- アポイントが多く、有効面談が多い
などなど。ひと目で「これなら結果が出るだろうな」と思う。
トップ営業スタッフは徹底的に無駄を省き、そつなく仕事を進めている。といったイメージがある。たしかにそのとおりだが、1日の行動の中に「こんなことに時間を使っているの?」と首をかしげたくなるような行動が存在している。
トップ営業の“サボり”方とは?
もちろん効率良く仕事をこなしているが、そのうえで“仕事とは関係ない時間”も過ごしているのだ。この時間でリフレッシュしたり、メンタルのバンランスをとったりしている。長く活躍しているトップ営業スタッフは必ずやっているものだ。
研修先のAさんのこと。Aさんは住宅会社のトップ営業スタッフ。以前Aさんは商談、契約、打ち合わせ、立ち合い、引き渡し、アフター……とすべての業務に関わっていた。人に任せることができず自分でやらないと気が済まないタイプ、ということもあり、Aさんは“朝から晩まで無駄なく働く”ことを続けていた。
これを続けているうちに、食事がおろそかになり睡眠時間も削られる。だんだんと自律神経系がおかしくなっていった。体調を崩し、ついにAさんは働けなくなってしまった。今は回復しているが、しばらく会社も休んだという。
復帰後、Aさんは働き方を変える。まずは“任せられることは人に任せるようになった”ということ。何でも自分が手を出していたのではいくら時間があっても足りなくなる。あとでチェックすれば良いことは他部署に任せることにした。
そしていちばんの改善策はスケジュールの中に“サボり時間”を入れるようになったということ。たとえば、次のようなことだ。
- 商談前の10分間、仲間と冗談を言い合う
- 午後の空いている時間にカフェに入って1時間ゆっくりする
- 仕事の合間に応援しているスポーツチームの記事を読む
意識的に息抜きの時間をとっている。
ときには“1日中サボる日”も設定する。ダイエットでも“チートデイ”というオフの日をつくり、効率を上げていくだろう。Aさんは“営業のチートデイ”をとるようになった。それからは体も精神状態も安定。サボる時間をとったことで以前よりもっと売れるようになった。
理由を聞くと「集中力が長続きするようになったから」と言っていた。以前のAさんは1日を通して緊張状態だった。それを、定期的にサボってリリースする。仕事のメリハリがつけられるようになった。
Aさんはサボることに関して「悪いことをしていると思うのではなく、思いっきりサボることがポイント」と話していた。後ろめたさを感じながらサボるのでは意味がないという。これは説得力があった。
私自身も以前は根を詰めて仕事をすることがあった。そういったときは体に異変を感じることもあった。今は“サボる時間”を定期的にとっている。たとえば、次のようなことをする。
- 昨日のスポーツニュースの記事を読む
- コーヒーとスイーツをゆっくり味わう
- 横になって休む
時間は10~20分程度。このちょっとしたサボりの時間によって体と心がリセットされる。非常に効率が良い。
まずはあなたの“代表的な1日のスケジュール”を書き出してほしい。そこに“息抜きの時間”を入れてみる。可能なら1日サボるチートデイをつくるのも良い。戦略的にリフレッシュことで仕事は格段に効率化する。ぜひ試していただきたい。