【第3回WUBS】2度目の来日で初勝利を目指すシドニー大(オーストラリア)

シドニー大の得点源の一人、マイキー・ヨーンの出来は、シドニー大のWUBS初勝利に欠かせない要素だ(写真/©山岡邦彦 月刊バスケットボール)

第3回WUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)に2年連続で出場するシドニー大は、昨年の第2回WUBSで最も悔しさを味わったチームと言っていいだろう。初戦で初代王者のアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)に50-88で屈した後、5-8位決定戦ではペルバナス・インスティテュート(インドネシア)に56-60で惜敗。最終日の7-8位決定戦でも高麗大に69-84で敗れての8位フィニッシュ。今回彼らにとっては、まずオーストラリア勢として初の勝利を手にすることが大きな目標になる。

勝利に至らなかった理由についての見方は様々だが、昨年はシドニー大(8位)、高麗大(7位)、ペルバナス・インスティテュート(6位)と初来日の3チームが下位を占めたことには何らかの理由もあったかもしれない。シドニー大の場合、母国のリーグ戦(UBL=University Basketball League/次ページ参照)を終えた後のオフ期間でもあり、かつチームとして初めて異国を訪れて参加するWUBSだった。彼らの誰一人として、泣き言は一言も漏らしてはいない。しかし現時点で振り返るには、本来の力を出し切れなかった事情としてそういったことも念頭に置くべきだろう。

問題は第3回WUBSでどんな戦いを見せるかということだ。

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指揮官交代で心機一転、ポテンシャルを発揮できれば上位進出も上記の視点からは、シドニー大がパフォーマンスを高めて日本にやってくるのが必然だ。今年3月に開幕し、現在進行中のUBLでは4月30日現在6勝2敗で首位に1ゲーム差の4位。ここまでの試合に登録された16人のメンバーには、2年前にリーグ制覇を果たした顔ぶれ、昨年の第2回WUBSで来日した主力級が残っている。

さらには、ヘッドコーチが昨年のトム・ガーレップHCからマシュー・ジョンストンHCに交代。チームとして新陳代謝を図り、心機一転2年ぶりの王座奪還に向かっているという状況だ。昨年の来日を含むこれまでの経験が生きる上に、内面的に駆り立てられるべき理由が複数あるのは、チームとして非常に良い状況に違いない。

昨年の大会でパフォーマンス上の問題として浮き彫りになっていたことの一つは、ペリメーターディフェンスで相手シューターに十分なプレッシャーをかけられなかったことだ。3試合で、相手チームに3Pショットを91本打たれ、35本中決められた。“被弾数”としても確率(38.5%)としても厳しい数字だ。

加えてオフェンス面では、自らのロングレンジゲームが不発(3Pショットが85本中14本のみ成功の16.5%)に終わった。インサイドでも、1年生でチーム最長身だった204cmのセンター、キャンベル・グリーンが平均5.2得点、4.8リバウンドなど、フィジカル面の強さをいまひとつ生かしきれなかった。

これらの数字に表れる明確な課題を克服することで、おのずと初勝利が見えてくるわけだが、UBLでのパフォーマンスをそのまま日本で出しきれれば、それは十分可能だろう。

UBL2024シーズンでは、ジョシュ・ペイン(188cm/SG)が平均16.3得点、マイキー・ヨーン(175cm/PG)が平均15.9得点、ミッチ・スミス(194cm/PF)が平均15.5得点で得点面の柱。このほかに、平均13.1得点のマシュー・ウェイチャー(186cm/PG)、平均11.0得点のロビー・ムーア(183cm/SG)という得点分布をみれば、オフェンスではガード陣とシューター陣の活躍が欠かせないチームであるという特徴が見えてくる。

UBL2024でシドニー大をリーディングスコアラーとしてけん引しているのは、シューティングガードのジョシュ・ペインだ。第2回WUBSでは3Pショットが思うように決められず、満足できる結果を残せなかったが、2度目の挑戦はどうか(写真/©山岡邦彦月刊バスケットボール)

第2回WUBSでの個人成績を振り返ると、チームのトップスコアラーはムーアで平均12.0得点。このほか2桁のアベレージを残したのはウェイチャー(10.3得点)とペイン(10.0得点)の2人だけだった。身体的に強くスピードと突破力があるペインやヨーン(昨年大会は6.3得点)を含め、バックコート陣がペイントアタックからオフェンスを作り、自らの得点機を作るだけでなくチームとして効率よく3Pショットを炸裂させられるかどうか。

