51年の歴史に幕、嘉手納で愛された居酒屋「創」 連れ添った店主夫妻「感謝しかない」 沖縄

「感謝しかない」と話す居酒屋 創の(左から)仲間和也さん、和雄さん、妙美さん、新垣長信さん=5月14日、嘉手納町嘉手納の居酒屋 創

 【嘉手納】町役場から歩いて2、3分。役場職員や地元客でにぎわった嘉手納町嘉手納の「居酒屋 創(そう)」が5月31日、51年の歴史に幕を閉じた。店を支えてきたのは店主の仲間和雄さん(68)と妻の妙美さん(60)だ。妙美さんは片付いていく店内を見つめ「さみしい」とぽつり。それでも応援してくれた地域やお客さんに「感謝しかない」と明るく笑った。

 「居酒屋 創」の前身にあたる「養老乃瀧」は1973年、嘉手納で復帰後初の居酒屋として開店した。2013年から「居酒屋 創」に看板を変え、営業を続けてきた。

 妙美さんと和雄さんはこの店で出会った。妙美さんは16歳から、和雄さんは24歳から働き始め、今では夫婦として店を支える。「人生の半分以上だ」と妙美さんははにかむ。

 「お客さん」もいつの間にか「友だち」に。家族ぐるみの付き合いも多かった。これから出産を予定する常連からは「生まれる子どもを抱いてほしかった」と閉店を惜しまれた。

 職人かたぎの和雄さん。魚は自分で競りに行って仕入れるなど、こだわっていた。客の食べられない物や好みなど、細かな要望も丁寧に応えてきた。

 お店は仲間夫妻と息子の和也さん(41)、板前の新垣長信さん(61)の4人で支え合ってきた。7年前、和雄さんが咽頭がんを患い、咽頭を全摘出した。入院による2カ月弱の不在を3人で支えた。和雄さんはその後無事復帰し、閉店まで厨房(ちゅうぼう)に立ち続けた。

 店の片付けをしながら「物がなくなると(閉店の)実感がわく」としんみり。いっぱいに詰まっていたお酒のキープ棚も空っぽになっていった。「ありがとうしかない。これ以上は涙がちょちょ切れそう」と明るく振る舞う。笑顔あふれるまま「居酒屋 創」は幕を閉じた。 

(金盛文香)

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