億万長者が提案した「ハッブル宇宙望遠鏡」救済策をNASAが断った真っ当な理由

ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)の救済案を億万長者が提案したが、米航空宇宙局(NASA)がそれを断った理由について、海外メディアのSpace.comが報じている

1990年4月に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡の当初の運用予定は15年と考えられていたが、さまざまなハードウェアトラブルを経験しながらも、30年以上も運用が続けられている。

しかし、ここに来て、姿勢を制御するジャイロスコープの一部が故障したことにより、運用計画の変更を強いられている。地球を周回する空気抵抗から高度が徐々に低下しており、延命策が模索されていた

2022年、米Shift4 Paymentsの最高経営責任者(CEO)であり、民間の宇宙有人宇宙飛行計画「Polaris」を率いるJared Isaacman氏は、Space Exploration Technologies(SpaceX)の宇宙船「Dragon」で、ハッブル宇宙望遠鏡の高度を上げることを提案した。しかし、NASAは熟考の末、この計画を実行しないことを決定した。

ハッブル宇宙望遠鏡に関する直近の会議で、NASAで科学ミッション本部の天体物理学部門でディレクターを務めるMark Clampin氏は、Isaacman氏が提案した救済策でリスクを犯す価値は今のところないとの考えを示した。

同氏によれば、ハッブル宇宙望遠鏡の鏡に少量の揮発性物質が付着することで観測の精度が落ちる可能性がある。34年前に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡を救済するミッションそのものが容易でないことも理由として挙げられた。

NASAはハッブル宇宙望遠鏡の運用方針を米国時間6月4日に発表した。機能しているジャイロスコープ2台のうち1台を実際の運用に、もう1台を予備として活用することを明らかにしている。

(出典:NASA)

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