「龍馬伝」寄贈 福山雅治さんサイン、新大村駅で展示 ファン「新たな名所に」

「ありがとう大村市!!」などと書かれた福山さんのサイン。撤去した伝馬船から切り取られ公開が始まった=大村市植松3丁目、新大村駅観光案内所

 長崎市出身のシンガー・ソングライター、福山雅治さんが大村市に残した直筆サインの“消息”がひそかに話題を集めている。NHK大河ドラマ「龍馬伝」の主演時、同市に寄贈されたサイン入り伝馬船。屋外に展示されたが劣化が激しく撤去を余儀なくされた。だが、サインだけは本年度、西九州新幹線の新大村駅前で公開されることに。ファンからは「新たな名所に」と期待する声が上がる。
 「各地のファンから悲痛な声を聞いていた」。そう語るのは福山さんのファンで県立佐世保中央高教諭の江上博志さん(62)=大村市竹松町=。福山さんと坂本龍馬にほれ込み、何とかサインを保存してほしいと願った一人だ。
 福山さんは2010年放送の「龍馬伝」で主人公・龍馬を演じた。同年2月、同市寺島沖の大村湾上でロケを敢行。勝海舟役の武田鉄矢さんと咸臨丸に向かうシーンで、福山さんが乗ったのが伝馬船だった。
 この伝馬船は同市がNHKの依頼を受け、市内の業者が製作。出来の良さからその後も何度か撮影に使われた。福山さんが「大村市民に感謝の気持ちを表したい」と考え、伝馬船に「ありがとう大村市!!」などと直筆でサイン。船は市役所(同市玖島1丁目)近くの屋外に展示され、市民に親しまれてきた。

「龍馬伝」のロケで使われ大村市役所付近に展示されていた当時の伝馬船。福山さんのサインが刻まれていた=大村市玖島1丁目(同市提供)

 年月を経て、船体は次第に劣化が目立つようになった。市観光振興課によると、サインはアクリル板でカバーしていたが、文字はかなり薄くなっていた。船体は腐食やシロアリ被害が顕著に。「本当は実物全体を残せるならよかった」(担当者)が、昨年8月にやむなく撤去した。
 だが、同課は「せっかくサインしていただいた分だけでもどうにか残したい」と検討。サインが書かれた板を切り取りコーティングをほどこし、額に入れて新大村駅観光案内所(同市植松3丁目)で新たに公開することを決めた。
 龍馬がきっかけで歴史が好きになり、社会科の教諭になった江上さん。「龍馬伝」はロケを偶然目にしたこともあり思い入れが強く、交流サイト(SNS)を通じ園田裕史市長にサインの保存を直談判したこともあった。今年4月、市長から「移設できることになった」とのメッセージが来たという。
 観光案内所の様子をSNSで発信すると、ファン仲間からは「絶対新大村に行きます」など喜びの声が上がった。幕末には龍馬と関係の深い渡辺昇などの志士を輩出した大村藩。そうした歴史の痕跡を感じるものが新しい玄関口・新大村駅前に置かれたことで「歴史と未来が融合する場所」になったと感じたという。
 福山さんが主催する歌のコンテストで優勝した経験もある江上さんは、その魅力の一つに「トップスターでありながら地元長崎やファンを大事にしてくれること」を挙げる。10月には長崎スタジアムシティ(長崎市幸町)のこけら落としライブを予定。江上さんは「ライブの際にはファンの方々にぜひ大村へサインを見に来てほしい」、市の担当者は「ご本人にも立ち寄ってもらえれば」と期待をにじませた。

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