ヨーン、スミス、ウェイチャー、ムーアはセミプロリーグのNBL1でもプレーしている。腕を磨く機会にも事欠かない彼らの成長に加えて、今年はキアヌ・ゲーリング(188cm/SG)という新加入のシューターもいる。ゲーリングはまだ出番が少ないが確率的には55.6%(9本中4本成功)と申し分なく、シドニー大のロングレンジゲームの力になりそうだ。彼らのポテンシャルが本来どおりに発揮されれば、シドニー大は間違いなく初白星に大きく近づく。

ジョンストンHCはニューサウスウエールズ州(シドニーを含むオーストラリアの東南地域)のU18選抜チームのヘッドコーチを務めた経験もある。ドリブルやシュートよりも人柄を重んじ、生真面目に献身できるかどうかを重視するのが特徴とのこと。もともと教員でもあり、若者たちの心理もよく理解している。昨夏のWUBSでは、内面的なコンディショニングが整い切れなかったことがディフェンス面に現れたとみることもできるが、ジョンストンHCの手腕でインテンシティーが向上することにも期待したいところだ。

☆オーストラリアのバスケットボール

昨夏沖縄で開催されたワールドカップのオーストラリア対日本戦で、豪快なダンクを成功させたゼイビア・クックス。元NBAプレーヤーで、現在千葉ジェッツで活躍している(写真/©FIBA.WC2023)

オーストラリアはFIBA世界ランキングで5位のバスケットボール大国であり、日本にとってもアジアカップやワールドカップ予選での対戦でなじみ深い国だ。ただし大学バスケットボールに関しては、数年前まで強化の土台となる全オーストラリア的な大学リーグや、日本の全日本大学選手権(インカレ)にあたるような舞台がなかった。大学における主なスポーツ交流は、いくつもの競技で大学同士が火花を散らす「ナショナルズ」というビッグイベントを通じてはぐくまれてきたが、バスケットボールにおいてその流れが変わってきたのは、大学スポーツの統括団体であるユニスポート(UniSport)が主催する大学バスケットボールリーグUBL(University Basketball League)が誕生した2021年からだ。

現在UBLには、シドニー大を含め14の大学が参戦しており、春先から初夏にかけて総当たりのリーグ戦と上位チームによる決勝トーナメントを行って王座を決めている。プレーヤーの中には、学業の傍らセミプロリーグのNBL1でプレーする例も多い。これまでは大学に入るまでの中高レベルにおけるオーストラリア各地での切磋琢磨と、NBAグローバルアカデミーのようなエリート機関を経てトッププレーヤーが誕生していたが、今後徐々にその土台が大学バスケットボールに移行していく可能性もあるだろう。

☆シドニー大とは

イギリスの大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(QS)が毎年発表している世界ランキングの2024年版で、シドニー大は19位と高評価を得ている。創立は1850年で、オーストラリアでは最古の歴史を誇る名門だ。オーストラリアを代表するシドニーという大都市にあり、学生たちの国際職も豊か。そのため、ハイレベルな学術研究に取り組みながら、多様性に富んだ学生生活を送ることができるのも大きな特徴だ。

長い歴史を持つシドニー大だけに、スポーツにおける伝統の定期戦も学生カルチャーの一部。バスケットボールでも、同じシドニー市にあるシドニー工科大とは熱いライバル関係にあり、お互いの対戦を「インターバーシティ・シリーズ(Inter Varsity Series)」と名付けて毎年盛り上がる。

2年連続でWUBSに出場する男子バスケットボールチームは、ライオンズのニックネームで親しまれている。UBLにおける歴年の成績はリーグ創設初年度の2021年から準優勝、優勝、ベスト4と常に上位を維持。前ページの本文でも触れているとおり、今年のリーグ戦でも4月30日現在首位に1ゲーム差の6勝2敗で上位を賑わしている。

シドニー大はオーストラリアの大学バスケットボール界でけん引役を担うチームの一つだ(写真は身長204cmのビッグマン、キャンベル・グリーン ©山岡邦彦 月刊バスケットボール)


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