社説:福知山市長3選 中身伴う「市民会議」に

 福知山市長選で、現職の大橋一夫氏が3選を果たした。

 自民、公明両党や連合京都の推薦を受け、8年の実績を基に、子育て環境の充実、市民と協働する「市民会議」の創設などを訴え、新人2氏との接戦を制した。

 ただ、大橋氏の得票は1万2千票台と初当選時からほぼ半減した上、得票率も約4割にとどまった。その民意を重く、謙虚に受け止めなければならない。

 選挙では、教育支援や子育て環境の整備のほか、合併で加わった旧3町の高齢化や人口減対策、新文化ホールの整備の在り方などが主な争点となった。

 大橋氏は、市の全事業見直しによる財政再建をはじめ、新型コロナウイルス禍への対応、工業団地の堅調な生産や投資状況などを強調。市立小中学校の修学旅行無償化、公立幼稚園の預かり時間延長などを公約に掲げた。安定した市政運営を有権者は一定評価したといえよう。

 一方で、積み残した課題は多い。全国的に進む人口減により、2006年の4市町合併時の8万4千人から、今年4月末では7万4千人と約1万人減った。

 特に旧3町で著しく、民間の路線バスが廃止になるなど公共交通や公共施設の運営に対し、中心部との「格差」を訴える声は高まっている。

 農林業の振興も重要である。米を中心にする農産物の販路開拓や、特産の「丹波くり」の生産拡大に向けた支援は欠かせない。

 近年相次いだ大水害の教訓を踏まえ、大江町域などでの由良川支流対策も急務だ。

 大橋氏は、人口減の中でも地域力を維持する方策として、諸課題をともに考える「市民会議」を創設するとした。

 新文化ホールの計画見直しを問う住民投票を求める署名活動が起き、再検討を迫られたことも背景にあろう。市の一方通行の発信でなく、世代を超えた市民が課題を「自分ごと」として共有するような、実効性のある仕組みづくりを目指してほしい。

 市内には福知山公立大をはじめ、公私立の高校6校がある。こうした若い力をにぎわいづくりや観光振興、周辺地域の活動にもっと生かしてはどうか。斬新な発想で隠れた資源を掘り起こすなど、誘客や交流の強化につなげたい。

 大橋氏は任期中に迎える合併20年を踏まえ、市民参加を高めつつ、まちの個性を生かした長期展望を具体的に示すことが責務だ。

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