日本代表3バック「ベスト布陣」は? 代表OB「継続する価値がある」と断言する訳【見解】

金田喜稔氏が日本代表の3バック継続を推奨【写真:Getty Images】

【専門家の目|金田喜稔】3バックに好感触「ロングボール攻撃の対策にもなり得る」

森保一監督率いる日本代表(FIFAランク18位)は6月11日、ピースウイング広島で開催される初の国際試合となった北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選最終節でシリア代表(同89位)と対戦し、5-0で勝利を収めた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、日本代表が6月シリーズで採用した3バックについて持論を展開した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

◇ ◇ ◇

9月から始まるW杯アジア最終予選に向けて快勝で2次予選を締めくくった森保ジャパンに対して、金田氏は開口一番、賛辞を送った。

「まずは2次予選を終えて、選手たち、森保監督やコーチングスタッフ、そしてJFA関係者に対して『お疲れさまでした』と伝えたい。北朝鮮戦は3-0の不戦勝となったが、2次予選で日本は6戦全勝、24得点・0失点、首位通過とパーフェクトに近い結果。重箱の隅をつつくように批判する人もいるだろうが、結果を残しているのだから、まずは素直に称賛してしかるべきだろう。消化試合となった6月の2連戦も、単なるアピール合戦の場にはせず、今後を見据えて3バックを磨く絶好の機会として活用した。こうしたマネジメント面を見ても評価できる。細部を見れば上手くいかなかったところ、課題などがあるのは事実だし、選手たちも口にしているとおりだが、それはどんな強豪国であっても同様。W杯アジア2次予選を通じて日本代表が成長し、前進していると実感できたのは収穫と言っていい」

6月シリーズの前に最終予選進出を決めていた日本は、今回のミャンマー戦とシリア戦で3バックを採用。選手たちが手応えを口にしているなか、金田氏も3バックの採用を肯定的に捉えている。

「2試合続けて3バックを試したなか、ある程度の好感触を得たと思う。アジアカップで苦戦したようなロングボール攻撃の対策にもなり得る。2ボランチがこぼれ球も回収し、状況を見て両ウインバックも下がって5バックのような形も取れる。下がりすぎないように両ウインバックのバランス感覚が問われるが、3バックシステムは攻守ともにある程度上手く機能していた」

3バック採用の理由を推察、理想は2システムの併用と状況に応じた使い分け

森保監督は3バックを採用した理由の1つとして、「ディフェンスラインの選手が世界の舞台で力を見せてくれている」という点を挙げている。金田氏は加えて、ウイングバックの豊富な人材、やや手薄で不安を抱えるサイドバックの現状も影響していると推察した。

「高さ・強さ・展開力を備えたセンターバックタイプの選手が豊富で、走力と技術を兼備するウイングバックタイプも多い。一方、サイドバックの人材自体はいるが、パフォーマンスの安定感と選手層にはやや不安を残す。3バック採用に踏み切れるのは選手の成長があったからこそだが、今の日本代表の選手レベルと選手層であれば、攻撃・守備陣ともに個々の特性が上手くはまるのは3バックで、3バックが最適解の可能性がある。森保監督ら首脳陣も、当然その点を理解して6月シリーズで3バック採用に踏み切ったのだろう」

6月シリーズを通じて3バックで様々な選手がテストされたなか、金田氏が考える現時点での3バック“ベスト布陣”はシリア戦先発メンバーと分析している。

「2試合を通じて3バックを採用したが、シリア戦の先発が現時点のベスト布陣だろう。当然起用される選手によってシステムの最適解は変わるわけだが、今回先発した11選手であれば3バックのほうが個々の特性をより生かせるポテンシャルを感じた。ポジションの役割、プレーの整理もしやすそうな印象を要所で受けた」

金田氏が求める理想型は4バックと3バックの併用であり、状況に応じた使い分けだ。「3バックは主戦システムにもなり得るし、仮にならなかったとしてもオプション布陣として継続する価値がある」と語り、次のように総括していた。

「3バックに固執する必要は全くないが、4バックと同程度に使いこなせるようになると、日本のレベルは確実にワンランク上がる。4バックが機能不全の時は3バックにガラッと変えることもできるし、逆もしかり。主戦システムが2つあることによる安心感、相手に的を絞らせないメリットなどもあるだけに、ぜひこのまま3バックを磨いてほしい」(FOOTBALL ZONE編集部)

© 株式会社Creative2