星でも座布団でもなくモミジです 広島県警マスコット「メイプル君」誕生30年、遅咲きの人気者を目指して

フラワーフェスティバル会場で来場者と写真撮影に応じるメイプル君

 皆さん、メイプル君を知っているだろうか。広島県木のモミジをモチーフにした県警のシンボルマスコットのことだ。誕生したのは、実は約30年前。でも、県民の認知度はいまひとつのよう。本来は防犯などの取り組みをPRする重要な役割を担うだけに、県警はイラストのバリエーションを増やしたり、着ぐるみを作ったりして知名度アップに力を入れている。

 広島市中心部で5月3~5日にあったひろしまフラワーフェスティバル(FF)に、制帽をかぶった白い胴体のキャラクターが初めて登場した。隣で広報課員が家族連れや外国人観光客に「メイプル君です。覚えてね」と連呼。写真撮影の順番待ちも見られた。

 近づいた来場者の反応はどうなのか。記者が聞いてみた。「かわいい」との声は多くあったが、「何の形?歯なの、星なの」「名前を初めて知りました」。思った通り、名前を以前から知っている人はほとんどいなかった。「あの白い座布団(のマスコット)は何なんですか」と言った人もいたようだ。

 メイプル君は県警の発足40年を記念し、1995年に誕生した。県警がデザインを公募し、寄せられた133点の中から選ばれた。一方で、減らそう犯罪県民総ぐるみ運動をPRする「モシカ」(2006年に誕生)など、後に登場した他のマスコットに比べ「知名度が低いのが悩みだった」(広報課)という。

 正面を向いて敬礼するポーズの変形を内規で禁じたため、活用の幅が広がらなかったのが主な要因。動くと形が変わる着ぐるみは制作できず、活用は防犯の啓発チラシや県警ホームページの挿絵にとどまった。

 しかし、特殊詐欺などが相次ぐ中、広報啓発の効果を高めるには県警に親しみを感じてもらう必要があるとの声が上がったのを機に昨年夏、内規を変えた。デザインした廿日市市のグラフィックデザイナー堀江豊さん(74)の協力を得て野球やサッカーをしたり、白バイに乗ったりする約60種類のデザインを加え、着ぐるみも作った。広報課は「防犯や警察官募集など幅広い分野で登場させていく」と意気込む。(向井千夏)

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