亡き老親が長年使ってきた「預金口座」…子どもが引き継いで使うことは可能?【相続専門税理士が解説】

(画像はイメージです/PIXTA)

亡くなった方が所有していた不動産、自動車。これらを相続人が引き継ぐには、どのような手続きが必要なのでしょうか。また、銀行口座は、相続人が引き継ぐことは可能なのでしょうか。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

母が亡くなりました。母名義の自宅、車、預貯金を相続する予定です。できればいずれも使い続けたいのですが、どのような手続きが必要でしょうか?

30代会社員(埼玉県和光市)

相続した不動産の名義を変更する方法

不動産の名義変更をする場合は「相続登記」が必要になります。相続登記とは、建物と土地の所有権を、被相続人から相続人に移転させるための登記です。

不動産の登記は法務局で行います。所有権を移転させる場合、通常は「所有権を渡す人」と「受け取る人」が共同で申請する必要がありますが、相続登記の場合は、所有権を渡す人はすでに亡くなっているため、所有権を受け取る相続人が単独で申請できます。

遺言書がない場合は、遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書が必要です。

また、どの相続手続きでも必要になるのが、被相続人の戸籍謄本と住民票です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票、そして、すべての相続人の戸籍謄本です。相続人側の住民票は、相続登記しようとする不動産を相続する人のものだけです。

また、「法定相続情報証明制度」を活用して法務局で作成してもらった「法定相続情報一覧図」の写しがあれば、戸籍謄本の提出は不要になります。また「相続関係説明図」も作成しておくと便利です。

不動産関係の書類には、土地または建物の登記簿謄本と固定資産税評価証明書が必要です。

相続登記が完了すると、登記完了証と、登記識別情報通知書が交付されます。

不動産の名義変更の必要書類

〈いずれか準備すべきもの〉

●遺言書ありなら「遺言書」

●遺言書なしなら「遺産分割協議書」と「相続人全員の印鑑証明書」

〈必ず必要になるもの〉

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

●被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

●すべての相続人の戸籍謄本

●不動産を相続する相続人の戸籍謄本

●土地または建物の登記簿謄本(登記事項証明書)

●固定資産評価証明書

●登記申請書

〈司法書士に依頼する場合に必要となるもの〉

●司法書士に委任する場合は「委任状」

相続した車の名義を変更する方法

自動車も、相続するにあたっては名義変更の手続きが必要です。

自動車の名義変更は、新たに所有者となる相続人の住所地を管轄する運輸支局で手続きしますが、自動車保管場所証明書を取得してから1ヵ月以内に手続きしなければいけないため、注意が必要です。

売却や廃車を選択する場合も、一旦は相続による名義変更が必要になります。

手続に必要な書類は「戸籍謄本」と「住民票」です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票、そして、すべての相続人の戸籍謄本が必要です。

自動車は複数人による所有が法律で認められています。相続人全員で共有相続する場合は遺産分割協議書は不要ですが、相続人のうちの1人が相続する場合は遺産分割協議書が必要となります。いずれにしても相続人全員で実印を押すことになるため、全員の印鑑証明書も必要です。

自動車関連の書類としては、自動車検査証、保管場所証明書が必要です。また、運輸支局のホームページから申請依頼書をダウンロードして記入しておく必要があります。

自動車の名義変更の必要書類

●自動車検査証

●相続人の自動車保管場所証明書

●申請依頼書

●手数料納付書(検査登録印紙を添付)

●自動車税申告書

●代理人に委任する場合は委任状

預金口座、解約せずに「名義変更」という選択肢も

公的機関での手続きではありませんが、銀行預金口座の名義変更についても解説しておきましょう。

被相続人の銀行預金口座は、解約して預金を払戻すことも、継続して使うことも可能です。継続して使う場合は、口座の名義変更を行います。いずれにしても、相続人が手続きをする必要があります。

銀行預金口座の名義変更に必要な書類は、金融機関によって多少は違いがあるものの、必須となるのは「遺産分割協議書」です。相続人全員で実印を押すため、ここでも全員の印鑑証明書が必要です。ほかと同様に、戸籍謄本と住民票も必要です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票、そして、すべての相続人の戸籍謄本です。また、通帳とキャッシュカードがあれば、それも提出する必要があります。

銀行預貯金口座の名義変更の必要書類

●遺産分割協議書

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

●すべての相続人の戸籍謄本

●すべての相続人の印鑑登録証

●相続手続依頼書

●被相続人の通帳、キャッシュカード

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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