共働き家庭の苦悩「不登校の子をひとりにするのが心配」…中学3年生の娘が学校に行けるようになった〈たった1つの親子の約束〉【ライフキャリアコンサルタントの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

不登校になってしまう子どもが10年連続で増加しています。我が子が不登校だったら……。夫婦のどちらかが専業主婦(夫)の家庭と比較し、親が家を空ける時間が多い共働きやシングルマザー(ファザー)の家庭において、仕事にいかなくてはならない状況下で子をひとりにすることは、大きな不安を感じるでしょう。本記事では、ライフキャリアコンサルタントの江野本由香氏が、仕事と子育ての両立、不登校問題の乗り越え方について解説します。

不登校問題

子どもが中学生になれば仕事上では子がいることにほぼ考慮されなくなりますが、子育てが終わるかといえば、そうではありません。親の役割は家庭によって、より個別化していきます。子どもが部活・勉強・遊びに邁進し、悩みやトラブルにも自分で対処できる家庭もあれば、いじめや不登校などで親として放っておけないことが起こる家庭もあるのです。

私はライフキャリアカウンセラーとして、次のような相談を受けることがあります。

「中学生の子が不登校になり、ひとりにするのが心配。でも仕事には行かなければならないが、どうしたらよいか」

不登校とひとことにいっても、いじめなどの原因があって行けない場合や、とくに学校内に原因はないけど行けなくなってしまうなど、原因はさまざまです。文部科学省による不登校の定義は、

「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」

としています。不登校と定義される子どもは、どれくらいいるのでしょうか。文部科学省が公表した「問題行動・不登校調査」では、全国の小中学校で2022年度に学校を30日以上欠席した不登校の児童生徒は、前年度から5万4108人(22.1%)増の29万9048人となり、過去最多を記録しました。

不登校の増加は10年連続です。とくに中学生で多く、16人に1人が不登校の割合。1クラスに1〜2人はいる割合ですから、不登校は決してめずらしいことではないのです。その理由や原因がわかれば周囲の大人も対処の仕方があるかもしれませんが、本人すら理由がわからないケースも多くあるのが不登校のむずかしいところです。

カウセリングだけで対処できないケース

この時期に子どもについての悩みごとがあれば、まずは学校や行政が配置しているスクールカウンセラーに相談することになります。子どもの成育歴から親のかかわり方などを、子ども・親双方から丁寧に聞き、その親子にとって最善のアドバイスをしてくれます。

しかし、不登校の子が増え、その理由・原因・状態も多様化しているなか、すべての人が満足いくカウンセリングを受けられるとは限りません。カウンセラーとの相性もありますし、カウンセリングだけで対処できないケースもあります。

学校へ行けない本人がいちばんつらいとわかっていても、親も苦しい気持ちで押しつぶされそうになることもあり、冷静な判断ができなくなることもしばしば起こります。

そのようなときは、「子どもの課題」「自分の課題」「共通の課題」に分け、整理してみるとよいでしょう。たとえば、「子どもが学校へ行かない」ことは、「子どもの課題」です。仕事をどうするかは「あなた自身の課題」。心が不安定な子どもを、ひとりで家に置いていくことに対するリスクは「共通の課題」と考えられます。

子どもの課題

「子どもの課題」は子ども自身が解決していくしかありません。そこに必要なサポートや時間は、子どもによっても違います。無理やり学校へ行かせることが目的ではなく、子ども自身が自分の悩みと向き合い、どうすれば克服できるのかを考え、乗り越えていくことが目的なのではないでしょうか。

自分の力で乗り越えられた経験は、大きな自信につながっていきます。子どもを信じ、子どものペースに合わせて、待ちましょう。

親の課題

あなた自身は「自分の課題」と向き合うのです。人は自分の課題に向き合うことに苦しさを感じることがあり、向き合わずに放置しがち。

さらによくない結末は、子どもの課題と自分の課題が混ぜこぜになり、何かのはずみで「あなたのせいで仕事ができなくなった」など、自分の課題が克服できなかったことを子どものせいにしてしまうこと。子どもをひとりの人間として尊重し、それぞれの課題を克服できるよう、あなたは自身の課題について考えることが大切です。

親子共通の課題

そのうえで「共通の課題」である、「ひとりにしておくことのリスク」については、親子で話ができるのであれば親子で、話ができる状態でなければ第三者であるカウンセラーや信頼できる人を交えながら考えていけばよいでしょう。

子どもが不登校になったときの解決事例

先述した相談内容の「中学生の子が不登校になり、ひとりにするのが心配。でも仕事には行かなければならないが、どうしたらよいか」に対して、2つの例(相談例は複数の相談事例から紡ぎ出したフィクションです)を紹介しましょう。

心が不安定になり、不登校になった中学3年生の女の子

1つ目は、仕事のペースを変えず、あることをしたことで、子どもの心が安定していった例です。

中学3年生の女の子。原因はよくわからない状態で、少しずつ学校へ行けなくなっていきました。

子どもからいろいろと話を聞いたスクールカウンセラーが立てた仮説は、「母親が仕事をして家にいないことについては、まったく気にしていない。一緒にいてほしいとも思っていない様子。

しかし、小さいときに親が行き先を告げずに外出することがあり、それがとても不安でこわかったという話をしていた。そのことから、いるかどうかではなく、不安を感じたときに親と話ができたり、親は必ず帰ってくるといった安心感が得られれば心が安定してくるのではないか」といったことでした。

母親はいままでどおり仕事に行くことにします。「親がどこにいるか、何時に帰ってくるかわからない不安」から少しずつ心を解放するために、「家にいる子どもから連絡があったときは可能な限り対応する」「退社時には必ず親から帰ることを連絡する」といった方法を取ったようです。

子どもが親と話したいと思えば、いつでも話せる。親は自分の目の前にいなくても、仕事中も自分のことを気にかけているのを感じることで、子どもの心は少しずつ安定するようになっていきました。

その結果、子どもからの連絡の頻度が少しずつ減り、連絡自体がなくなり、そのうち学校にも行けるようになりました。

不登校から問題行動にまで発展した、中学1年生の男の子

2つ目は、仕事をセーブし、子どもと一緒の時間を増やすことで、子どもの行為がエスカレートしなかった例です。

中学1年生の男の子。小学校のときから学校を休みがちで、中学生になってからはまったく行けなくなりました。母親はシングルマザー。仕事を辞めるわけにはいかないので、不登校になっても生活を変えられませんでした。

そして、不登校から万引きにまで問題行動は発展。スクールカウンセラーにも話をしない、心を閉ざしてしまい、待ったなしの状態です。母親は覚悟を決め、お子さんと向き合うために職場へありのまま状況を話し、在宅勤務や勤務日数を減らすなどの対応を得ることができ、できるだけ家にいるようにしました。

すると、家庭内で同じ空間を過ごすことによって、些細なことでも話す機会が得られるようになり、問題行動がエスカレートすることはありませんでした。このように、対処法は家庭によって違います。上手に相談機関を利用しながら対応方法を考え、乗り越えていきましょう。

江野本 由香
ライフキャリアコンサルタント

※本記事は『キャリアと子育てを両立する!自分と家族の価値軸で築く幸せな生き方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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