森崎ウィンさんは、2018年公開のハリウッド超大作『レディ・プレイヤー1』で主要キャストのダイトウ/トシロウを演じ一躍脚光を浴びると、’19年に出演した映画『蜜蜂と遠雷』では第43回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。また翌年にはミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2の主人公・トニー役を演じ、高い評価を獲得している。以降も、映画や舞台を中心に幅広く活躍し続けている森崎さんの転機「THE CHANGE」とは、いったいなんだったのだろうか。【第1回/全5回】
撮影中、森崎さんは突然笑い出した。砂時計を持ってもらうようにお願いしたのだが、“砂時計を持つ”という部分が急に笑いのツボに入ってしまったようだ。「オレ何やってるんだろう、って急に思ってきちゃって……」と、屈託なく笑う森崎さん。一方で、インタビューの際の自身の思いを真剣に語るときには、それとはまるで違うストイックで情熱的な横顔を見せた。
森崎さんの活躍の場は映画、ドラマなどの映像作品だけでなく、芝居やミュージカルといった舞台まで年々広がり続けている。そんな森崎さんが、昨年に引き続き出演を控える『ミュージカルは最強です!』は、人気のミュージカル俳優たちとお笑い芸人たちが共演するライブだ。森崎さんはどのような思いで挑んでいるのだろうか。
「このライブは、歌唱も披露しつつ、コントも真剣にやるという斬新な企画なんですよね。僕ら俳優陣はあまりコントをやる機会がないのですが、コントのプロの方々から直接ご指導いただけるのは貴重な経験ですし、個人的に“コントをやりたい!”ってずっと思ってきたので、今回もとても楽しみにしています」
サンドウィッチマンのコントに刺激を受けている
普段からお笑いに興味があり、中でも賞レース『M-1グランプリ』優勝歴のある、とあるお笑いコンビには刺激を受けているようだ。
「サンドウィッチマンさんが大好きなんですよ。彼らのネタはお芝居の要素があるので、例えば間の取り方ひとつとっても、俳優として学ぶべきところが多いんです。そもそも笑いを取ること自体が難しいと思うのですが、彼らが作るネタは老若男女誰が見ても、ちゃんと内容が伝わるものになっていてすごいと思います。それでいて力が入っていない感じがするのも、またスゴいんですよね」
今回、『ミュージカルは最強です!』で共演するサルゴリラや紅しょうがも、それぞれ賞レース『キングオブコント』、『THE W』というお笑いの賞レースで優勝した実力者ということで、森崎さんは共演を大いに楽しみにしている。
「お二組とも、いろいろなメディアで拝見することがとても多いですよね。時代を引っ張っているお笑いのトップの方々が見ている景色を、僕たちも共有させていただけることをすごく楽しみにしています」
そう語った森崎さんの目はこのライブに寄せる期待と喜びに満ちている。それは、前回の公演でお笑いトリオ・ジャングルポケットと共演した経験から来ているようだ。
「前回の公演では、ジャングルポケットさんと一緒に稽古できる時間はそれほど多くなかったのですが、そんな中でも長い間お笑いの世界に携わってきた人たちは、こうやって稽古していくんだ、という部分を見られてすごく楽しかったんですよね。
おそらく芸人さんはネタ作りをするときに、今までお客さんの前で何回も演じてつかんできた経験でいくんでしょうけど、僕にはそういう経験がないのでとにかく必死にやりました。だから今回も“とにかく必死にやる”それに尽きると思います」
映像作品と“一発本番”のライブの違い
今回の公演に向けた意気込みをそう話した森崎さん。いままで自身が出演してきた映画などでもコミカルなシーンはあったと思うが、それらと“ライブでコントを披露する”ということの違いはどんなところにあるのだろうか。
「映画でコミカルなシーンを演じるときは、編集の力も使って笑いの空気感をつくれるんですよね。でもお客さんの目の前で演じるのは、本番一発での披露なので、まったく違うものなんですね。映画が編集のリズムで笑わせていくように、舞台では会場の空気感みたいなものをつかんでリズムを作っていく、というところに、ライブでコントを披露する難しさや面白さが詰まっていると思うんです」
前回の公演では、森崎さんはその空気感を見事につかみ、披露したコントは会場を爆笑の渦に包んだ。
「お芝居では上演中にお客さんのリアクションを求めたり、それを味わったりすることはしないんですよ。芝居の進行を止めたりすることはないですからね。でもコントはお客さんに対して投げかけるように演じるので、それがある意味許される部分があるじゃないですか。だからお客さんが笑ってくれた気持ち良さをたっぷり味わうことができました。“獲ったぞ! ウェイ!”みたいな感じで(笑)」
そう話し、再び屈託なく笑った森崎さん。真剣に芝居に取り組むストイックさと、観客のリアクションについ嬉しくなってしまう素直な一面とが両輪となり、これからも彼の魅力を最大限に引き出す変化「THE CHANGE」を生み出すことだろう。