沖縄の民放3社×お笑い事務所3社、異例のコラボで新番組 「お笑い一本で芸人が生活できるように」

各社の代表や所属芸人ら。後方には沖縄県内民放3社のキャラクターも勢ぞろい=5月28日、那覇市のジュンク堂書店那覇店

 沖縄の芸能事務所であるオリジンlil、FECオフィス、よしもとエンタテインメント沖縄の3社が合同で作り上げるテレビ特番「てんたかTV」が7月1日から順次、沖縄県内の民放3局(琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ)で放送される。同じ番組が放送回ごとに違う局で放送される異例の試み。さらには芸能事務所3社が力を合わせるという意味でも沖縄エンタメ界全体の腕の見せどころとなりそうだ。5月28日に那覇市内で制作発表会見が行われ、3事務所の代表や所属芸人ら関係者が登壇した。構成作家のキャンヒロユキ氏は「みんなが笑うことが、沖縄の幸せにつながってほしい」と語った。加えて、会見を通して一貫して感じられたのは「芸人が芸人の仕事だけで生活できるように」という決意だった。(文・写真=ライター・長濱良起)

特番として各局で1回ずつの放送

各事務所の所属芸人ら

 番組の実現に先立つ形で行われたのが、3事務所とキャン氏が共に立ち上げて3月に初回公演を行ったお笑いライブ「てんたか」だった。このプロジェクトは、メディア出演やイベント、ステージ営業などを通して「沖縄をお笑いで盛り上げる」という共通の目標を掲げている。

 ひとまずは特番として、各局で1回ずつ放送する。番組内容についてキャン氏は、ネタやトーク、企画を通して「芸人それぞれの得意分野を生かして活躍できる場面を作っていきたい」と構想している。

「芸人でいることが誇らしい沖縄に」

会見に臨む(左から)構成作家のキャンヒロユキ氏、オリジンlilの首里のすけ社長、FECオフィスの山城智二社長、よしもとエンタテインメント沖縄の和泉かな社長。司会はオリジンlil所属のTOMOKI=5月28日、那覇市のジュンク堂書店那覇店

 オリジンlilの首里のすけ社長は「代表兼芸人としてもめちゃくちゃ良いプロジェクトだと思っています」と述べた。3事務所で力を合わせることについて「(3月の)合同ライブのお客さんの数も、盛り上がりも、舞台の熱気もすごかった。相乗効果は3倍どころではない。新たなムーブメントに注目していただきたい」と自信をのぞかせる。

 FECオフィスの山城智二社長は「放送局3局の皆さんにご尽力いただいた。芸人が活躍できて、出たいと思えるような番組やライブをしていきたいです」、よしもとエンタテインメント沖縄の和泉かな社長は「芸人たちがもっと輝ける場所を作って、芸人でいることが誇らしいという沖縄にできれば」とそれぞれ思いを口にした。

芸人がお笑いだけで生活するために

 

 FECオフィスの山城社長は、いくぶん神妙さを帯びた声でこう発言した。「お笑い一本で芸人が生活していけるような場を作りたいということが一番にあります」

 沖縄には100組ほどの芸人がいると言われている。知名度の高い番組にレギュラー出演していても、ローカルのお笑い賞レースで優勝しても、芸事だけで生活できているのは一部の芸人に限られているのが実情だ。同じく登壇した初恋クロマニヨンの松田しょう(よしもとエンタテインメント)は笑いを交えつつも「芸人さんもいろいろと副業をしている状況です。この番組で大きなムーブメントを作って、芸人さんたちが食っていける環境作りのきっかけになればと思っています」と述べる場面もあった。

 よしもとエンタテイメント沖縄の和泉社長は「今、沖縄で芸人になりたいという若い人たちがどんどん減っている状況を改善していくことが、この企画の一つの目標」と語り、オリジンlilの首里のすけ代表は「スポンサーを大募集しています」と声を張る。

 このことから受け取れるのは、芸人や事務所のみならず、メディアや企業、可能であれば行政も一体となって「沖縄のお笑い」を文化として認識し、守り育てていくことの大切さだ。

 キャン氏は「(芸人の仕事だけで)ご飯を食べられないのにずっと芸人を続けているのは、人を笑顔にした時の喜びがあるからこそだと思う。それが素晴らしい」と真っすぐ語る。「てんたかTV」の実現は、事務所と局の垣根を越えて沖縄のエンタメ界の協力態勢が一つ上の段階に入りつつあることを示している。

放送は7月1、9、18日

(左から)RBCのあーるびーしーさー、OTVのゆ~たん、QABのQごろ~

 てんたかTVの放送予定は以下の通り。
RBC : 7月1日24:59~25:29/OTV : 7月9日 24:30~25:00/QAB : 7月18日24:50~25:20(いずれも予定)
 

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