「お金は人の悲しみ、うれしさ、苦しさ、全て見ている」古銭を集め続けて70年のコレクターの思い

世界中の紙幣や硬貨を紹介する企画展が、宜野湾(ぎのわん)市立博物館で開かれた。

展示されている数万点の貨幣を一人で収集したのが、翁長良明さん。コレクター歴70年、古銭収集への熱い思いを取材した。

馬蹄銀や世界一大きな紙幣も収集

壁一面に展示された紙幣や硬貨。普段なかなか目にすることのできない外国のものや、珍しいお金の数々。

ひときわ目を引くこの立体的なお金は、昔の中国で使われていた銀貨、「馬蹄銀(ばていぎん)」。

そして、世界一大きな紙幣といわれている「大明通行宝鈔(だいみんつうこうほうしょう)」など沖縄県内ではめったに見られない貴重なものばかり。

ここに展示されている古銭は全て、古美術コレクターの翁長良明さん(76)が70年かけて集めてきたものだ。

翁長良明さん:
子どもたちが喜ぶような展示にしようと思って。動物の絵があるお金とか

古銭収集70年を記念した企画展には、琉球王国時代の貴重な通貨や200カ国あまりの外貨が並ぶ。

翁長良明さん:
始めたら止めない性格なんですよ。ずっと続けてきたから現在があります

コレクターになったきっかけは?

翁長さんの古銭との出会いは6歳の頃。

当時は琉球大学だった首里城の敷地内で、あるものを拾った。

翁長良明さん:
中国銭でした。(首里城で)遊んでいるときにたまたま見つけたのが、古銭を集めるきっかけですね

偶然手に取った古い中国銭。翁長さんは一目見て「宝物」だと感じたという。

以来、沖縄に眠る貴重なものを集めて大切に残していきたいと、大人になってからは地元・首里で弁当店を営みながら生計を立て、少しずつ古銭を集め続けた。

翁長良明さん:
けっこう沖縄にも古銭を売っているところが、たくさんあったんですよ。那覇にもコザにも。そういうところで少しずつ集めました。コツコツ集めてやったら、どんな高い階段でも行きつきます

翁長さんのコレクションは古銭だけにとどまらない。

沖縄のものは大切に残したい

那覇市の平和通りの一角にたたずむ「なるみ堂」。

翁長さんが今までに集めてきた、ありとあらゆるものを販売している。

翁長良明さん:
いろんなポスターがありますよ。5000枚くらいあります

翁長良明さん:
復帰前のものが大部分です。復帰前のビンです

翁長良明さん:
古い本ですね。本はいっぱいあります

翁長良明さん:
壺屋焼です

Q.ちなみにいくらくらいですか?

翁長良明さん:
たぶん20万円近くです

天井にはたくさんの空き缶が…

翁長良明さん:
オリオンビールの缶は、初期のころから100以上持っています。たぶんオリオンに関しては誰にも負けないです

翁長さんは、お店にあるものはいま捨てるようなものでも、100年後には宝であるため、誰かが残さないといけなく、どんなものでも沖縄のものは大切にしたいとのこと。そのため、集めているのは、ほとんどが沖縄にまつわるものだ。

収集を通して、沖縄の歴史と文化をモノとして残していきたいという使命感を持っている。

翁長良明さん:
沖縄のものは、沖縄に返したい。そして沖縄に残したい。自分が死んで何十年後かに評価されればいいです。こんなのを残してくれてありがとうと

一番のお宝は沖縄最古の通貨「中山通宝」

長い年月をかけて集めてきた膨大なコレクションの中から、翁長さんが一番大切にしているという古銭を紹介してもらった。

翁長良明さん:
中山(ちゅうざん)通宝。20年以上かかって手に入れたのがこれです

中山通宝とは、尚巴志(しょうはし)による三山統一以前に使われていた沖縄最古の通貨といわれている大変貴重なものだ。

翁長良明さん:
小さいけどね。これは沖縄の小さい文化財だと思っている。紛れもない沖縄の宝です

翁長さんにとって「お金」とは…

翁長良明さん:
お金がなければ何もできない。お金はとっても素晴らしいですが、お金ほど汚いものもない。お金というのは、両面を持っています。何百年、何千年前から人間とともに一緒に歩んできている。そして人間の悲しみ、うれしさ、苦しさ、全部を見ています

翁長さんは、古銭の収集をやめることは絶対にないと語る。

翁長良明さん:
おそらく病院で最期に寝ているときでも、何か落ちていたら拾うはず。それくらい集めるのが好きなんですよ。これは死ぬまでなおらない。それでいいと思っている。最高の人生です

時代の流れとともに人々の営みを見つめてきた古銭の数々。企画展では、翁長さんの人生も垣間見えることもできる。

(沖縄テレビ)

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