鉄道会社なのに船を導入、その理由は? JR貨物とセンコーの共同保有船、8月にも就航へ

JR貨物の貨物列車

JR貨物とセンコーグループホールディングスは6月5日、両社が共同保有する貨物船「扇望丸」の進水式を執り行ったと発表しました。

扇望丸は、コンテナやバラ積みの貨物を運搬できる貨物船。内航貨物船でよく見られる総トン数499トン、いわゆる「499船」です。積荷の積載量は1600トンで、JR貨物の一般的なコンテナである12フィートコンテナの場合、最大80個を積載することが可能です。

本船は、共同保有(JR貨物が30パーセント、センコーが70パーセント)という形ではありますが、鉄道事業者であるJR貨物が保有する船となります。鉄道会社自身、あるいはグループ会社が船を保有する例は、かつての青函連絡船や宇高連絡船などを運航していた国鉄や、有明海を横断する航路でフェリーを運航している島原鉄道といった例があります。しかし、JR貨物の場合、同社直営、あるいはグループ会社が運航する定期航路は存在していません。

そんなJR貨物が貨物船の導入に踏み切ったのは、災害時の代行輸送のため。近年は、激甚化する災害によって、ローカル線だけでなく主要幹線までもが長期運休を余儀なくされる事態が発生しています。たとえば、2018年夏の豪雨では、山陽本線の一部が被災。7月から9月までの約3か月も運休が続き、首都圏や関西と九州を結ぶ物流ネットワークが寸断されました。JR貨物では、今後も同様の事態が発生することを想定し、「輸送モードの複線化」を図るため、貨物船の導入を決めました。

今回進水した扇望丸は、通常時はセンコー海運グループが運航。災害によって貨物列車が走る路線が不通となった場合には、貨物列車の代行輸送に本船を投入し、貨物輸送サービスの継続を図る狙いです。

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