バイデン氏の次男ハンター氏に有罪評決、現職大統領の子どもで初 銃所持などめぐり

アメリカのジョー・バイデン大統領の次男、ハンター・バイデン氏(54)が銃の購入や所持をめぐり3件の連邦法違反の罪に問われた裁判で、東部デラウェア州連邦裁判所の陪審団は11日、すべての罪で有罪とする評決を出した。現職の米大統領の子どもが刑事裁判で有罪とされたのは初めて。

ハンター氏は、2018年10月に拳銃「コルト・コブラ・スペシャル・リボルバー」を購入した際、「違法薬物の違法使用者や常習者」ではないと虚偽申告したとされる。

連邦政府の身元調査で薬物使用についてうそをついたとして2件の罪に、薬物中毒の状態あるいは薬物を使用した状態で銃を所持したとして1件の罪に問われた。

ハンター氏は2021年に出した自著で、若いころ、クラック・コカインのヘビーユーザーだったと認めている。

しかし、銃購入時は薬物中毒から回復しており、申告書には事実を記載したとして、裁判では無罪を主張した。

デラウェア州の12人の陪審員は、約3時間の審議を経て有罪評決を出した。

ハンター氏は評決が言い渡された際、ほとんど感情を示さず、腕組みをしたまま前を見つめていた。そして後ろを振り返り、弁護団の何人かを抱きしめた。

閉廷後は妻メリッサ・コーエン・バイデン氏にキスをして抱きしめると、シークレットサービスに付き添われて法廷を後にした。

その後、声明を発表。「結果に失望した」としつつ、「メリッサや家族、友人、そして地域社会からの愛とサポートをありがたく思っている」とした。

ハンター氏が起訴されてからは、家族の何人かが裁判で同氏を支え続けてきた。しかし、この日の評決に立ち会ったのは、妻と叔父(バイデン大統領の弟)のジェイムズ・バイデン氏の2人だけだった。

バイデン大統領の妻でハンター氏の継母ジル・バイデン氏は、評決が読み上げられた数分後に裁判所のロビーに到着。大勢のカメラマンやジャーナリストを横目に、ハンター氏とともに裁判所を後にした。

ハンター氏が禁錮刑となる可能性については、複数の専門家があると指摘する。ただ、最高刑の禁錮25年となる可能性は極めて低いとみられる。

判事は量刑の言い渡し期日を定めなかった。通常は評決から120日後に言い渡される。

弁護人のアビー・ローウェル氏は、「ハンターが利用できるすべての法的挑戦を精力的に追求する」つもりだと述べた。

デイヴィッド・ワイス特別検察官は有罪評決後、この事件で問題なのは薬物依存症ではなく、依存症の渦中にいた「被告が違法な選択をした」ことだと指摘。「この国では誰も、法を超越できない」、「誰もが自分の行動の責任を負わなければならない。この裁判の被告でさえもだ」とした。

こうした中、バイデン大統領はワシントンで開催された銃規制会議で演説した。

その後、空路でデラウェア州ウィルミントンへ向かい、ハンター氏夫妻とその息子ボーくんを滑走路上で出迎えた。

バイデン大統領は評決後、依存症に打ち勝とうと努力した息子を「とても誇りに思う」と語った。

「依存症と闘う愛する人を持つ多くの家族には、愛する人が(これまでとは)反対の側からやって来て、回復に向かって強くたくましくなるのを見て誇りに思う気持ちが理解できる」

評決に先立ち、バイデン氏は息子が有罪評決を受けたとしても恩赦を与えるつもりはないと述べていた。

「私はこの裁判の結果を受け入れる。ハンターが控訴を検討する中、私は司法手続きを尊重し続けていく」

大統領選への影響は

ハンター氏に対する有罪評決は、11月の大統領選での再選を目指し、ドナルド・トランプ前大統領と接戦を繰り広げているバイデン大統領にとって政治的に困難なタイミングで下された。

トランプ前大統領は先月、「不倫口止め料」の支払いをめぐり業務記録に虚偽記載をしたとして罪に問われた裁判で、34件の罪状すべてについて有罪評決を受けた。この日は、政敵の息子の裁判について、アメリカの司法制度が政治的に公平であることを示すものであるとの見方を一蹴した。

「この裁判はバイデン犯罪一家の真の犯罪から目をそらすものでしかない」と、トランプ陣営の広報担当カロリン・リヴィット氏は声明で述べた。

一方、バイデン大統領に対する弾劾調査の一環としてハンター氏の聴き取りを行った共和党議員らは、有罪評決を歓迎している。

「今日の評決は説明責任への一歩だ」と、下院監視・政府改革委員会のジェイムズ・コマー委員長(共和党)はソーシャルメディアに

した。

裁判ではローウェル弁護士も検察側も陪審団に対し、陪審員席からは大統領夫人とシークレット・サービス職員がはっきりと見えるが、そうした家族の存在に影響を受けてはならないと繰り返し伝えていた。

陪審員の1人は評決から数時間後、自分もほかの陪審員もこうしたメッセージを心に刻んだと、BBCに語った。

「裁判中はジョー・バイデン大統領のことは一度も考えなかった」と、この男性陪審員は述べた。「たとえバイデン夫人がそこにいて、彼女が彼(大統領の)妻だと知っていたとしても。どういうわけか、そのことを思考から遮断していた」

そして、「裁判にかけられているのは(ハンター氏の)父親ではない」、「すべての陪審員の中で、政治的動機に言及した人はいなかった」とした。

ハンター氏の法的問題はこれで終わるわけではない。脱税をめぐる罪でも起訴されている。

起訴状によると、ハンター被告は2016~2019年に、少なくとも140万ドル(約2億円)の連邦税を逃れようと画策したとされる。

検察当局は、ハンター被告が「麻薬、コールガールやガールフレンドたち、高級ホテルや賃貸物件、外車、衣服、その他の個人的なもの、要するに税金以外のすべて」には金を使ったが、適切な納税には使わなかったと主張している。

この裁判の公判は9月に開かれる。

(英語記事 Hunter Biden guilty of all charges in gun trial

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