【イギリス総選挙2024】 保守党がマニフェスト発表 減税と住宅購入支援に注力

イギリスの与党・保守党は11日、7月4日の総選挙に向けたマニフェスト(公約)を発表した。国民保険料の引き下げや数々の減税策、住宅問題への対策などが含まれている。

保守党はこのマニフェストで、2030年までに年間170億ポンド(約3兆4000億円)の減税を行うと約束。福祉給付金の削減と租税回避の取り締まりにより、減税分を埋め合わせられると説明している。

総選挙に向けた選挙活動では、主要政党間で歳出計画の妥当性に関する論争が激しさを増している。

減税をマニフェストの中心に

保守党は、減税策を有権者への公約の中心に置こうとしている。保守党政権は以前、2028年まで所得税の上限を凍結する決定をしたため、全体の税負担はここ数年で、第2次世界大戦以降で最大規模に達している。

この1年では、給与から差し引かれる国民保険料の引き下げを2回発表し、減税に積極的な党だという印象を与えようとしてきた。

ノーザンプトンシャーのシルヴァーストーン・レース場でマニフェストの発表イベントを行ったリシ・スーナク首相は、「人々が保守党に不満を抱き、私に不満を抱いているという事実に目をつむっていたわけではない」と認め、「我々はすべてにおいて正しいわけではない」と述べた。

その上で、首相に再選されたあかつきには、「数年間にわたって減税を続ける」と約束した。

国民保険料については、被雇用者の支払い額をさらに減らすほか、自営業者については2029年4月までに完全に廃止するとしている。

推計によると、国民保険料の引き下げにより、国は2030年までに103億ポンドの歳入減となる。

マニフェストではこの引き下げを、将来のある時点で国民保険料の支払いを完全に廃止するという保守党の長期的な野望に対する「追加の頭金」と表現している。

スーナク首相は、「保守党として、我々は一生懸命働いた人が二重に課税されるべきではないと考えている。それは不公平だ」と発言。

その上で、最大野党・労働党党首サー・キア・スターマーについて、「我々とは全く異なる見解」を持っていると指摘した。

「彼は自分が社会主義者だと言っているが、社会主義者が何をするかは周知の事実だ。社会主義者は皆さんからより多くの金を取っていく。それが自分たちのものだと思っているからだ」

保守党は一連の減税策全体で、2029/2030年度までに年間172億ポンドの税収減となると推計している。

この減収分について保守党は、福祉予算を年間120億ポンド削減するほか、租税回避対策によって現時点よりも年間60億ポンド以上の税収を得ることで、埋め合わせるとしている。

マニフェストでは、防衛費の増額など、いくつかの支出も掲げられた。その財源は、公務員の人員整理、国国民保健サービス(NHS)の管理職の整理、ビザ(査証)申請料の値上げなどの措置で賄うとしている。

英財政研究所(IFS)のポール・ジョンソン所長は、「不透明かつ不特定で、一見、犠牲者のいない削減」に疑問を呈した。

特に、マニフェスト内で計画されている福祉改革について、年間120億ポンドの節約を実現するという「課題に十分対応していない」と指摘した。

住宅購入支援策を継続へ

マニフェストでは、住宅購入の促進に向けた新たな公約も発表された。

これには、住宅購入支援策「ヘルプ・トゥ・バイ」の新バージョンも含まれている。

「ヘルプ・トゥ・バイ」が改定された場合、初めて住宅を購入する人は、新築物件の購入で最大20%の政府融資を受けられるようになる。

2013年の制度開始以来、数十万人がこの制度を利用して住宅を購入している。一方で、「建築業界のコカイン」として批判され、住宅価格の高騰の原因になっているという指摘も出ている。

このほか、既存の入居者に物件を売却する家主に対するキャピタルゲイン(譲渡益)税を2年間免除するという制度も発表された。

また、初めて住宅を購入する人について、42万5000ポンドまでは印紙税を免除する優遇制度を、引き続き無期限に維持するとしている。イングランドと北アイルランドで適用されているこの基準額は、2022年に引き上げられ、来年3月に終了する予定となっている。

そのほかの保守党のマニフェストの主な内容は以下の通り。

(英語記事 Sunak pledges further tax cuts in Tory manifesto

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