イベントレポート:BENROの木製ミニ三脚がお目見え/最新AIのレタッチ技術も…PHOTONEXT 2024(後編) スマホ写真の改ざん防止アプリや「忍者レフ」新モデルも

by 武石修

前編に引き続き、「PHOTONEXT 2024」で見つけたアイテムを紹介する。

本イベントは、写真館などのフォトビジネスおよびプロフォトグラファーを対象としたもので、6月11日(火)と6月12日(水)にパシフィコ横浜で開催されている。主催はプロメディア。

超満員のセミナーも多かった

BENROから木製ミニ三脚が登場

VANLINKSのブースではBENROブランドの三脚で新製品が見られた。「FBAT03CNMVX20」は全高410mmという小型の三脚。6月に3万1,900円で発売する。

FBAT03CNMVX20

テーブルフォトやマクロ撮影などによく使われるタイプの三脚だが、8層カーボンのパイプを使用し、ペイロードが12kgと本格的なスペックとなっている。脚は逆側にまで上げられるため不整地などでの設置の自由度は高そう。収納時は全長30cmになる。

開脚のロック位置が多数ある
このように1本だけを大きく開くことも可能

もう1つは「TABLEPOD」で、脚に木材を使っているミニ三脚。6月に1万9,800円で発売する。

TABLEPOD

木製ということで持ってみるとかなり軽く感じる。木のぬくもりがあるといった点もポイントという。開脚角度は変えられるが、脚の伸縮は不可。ペイロードは3kg。雲台はアルカスイスタイプのクイックシュー式。

脚が木製で、ロゴが彫り込まれいている
雲台は同社の一般的な小型タイプ

アドビは最新の生成AI機能をアピール

アドビのブースではAI機能「Adobe Firefly」を使ったPhotoshopのデモを行っていた。Fireflyはブラウザからも実行できる画像生成AIだが、最近Photoshopにも統合され、手持ちの素材と組み合わせたワークフローがしやすくなった。

Adobeのブース

例えば実際に撮影したクルマの写真に対して、「宇宙空間」というプロンプトを加えて背景を生成することが可能。被写体の切り抜きも自動で行ってくれる。

オリジナル写真
プロンプトを入力
切り抜きも自動認識で行われる
完成したもの。床面への反射も描かれていた

AI機能の別の使い道として、テクスチャの生成も紹介していた。「木目のテクスチャ」といったプロンプトで本物のような木目の画像が生成された。従来こうした画像は素材集やストックフォトから入手する必要もあったが、その場で作れるようになった。AIの生成なので”1点もの”という部分もメリットになるとのこと。

生成した木目のテクスチャ。かなり自然な印象
Photoshopが最も低価格で使えるフォトプランにもFireflyのフル機能が含まれるようになった

ポートレートレタッチソフトがさらに進化

Truesight Japanは人物レタッチソフト「Evoto AI」のブースを出展していた。高度なレタッチが簡単にできるとあって、CP+2024の展示でも話題になっていたソフトだ。

Truesight Japanのブース

その後いくつかアップデートがあり、今回そのデモを見ることができた。目玉はメガネの反射を除去できるという機能。くっきりと写ってしまったメガネの反射が一瞬で消え、最初から反射が無かったかのような仕上がりになっていた。目の部分に不自然な部分は見受けられなかった。

オリジナル写真
メガネの反射を消したところ

また、Adobe Lightroomからxmpファイルでプリセットをインポートできるようになったほか、テザー撮影にも新たに対応した。試したほぼ全てのカメラでテザー撮影が可能だとのこと。

xmpでのインポートに対応
テザー撮影もできるようになった

Evoto AIのダウンロードとレタッチ結果の確認は無料。書き出しには有料のチケットを購入するシステムだ(ダウンロード時に5枚の無料チケットが付属する)。本格的に使う場合は、1,200枚書き出せるチケットが1万2,600円などのプランがある。

スマホ写真の改ざん防止カメラアプリ

常盤写真用品のブースではスマートフォンで撮影した写真の改竄を防止し、真正性を証明できるカメラアプリ「HashShot」(Android、iOS)のデモを行っていた。料金プランは160円/月などが用意される。

HashShotはPGSが開発したアプリ。PGSは警察などで採用されている「PGS WORM CARD」を手がけているメーカーで、WORM CARDにおける真正性証明のコンセプトをスマホ写真に応用したシステムがHashShotになる。

PGSはWORM CARDでも知られる

撮影直後に撮影データ固有となるハッシュ値を算出して記録する。画像とハッシュ値はPCなどに移動できるが、移した後のハッシュ値とアプリに残っているハッシュ値が合っていれば改竄が無いという証明ができるという。アプリ内で表示される写真は加工ができないようになっており、大きく改竄された場合は目視でも検証できる。

HashShotのチラシ

HashShotは同アプリ内での撮影でのみ有効。スマートフォンに取り込んだ他のカメラの画像などはすでに加工されている可能性もあるため、ハッシュ値を出しても意味が無いので非対応となっている。

HashShotのカメラによる撮影画面
画像から計算されたハッシュ値を表示したところ

活用例としては裁判の証拠、芸術作品のオリジナル証明、保険業、工事写真のほか、雑誌に写真を持ち込む必要がある写真記者や出版社側にもメリットがあるとのことだった。今後、動画や音声のファイルにも対応していくという。

昨今は生成AIによる画像内オブジェクトの追加や削除といった操作が簡単にできるようになり“フェイク写真”が問題となっている。大手カメラメーカーも「C2PA」といった真正性確認プラットフォームへの参加が進むなど、画像の改竄検証のニーズが高まっている。

「忍者レフ」に特殊用途の新モデル

よしみカメラのブースでは、5月に発売した「忍者レフ デント」を展示していた。価格は8,800円。

忍者レフ デント

忍者レフシリーズは窓の映り込みをなくして夜景などをキレイに撮れるアイテムで、同社の看板商品となっている。今回の忍者レフ デントは、クルマのへこみ傷を可視化するという板金工場や保険業向けの特殊モデルとなる。

窪みの部分は縞模様が変型して写り込む

長辺86cmというオーバルレフの形状だが、裏表とも縞模様になっている。クルマにこのレフをかざして透過光でボディ表面を見ると、窪みがある部分に反射した縞模様が歪んで見えることで傷をチェックできるという仕組み。

ハンドル付きなので1人で撮影作業ができるとしているほか、カメラ三脚に固定できるネジ穴も設けた。収納時は30cmほどになる。

このところ雹による自動車の被害が多く発生していることから企画したとのこと。すでに保険会社から100枚単位でのオーダーがあったそうだ。

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