記念日に聴きたい!~「日記」ソング

6月12日は、ポーランド系ユダヤ人のアンネ・フランクが13歳の誕生日となる1942年6月12日から日記帳作品『アンネの日記』を書き始めたことにちなんで、「日記の日」(Anne's diary Day)に制定されています。ナチス・ドイツのユダヤ人迫害から逃れていたフランク一家が、オランダ・アムステルダムに身を隠してからポーランドのアウシュビッツへ強制送還となるまでの約2年間の生活が記されています。

楽曲においても、“日記”と名の付くものは多くありますが、有名な曲を中心にいくつか紹介していきましょう。「日記の日」制定の由来にもなった『アンネの日記』をそのままタイトルにしたのが、山下達郎の楽曲「フライング・キッド」からバンド名をとった浜崎貴司率いるFLYING KIDSの「アンネの日記」です。再結成後、2018年にリリースした14thアルバム『みんなあれについて考えてる』に収録されています。ほかにも「アンネの日記」と題する楽曲を歌っていたのが、アイドル歌手の浅野順子。アカデミー賞8部門にノミネートされたアメリカ映画『アンネの日記』の日本版主題歌として1967年にシングル・レコードとしてリリースされました。ちなみに、浅野は日本のマルチタレントのパイオニアの一人、大橋巨泉の妻としても知られています。

「アンネの日記」と一文字違いのタイトルとなったのは、ロック・バンド“クリープハイプ”の「アンタの日記」。一文字違うだけでまったく異なる詞世界が繰り広げられています。こちらは2009年のミニ・アルバム『When I was young, I'd listen to the radio』に収められています。

演歌・歌謡曲界では特に“日記”を冠する曲名が多い印象がありますが、その筆頭ともいえるのは、島倉千代子の「からたち日記」ではないでしょうか。1958年に発表されたシングルで、当時の「セリフが入った曲は売れない」という俗説を打ち破る130万枚超のヒットに。同名の映画やドラマも製作されるなど、島倉の代表曲とともに昭和歌謡史を彩る一曲となりました。

ヒューマン・ドラマとして放送された『夢千代日記』のテーマとなったのが、ドラマの主演を務めた吉永小百合が歌った「夢千代日記」。同ドラマは、その後にシリーズ化、映画化、舞台化もされ、物語の舞台となった兵庫県美方郡温泉町(現・新温泉町)は“夢千代の里”として一躍全国的に知られる存在となりました。

シンプルに「日記」というタイトルをつけた楽曲を歌っているのは、鈴木祥子、cinema staff、シンガーズハイ、私立恵比寿中学など。タレントの榊原郁恵がアイドル歌手時代に歌った「微笑日記」やハイ・ファイ・セットの「恋の日記」をはじめ、日記ソングにもさまざまな種類がありますが、60年代後半のカレッジ・フォーク・ブームの先駆けとなったフォー・セインツのデビュー・シングルとなったのが「小さな日記」。1968年に発表されると瞬く間にヒットし、のちに多くのアーティストにカヴァーされました。

女優の岡田奈々がアイドル時代に発表したのが「交換日記」。“岡田奈々”と聞いて、誰を思い浮かべるかによって世代の違いが出ますが、こちらは“神7”入りも果たしたAKB48の元メンバー……ではなくて、“昭和”の岡田奈々の方。同曲は1975年発表の2ndアルバム『憧憬』に収められいます。

そのほかにもロック・バンドのシドの「妄想日記」「妄想日記2」や、ロードオブメジャーの「日付けのない日記」、UVERworldの「病的希求日記」、羊文学の「絵日記」、岡崎体育の「観察日記」、アニメ『マクロスF』のエンディング・テーマとなったランカ・リー=中島愛の「ねこ日記」……というように、“日記”は楽曲のテーマとしてポピュラーなものといえそうです。

ハロー!プロジェクトのシャッフルユニットとして結成された“あか組4”は、2000年に「赤い日記帳」を発表。同じく結成された黄色5の「黄色いお空でBOOM BOOM BOOM」、青色7の「青いスポーツカーの男」との同日リリースで話題を呼びました。その後、あか組4のメンバーだった中澤裕子と後藤真希は、同曲をソロでもカヴァーしています。

赤があるなら白も取りあげておきましょう。THE BACK HORNが2004年にメジャー9thシングル「コバルトブルー」のカップリングとして発表したのが「白い日記帳」です。同曲はアルバム『ヘッドフォンチルドレン』のほか、『BEST THE BACK HORN』『B-SIDE THE BACK HORN』『BEST THE BACK HORN II』といったベスト・アルバムでも聴くことができます。

そして、なんといっても、多くの人の耳に残っていると思われる“日記”ソングの有名どころといえば、やはり和田アキ子の「古い日記」でしょう。インパクトのある“あの頃は ふたり共~”という歌い出しと、和田の(モノマネの)代名詞となった「ハッ!」の掛け声で、和田の代表曲として長く親しまれています。同曲はアーティストのなかでも人気が高く、堂本剛をはじめ、数多くの歌手がカヴァー。MISIA、MAN WITH A MISSION、JUJU、Toshlなどが参加した和田のデビュー50周年記念トリビュート・アルバム『アッコがおまかせ ~和田アキ子 50周年記念 トリビュート・アルバム~』(写真)では、以前、m-flo loves Akiko Wadaとして「HEY!」を発表し、同名義で『紅白歌合戦』に白組から初出場したm-floのVERBALが所属するクリエイティヴ・ユニットのPKCZが、EXILE SHOKICHIとのコラボレーションによるEXILE SHOKICHI×PKCZ名義で「古い日記」を歌っています。また、和田の2013年リリースのベスト・アルバム『45th ANNIVERSARY ESSENTIAL COLLECTION』では、「古い日記(Dynamite Soul Mix)」というパンチのあるリミックスが楽しめます。

このほかにもまだまだある日記ソング。「日記の日」という記念日に、自分なりのメモリアルな日記ソングを探して聴いてみるのもよいのではないでしょうか。

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