枝豆希少品種「たまふくら」...宇宙へ 福島大・平教授ら開発挑戦

枝豆や福島牛の成分を可視化した平教授(左)と鹿野研究員

 福島大食農学類の平修教授(49)らの研究グループは、枝豆の希少品種「たまふくら」で宇宙食の開発を目指すプロジェクトに乗り出す。食材に含まれる成分の質量を測り、見えるようにする分析法「質量分析イメージング」で、一般的に流通している品種よりも豊富な栄養分があると分かったため。栄養価が高い上、食の主義や宗教上の制限にかかわらず、世界で広く受け入れられ得る品種として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などに売り込んでいく考えだ。

「たまふくら」は北海道森町の特産品で、平教授は森町と組んでプロジェクトを進めている。森町の気候に合った品種で、大阪や京都など主に関西の料亭に流通しているが、生産量が少ないため市場にはあまり出回っていない。

 平教授は、レーザーを当てて物質の成分を可視化する機器「イメージング質量分析装置」を用いてたまふくらと、広く市場に流通している市販の品種の成分を分析した。その結果、たまふくらにはアルコールの分解を促進する「メチオニン」や、更年期障害の改善に効果的な「イソフラボン」などの成分が多く含まれることが分かった。

 森町は、人気アニメ「ドラゴンボール」に登場する体力回復に効く架空の豆「仙豆(せんず)」にちなみ、「仙豆プロジェクト」と銘打ってたまふくらを売り出している。今後はさらに宇宙食への採用を目指す。今月からJAXAへの売り込みなど取り組みを本格化させる計画だ。

 JAXAによると、宇宙食は常温での長期保存が可能で、高い衛生性の確保などが条件となる。レトルト食品や缶詰をはじめ、水や湯を入れる加水食品や、菓子類のようにそのまま食べられる加工食品がある。

 平教授は、たまふくらについて「栄養価が高く、ビーガン(完全菜食主義者)など食の主義にかかわらず世界中の人が食べる豆類は宇宙食として有用だ」と期待している。(渡辺美幸)

 福島牛の特有成分も分析

 福島大にある「イメージング質量分析装置」を用いた研究は、多くの成果を生み出している。食農学類の鹿野仁美研究員(35)らの研究グループは福島牛の肉を分析。赤みに入るサシの部分に、和牛特有の甘い香りがする成分「ラクトン」が集中して含まれることを突き止めた。枝豆と福島牛に関する二つの研究成果に、平教授らがアスパラガスの成分を可視化した研究を加えた三つの論文は、3月に国際誌に掲載された。

希少品種「たまふくら」

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