ドラ1候補にスカウト唸る「バット強く振れる」 侍ジャパンも経験…プロ意識の打撃技術

福井工大戦に出場した青学大・西川史礁【写真:小林靖】

青学大の西川史礁、今年3月に侍ジャパンのトップチームに抜擢され活躍

今秋ドラフトの1位指名候補、青学大・西川史礁(みしょう)外野手は11日、神宮球場で行われた全日本大学野球選手権大会2回戦の福井工大戦に「4番・中堅」で出場し、3打数1安打1四球。チームは8-1で7回コールド勝ちを収め、大会連覇へ向けて好発進した。

今年3月の欧州代表戦(京セラドーム)で、学生ながら侍ジャパンのトップチームに抜擢され大活躍。全国的な知名度も一気にアップした。当然、対戦相手の警戒は強まる。初回、青学大の1番から3番までの3連打で2点先行し、なおも無死二塁で迎えた第1打席。1球もストライクが来ないまま四球で歩かされた。

第2、第3打席は凡退し、7回2死走者なしで迎えた第4打席。カウント2-1から「おそらく変化球で勝負してくると思い、基本のセンター返しを意識していました」との読み通り、チェンジアップを中前へ運んだ。「あまりいい当たりではなかったですが、結果的に1本出て、ほっとしています」と胸をなでおろした。

「ドラフト1位でプロに入ることを意識して練習している」と言い切る西川。長打力、走力、外野手としての守備力を兼ね備えるが、「一発長打より、率にこだわっています。その延長がホームランになればいい」と心掛けている。

「相手投手のレベルが高くなるほど、甘い球は来なくなる。3打席に1球来るかどうかの甘い球を、一発で仕留められるかどうかで、打率3割を残せるかどうかが決まると思っています」と語るだけに、3タコと3打数1安打では大違いだ。

ネット裏にはプロのスカウトが大勢詰めかけていて、西武の潮崎哲也スカウトディレクターは「ヒットもいい当たりではなかったけれど、全国大会の舞台で数字に残る結果を出せるのはさすが。バットを強く振れることが彼の魅力だね」と評した。

兄の藍畝さんも青学大主将を務めるも、4年間を通じて「2部」だった

青学大は東都大学野球リーグを今春まで3季連続で制していて、西川がレギュラーとなり4番に座った昨春には、全日本大学野球選手権でも優勝。昨秋の明治神宮大会でも準優勝している。

しかし、そんな青学大でさえ、“戦国東都”と呼ばれるほどレベルの高いリーグにあっては、「1部」の6校から漏れ「2部」に降格していた時期がある。

4歳上の兄・藍畝(らんせ)さんは、2017年から20年まで青学大野球部に所属し、4年時には主将を務めたが、4年間を通じて2部にとどまった。最後の秋に2部で優勝したお陰で、入れ違いの2021年に入学した西川自身は1部しか知らない。

「兄はキャプテンになった時、『春に2部で優勝して1部昇格、秋に日本一』という目標を立てました。ところが、春季リーグが新型コロナウイルスの感染拡大で中止になり、チャレンジもできないまま目標は潰えてしまった。監督から中止の知らせを受けた時、兄はあまりにも悔しくて泣いたそうです」と明かす。

西川自身は「日本一」を昨春に1度達成したが、現在は一般企業に就職しているという兄の思いも背負い、2度目の頂点を目指している。それが叶えば当然、プロ入りへ向けて、また1つ箔をつけることにもなる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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